小関順二公式ブログ

プロ野球、アマチュア野球、野球史

明治神宮大会・高校の部のベストナイン

2012-11-15 20:45:42 | 2012年観戦記・高校野球

 11月14日に幕を閉じた明治神宮大会のベストナインを高校の部、大学の部に分けてそれぞれ選定したい。初めに断っておくが、大学の部初日に行われた桐蔭横浜大対松山大は高校の部と重なり、高校の部を優先したので見ていない。

■高校の部ベストナイン候補
捕手  小林 遼(仙台育英2年)、栗原陵矢(春江工1年)
一塁手 土井慎二(関西1年)、土門愛大(北照1年)
二塁手 贄 隼斗(浦和学院2年)、佐々木友希(仙台育英1年)
三塁手 和田 恋(高知2年)、高田涼太(浦和学院2年)
遊撃手 熊谷敬宥(仙台育英2年)、竹村春樹(浦和学院2年)
外野手 吉田雄人(北照2年)、斎藤良介(浦和学院2年)
    上林誠知(仙台育英2年)、長谷川 寛(仙台育英2年)
投手  酒井祐弥(高知1年)

 独断で「プロ向きか否か」だけを選考基準にして選んだ。
 投手は技巧派が揃い、「プロ向きか否か」という視点ではだいぶ物足りなかった。その中で酒井を選んだのは1回戦の浦和学院戦に6回から登板し、4回を3安打、2三振、1四球、0失点に抑えたからではない。ストレートの最速は136キロと普通。では何がいいのかと言われそうだが、投げ方がいい。早い前肩の開きがなく、腕がきちんと上から出てストレートの球筋がきれい。さらにカーブが横ブレせず真縦に割れるのもいい。これはきれいな投球フォームがもたらした恩恵である。
 他のポジションも同様の理由から独断で選んだ。ベストナインは以下の通り。

■ベストナイン
投手  酒井 祐弥(高知1年・右投右打・177/72)
捕手  栗原 陵矢(春江工1年・右投左打・175/67)
一塁手 土井 慎二(関西1年・右投左打・181/68)
二塁手 佐々木友希(仙台育英1年・右投右打・174/68)
三塁手 和田  恋(高知2年・右投右打・178/78)
遊撃手 熊谷 敬宥(仙台育英2年・右投右打・173/68)
外野手 上林 誠知(仙台育英2年・右投左打・184/77)
    吉田 雄人(北照2年・右投左打・177/73)
    斎藤 良介(浦和学院2年・左投左打・172/78)

 打順はクリーンアップだけ考えた。その3人とは吉田、上林、和田。吉田のタイミングの取り方、和田のリストの強靭さ、さらに上林の打球の速さは群を抜いていた。


甲子園大会のベストナインを選出

2012-08-24 19:09:28 | 2012年観戦記・高校野球

 独断と偏見に満ちたベストナインを今年も選出してみた。なお、野手8人対投手1人ではいかにも不公平なので、投手は5人選んだ。

[投手] 藤浪晋太郎(大阪桐蔭3年・右投右打・197/85)
     松井 裕樹(桐光学園2年・左投左打・174/74)
     菅原  秀(福井工大福井3年・右投左打・182/75)
     黄本 創星(木更津総合3年・右投右打・182/79)
     竹石 智弥(新潟明訓3年・右投左打・182/75)
[捕手] 田村 龍弘(光星学院3年・右投右打・173/77)
[一塁手]田端 良基(大阪桐蔭3年・右投右打・175/83)
[二塁手]鈴木 拓夢(桐光学園3年・右投左打・181/75)
[三塁手]笠松 悠哉(大阪桐蔭2年・右投右打・180/73)
[遊撃手]北條 史也(光星学院3年・右投右打・177/75)
[外野手]上林 誠知(仙台育英2年・右投左打・180/70)
     佐藤  廉(盛岡大付3年・右投右打・183/80)
     笹川 晃平(浦和学院3年・右投右打・181/78)

 投手は藤浪、松井以外を選出するのが大変だった。“打高投低”の大会だったと言ってもいいだろう。反対に野手はいい意味で選ぶのに苦労した。
 捕手は田村で文句ないが、優勝投手の藤浪を好リードし、さらに強肩と強打でもチームを支えた森友哉(2年・右投左打・170/78)を落とすのが忍びなかった。長井涼(聖光学院3年・右投右打・170/70)、林崎龍也(浦和学院3年・右投左打・171/69)も候補。
 一塁手は田端が後半失速したが、捕手寄りのミートポイントでボールを捉え、強引に押し込んで2本塁打した3回戦までの勢いを買って選出した。その他の候補では園部聡(聖光学院2年・右投右打・183/84)の打球の強さに注目した。
 二塁手は例年、ドラフト候補というより裏方的ないぶし銀タイプが多いので苦労する。鈴木もそういうタイプだが3回戦の浦添商戦でホームラン、三塁打を放ち、強打の片鱗を見せた。ちなみに三塁打を放ったときの三塁到達タイムは11.32秒で、これは私が計測した中では今大会ナンバーワンだった。
 三塁手も選ぶのに苦労した。笠松はボールを芯で捉えたときの打球の速さは天下一品だが、変化球打ちがダメ。決勝の光星学院戦では4打席17球中、ストレートはわずかに3球だけ。ヒットはバント安打2本を記録しているが、本来の笠松のバッティングではない。期待込みの選出であり、正直言えば、他に候補がいなかった。
 遊撃手は候補選手が多かった。北條は文句なしだが、竹村春樹(浦和学院2年・右投左打・175/71)、渡辺諒(東海大甲府2年・右投右打・178/75)の両2年生に執着した。2人とも来年の選抜、選手権に顔を出しそうなので、そのときにまた頭を悩ませば楽しいかなと思っている。
 外野手は1番タイプのリードオフマンより3、4番を打つスラッガータイプを優先して選んだ。篠原優太(作新学院・左投左打・168/77)、山本瞬(東海大甲府2年・右投左打・178/74)、高橋大樹(龍谷大平安・右投右打・181/77)、古賀伊織(神村学園・右投左打・177/75)も候補で、リードオフマンタイプを優先すれば天久翔斗(光星学院・右投左打・168/66)、大崎健吾(常総学院・左投左打・170/70)を選んだかもしれない。
※観戦記や各種案内はホームページに掲載しています。 

http://kosekijunjihomepage.com/

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優勝候補、横浜高敗れる

2012-07-26 15:41:52 | 2012年観戦記・高校野球

◇7月25日(水曜日)晴れのちくもり
神奈川大会準々決勝/横浜スタジアム
桐光学園4-3横浜

 桐光学園の2年生左腕、松井裕樹(左投左打・174/74)が横浜打線を封じ込めたという試合である。横浜ベンチはスターティングメンバー9人のうち右打者を8人揃えた。山内達也、田原啓吾、拝崎諒という左打者を外したのは、左腕のスライダーを左打者では攻略できないと考えたからだろう。しかし、松井の縦変化のスライダーはほとんど真縦に落ちる。つまり求められていたのは高低の攻めに対する適応力だけで、右であろうと左であろうと関係なかった。ならば、せめて足の速い拝崎は起用してもよかったのではないか。
 まず紹介したいのは、打者走者の各塁到達タイム。全力疾走の基準「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12.3秒未満」をクリアしたのは桐光学園の4人6回に対して横浜はわずか1人1回だった。8回表終了まで1対1の接戦で、こういうときにモノを言うのが脚力。それを考えると、左対左の有利・不利だけで拝崎をベンチに置いたのはまずかったと思う。
 桐光学園の3回の1点は、先頭打者の1年生・8番武拓人(遊撃手・右投左打・171/68)の遊撃安打(一塁到達4.06秒)が突破口になった。バントで二塁に進んだあと、2死から2番宇川一光のタイムリーで先制のホームを踏んだ。
 8回も先頭の武が遊撃内野安打(一塁到達4.10秒)で出塁し、バントで進塁したあと、1番鈴木拓夢の内野安打で1死一、三塁とし、2番宇川がスクイズを失敗、チャンスは潰えたかに思えた。しかし、2死一、二塁から3番水海翔太、4番植草祐太の連続安打で2点追加し、さらに安打、押し出しの四球で決定的と思える3点を奪い、4対1とした。
 この回、武以外でも鈴木の内野安打、宇川のスクイズ失敗のときの一塁到達が4.3秒未満を記録し、横浜内野陣は守っていても気の休まるときがなかっただろう。

 桐光学園の松井は抜群の出来だった。とくによかったのが、8人揃った右打者への外角低めのストレート。さらに、ほとんど真縦に落下してくるスライダーが抜群のキレで、横浜打線はこれらの緩急に手も足も出なかった。投球フォームにも触れると、腕を振った軌道をなぞるように上半身がかぶさっていく。このフォームの要因となる前肩上がりは一見コントロールミスを誘うように見えるが、実際にはコントロールを安定させるほうに寄与していた。
 横浜で目立ったのは1年生の4番、高濱祐仁(一塁手・右投右打・181/83)だ。7回にはマウンド上の松井を直撃するライナーを放ち(二塁ゴロ)桐光学園ベンチを震撼させた。さらに9回には1死三塁の場面で、バットにボールを吸着させるような呼び込みで、一気にこれを左中間フェンスまで運び、三塁走者を迎え入れた(三塁打)。
 横浜は確かに敗れたが、この一打を見られたことで来年に期待を持ち越すことができた。ファンの思いを背負い込まなければならない高濱は大変だが、先輩の松坂大輔も涌井秀章も筒香嘉智も、背負い込んだ苦労の分だけ大きくなった。高濱にもそういう選手になってもらいたいと思った。

※都市対抗、高校野球の観戦記はホームページでも掲載しています。http://kosekijunjihomepage.com/


7/9~11の福岡、佐賀高校野球観戦

2012-07-12 00:57:20 | 2012年観戦記・高校野球

 7月9日に福岡に入り、10日が佐賀、11、12日は福岡という日程で、今この原稿を久留米のホテルで書いている。観戦記はホームページ(http://kosekijunjihomepage.com/)、あるいは高校野球ドットコム(http://www.hb-nippon.com/)に発表するつもりだが、PCの不具合でメールを送信することができなくなった。情報を求める人には何の価値もないかもしれないが、数日遅れで発表していくつもりだ。
 ここでは7/9~11の3日間に見た選手の印象を語ることにする。まず初日の福岡第一対水産戦では、福岡第一の台湾留学生に注目した。投手の楊家偉(3年・右投右打・190/88)と右翼手の張奕(3年・右投右打・181/70)の2人だ。
 楊は投球フォームの悪いクセを1つ1つ殺ぎ取っている段階にいる。まだストレートのスピードは130キロ台中盤くらいと物足りないが、フォームがよくて上背があり、これから伸びていく素材だと思った。張はライトからの強肩と長打力に目を奪われた。

 7/10は佐賀・みどりの森県営球場で鳥栖対唐津南、鹿島実対唐津青翔、伊万里農林対唐津商の3試合を見た。鳥栖の本格派左腕として話題の初瀬耕輔(3年・左投左打)は、オーバースローだと思っていたのが本当はサイドスローだったので非常に驚いた。7回、1安打、4四死球、13三振、0失点は見事だが、私自身軽いショック状態から立ち直れない。じきに観戦記に書くつもりなのでそちらを参照されたい(この日のストレートの最速は141キロ)。バッティングはよかった。ゴルフフルスイングのように思い切り下からしゃくって、第1打席は2ランホームラン、第2打席はタイムリー二塁打と1人気を吐いた。

 7/11は沖学園対福岡工大城東を見た。もう1試合の宗像対山門は降雨のため4回限りでノーゲームになった。最初の試合では笠原大芽(3年・左投右打)に注目した。まず、左投右打に驚いた。昔は利き腕(左)が前になるので、利き腕に死球を受けることのないよう、投手はスイッチヒッターになるのを止められることがあった。しかし、高校野球は打つのも投手の仕事なので、よりよい結果を求めるなら打ちやすいほうの打席に立ちのは当たり前である。
 ピッチングではカーブ、スライダー、フォークボール、チェンジアップが断然光った。ストレートはこの日、139キロが最速だったと思うが、球の出所が見えづらいフォームなので、数字より速く見える。2対3での敗退は、球場で見たことのない人には残念だったと思うが、私は最後に見られたので非常に満足している。


どうした作新学院!元気がないぞ

2012-05-22 13:39:30 | 2012年観戦記・高校野球

◇5月20日(日曜日)晴れ
関東大会/大宮公園球場
作新学院4-2南稜

 作新学院が選抜大会から元気がない。私にとって作新学院のベストゲームは昨秋の関東大会、花咲徳栄戦である。二塁打のとき揃って二塁ベース前で足を緩め、二塁到達9秒台が4本あったのは噴飯ものだが、1番を打っていた石井一成などは守っているのが楽しくて仕方がないという軽快なフィールディングをたびたび演じ、見ている者を楽しくさせた。
 しかし、選抜大会からこっち、そういうプレーが目に見えて減った。4番を打っていた篠原優太が故障欠場しているのは痛いが、それだけでこんなに精彩がなくなるのかな、というくらい元気がない。この南稜戦は、打者走者の各塁到達で、全力疾走の基準タイムをクリアした選手が1人もいなかった。
 たとえば「一塁到達4.3秒未満」が私にとって全力疾走の目安になるが、4.3秒未満どころか、4.4秒台でさえ2人しかいなかった。どういう走りをしていたのか紹介する。
◇4.4秒台……2人 ◇4.5秒台……2人 ◇4.6秒台……5人 ◇4.7秒台……2人
◇4.8秒台……4人 ◇4.9秒台……6人 ◇5秒以上……1人
 4.9秒台6人のうち3人はヒットのときの走塁だから目をつぶるとして、残り3人はバント、投手ゴロ、二塁ゴロで4.9秒台だから弁護の余地がない。
 南稜も4.3秒未満が1人(2回)と少ないが、南稜は県立高校で、野球部を強くするために好素材の選手を広域から集めてはいない。それに対して、作新学院は県内の硬式経験者が6人(選抜ベンチ入りメンバー)もいる。こういう高校にはそれなりに高度な野球をやってもらいたいし、甲子園の春・夏連覇を最初に達成し、昨年夏の選手権では4強に進出している名門・作新学院だから、よけいにそう思う。
 好材料は、エース大谷樹弘(3年・右投左打・180/83)が春にくらべて良化していることだ。どう変わったのかというと、スリークォーターの投球フォームがオーバースローに変わった。その結果、球筋がきれいになり、抜け球が少なくなった。
 スライダーに関しては大きい横変化がなくなった代わりに、チェンジアップと見紛うような縦変化が鋭くなった。依然としてコントロールに安定感はないものの、右打者の内角に腕を振ってストレートを投げ込めるようになり、投球に広がりが出てきた。こういう変化が可能なんだなと、ちょっと嬉しくなった。
 厳しいことを書いてきたが、21日の準々決勝では神奈川の強豪、横浜に5対1で完勝し、昨年夏のベスト4がダテではないことを証明した。私はこの試合を見ていないので、どういう変化があったのかわからない。明日に持ち越された関東一戦を見て、そのあたりを確認したいと思っている。

[註]5/19の前橋商対下妻二、5/21の健大高崎対東海大甲府の観戦記は<ホームページ>に掲載しました。

http://kosekijunjihomepage.com/