◇9月13日(火曜日)晴れ
横浜2-1巨人(横浜スタジアム)
朝~昼を東都大学リーグ戦、夜をプロ野球と“はしご観戦”したのは、スポーツ紙の先発予想を見たからだ。日刊スポーツは横浜ベイスターズの先発予想を「国吉佑樹」とした。誰からか、「国吉はいいよ」と言われた言葉がずっと耳に残っていた。巨人の負けが込んでいるので観客も適当な入りだろうと踏んで、横浜までやって来た(昔からパ・リーグの試合を見慣れている人間は、混んでいる試合が大嫌いだ)。
観客数は1万5023人と予想通りの入り。巨人の先発が左腕の内海哲也だったため、もう1人見たかった筒香嘉智(内野手)が出場しなかったのは残念だが、国吉は期待通りのピッチングで非常に満足した。ストレートの最速は148キロ(1球だけ)、平均は144キロ程度。と書くと「たいしたことない」と早合点されそうだが、この国吉、投球フォームがいい。
まず経歴を紹介しよう。中学・オール枚方(大阪)→高校・秀岳館(熊本)と進み、秀岳館時代はエース梅田広久(法大)の陰に隠れ、目立った存在ではなかった。137キロから143キロにアップするなど2年から3年にかけての成長がめざましく、この間のピッチングがスカウトの目に触れたのだろう。ちなみに、『12球団全選手カラー百科名鑑』(廣済堂あかつき)を見ると、「アメリカ人の血を引くクォーター(4分の1)」と書かれている。195センチの長身もあって、高校時代はよくダルビッシュとイメージを重ね合わされた。
育成ドラフト1位で横浜入り。プロ入り後は、1年目の昨年にイースタンリーグ5試合登板を果たし、今年は7月29日に支配下登録されると背番号が111から65に若くなり、ここまで一軍戦3試合に登板し、0勝0敗、防御率3.24と健闘している。
投球フォームがいいと書いたのは、左肩の早い開きがないからだ。バックスイングが内回旋で、体の近くで腕が振れているのもプラス要因。こういう投手はコントロールに一定の安定感がある。
6回に四死球2つと安打で2死満塁のピンチを迎え、ここでマウンドを新人左腕の大原慎司に譲っているが、ここまで5回3分の2を投げ、被安打6、奪三振5、失点・自責点1は及第点と言っていい。奪三振の内容にも触れると5個のうち4個はストレートが結果球。打者近くでボールが伸びていた何よりの証だろう。
この国吉の女房役、黒羽根の肩も凄かった。これは掛け値なしでプロ屈指のレベル。3回表、盗塁数リーグナンバーワンの藤村大介がヒットで出塁すると、まず強烈な一塁けん制球を見せる。このときのタイムが1.35秒。1.4秒台だって1回しか見た記憶がないのに、さらに0.1秒速い。普通の強肩捕手なら1.5秒台が精一杯である。
それでも藤村は果敢に二塁盗塁を企図する。このときの黒羽根の二塁送球タイムは2.11秒。とくに凄いタイムでないが、国吉のクイックが1.15秒程度、黒羽根のスローイングが2.11秒で、2つ合わせると3.26秒。さらに、コントロールがよかった。二盗を企図する前には“あっと驚く”一塁けん制もあったので、藤村のリード、スタートが少しずつ小さかったり遅かったりした。リーグ屈指の韋駄天が楽々とアウトを取られるシーンを見て、このバッテリーは将来の横浜を支える期待の星だなと思った。また、2人のプレーを見たい。中6日で考えていいのだろうか。