小関順二公式ブログ

プロ野球、アマチュア野球、野球史

楽天・茂木栄五郎が叩き出したモンスター記録

2016-04-20 07:43:23 | プロ野球観戦記

 昨日観た楽天対オリックス戦(東京ドーム)で物凄い走塁を見た。楽天・茂木栄五郎(遊撃手)が8回裏に右中間を破る二塁打を放ったときの二塁到達タイムが、私のストップウォッチで7.21秒を計測したのだ。これは多分、私の過去15年間の計測史上ではナンバーワンのタイムである。私は「小関順二 公式ホームページ」で2012年以降の一定水準以上の各塁到達タイムを掲載しているが、それを見ると過去5年間の二塁到達タイム最高記録は次のようになっている。

 2012年 7.50秒 藤岡裕大(当時亜細亜大)

 2013年 7.36秒 岡田幸文(ロッテ)

 2014年 7.55秒 池田陵太(当時奈良大附)※二塁憤死

 2015年 7.60秒 高山 俊(当時明治大)

 2016年 7.72秒 山崎 剛(国学院大)

 7.5秒台前後が猛烈に速いレベルだということがわかる。それを遥かに超えるタイムを茂木は記録した。ちなみに、1回裏には送りバントで3.94秒、5回裏には遊撃ゴロで3.89秒を出しているので俊足であることは間違いない。二塁到達で好タイムを出すためには二塁ベース手前でスピードを緩めないことが原則で、茂木はこのときスライディングしている。この茂木のタイムを誰が破るのか、野球を観戦する新たな楽しみがまた1つ生まれた。


国吉ー黒羽根のバッテリーに横浜の明日を見た

2011-09-14 01:50:32 | プロ野球観戦記

913日(火曜日)晴れ

横浜21巨人(横浜スタジアム)

 

 朝~昼を東都大学リーグ戦、夜をプロ野球と“はしご観戦”したのは、スポーツ紙の先発予想を見たからだ。日刊スポーツは横浜ベイスターズの先発予想を「国吉佑樹」とした。誰からか、「国吉はいいよ」と言われた言葉がずっと耳に残っていた。巨人の負けが込んでいるので観客も適当な入りだろうと踏んで、横浜までやって来た(昔からパ・リーグの試合を見慣れている人間は、混んでいる試合が大嫌いだ)。

 観客数は15023人と予想通りの入り。巨人の先発が左腕の内海哲也だったため、もう1人見たかった筒香嘉智(内野手)が出場しなかったのは残念だが、国吉は期待通りのピッチングで非常に満足した。ストレートの最速は148キロ(1球だけ)、平均は144キロ程度。と書くと「たいしたことない」と早合点されそうだが、この国吉、投球フォームがいい。

 まず経歴を紹介しよう。中学・オール枚方(大阪)→高校・秀岳館(熊本)と進み、秀岳館時代はエース梅田広久(法大)の陰に隠れ、目立った存在ではなかった。137キロから143キロにアップするなど2年から3年にかけての成長がめざましく、この間のピッチングがスカウトの目に触れたのだろう。ちなみに、『12球団全選手カラー百科名鑑』(廣済堂あかつき)を見ると、「アメリカ人の血を引くクォーター(4分の1)」と書かれている。195センチの長身もあって、高校時代はよくダルビッシュとイメージを重ね合わされた。

 育成ドラフト1位で横浜入り。プロ入り後は、1年目の昨年にイースタンリーグ5試合登板を果たし、今年は729日に支配下登録されると背番号が111から65に若くなり、ここまで一軍戦3試合に登板し、00敗、防御率3.24と健闘している。

 投球フォームがいいと書いたのは、左肩の早い開きがないからだ。バックスイングが内回旋で、体の近くで腕が振れているのもプラス要因。こういう投手はコントロールに一定の安定感がある。

 6回に四死球2つと安打で2死満塁のピンチを迎え、ここでマウンドを新人左腕の大原慎司に譲っているが、ここまで53分の2を投げ、被安打6、奪三振5、失点・自責点1は及第点と言っていい。奪三振の内容にも触れると5個のうち4個はストレートが結果球。打者近くでボールが伸びていた何よりの証だろう。

 この国吉の女房役、黒羽根の肩も凄かった。これは掛け値なしでプロ屈指のレベル。3回表、盗塁数リーグナンバーワンの藤村大介がヒットで出塁すると、まず強烈な一塁けん制球を見せる。このときのタイムが1.35秒。1.4秒台だって1回しか見た記憶がないのに、さらに0.1秒速い。普通の強肩捕手なら1.5秒台が精一杯である。

 それでも藤村は果敢に二塁盗塁を企図する。このときの黒羽根の二塁送球タイムは2.11秒。とくに凄いタイムでないが、国吉のクイックが1.15秒程度、黒羽根のスローイングが2.11秒で、2つ合わせると3.26秒。さらに、コントロールがよかった。二盗を企図する前には“あっと驚く”一塁けん制もあったので、藤村のリード、スタートが少しずつ小さかったり遅かったりした。リーグ屈指の韋駄天が楽々とアウトを取られるシーンを見て、このバッテリーは将来の横浜を支える期待の星だなと思った。また、2人のプレーを見たい。中6日で考えていいのだろうか。


佐野正幸と見た西武ー日本ハム戦

2011-08-27 19:04:57 | プロ野球観戦記

◇8月26日(金曜日)雨
西武対日本ハム(西武ドーム)

 友人の野球作家、佐野正幸さんと久しぶりに野球観戦した。7月10日前後、佐野さんは意識不明の重体に陥っていた。胆石が十二指腸をふさいで感染症を起こしたらしく、数日間意識がなかった。しばらくして奥さんに容態を聞くと、「今日意識が戻ったんです。先日はお見舞いいただいてありがとうございます」と礼を言われて、一瞬何のことかわからなかった。そのときはまだ見舞いに行っていなかったのだ。佐野さんは朦朧とする意識で、小関が見舞いに来てくれたと思ったらしい。街角のエンターティナー・佐野正幸に笑わされることはあっても、ホロリと泣かされることはなかったが、その話を聞いたときは鼻の奥がツンときた。
 安静にしすぎて筋肉が衰えた佐野さんは外出も控えがちだったようで、一時期は110キロくらいあった体重が今は74、5キロまで落ちている。しかし、元来がじっとしていられる人でないので「月末、西武ドームに行きませんか」と連絡があったのが先週。西武ドームは私にとって地元と言ってもいい球場なので二つ返事で了解し、「高校野球情報.com」の編集長、安田未由さんも誘っての観戦となった。
 試合内容だけ見れば、佐野さんの快気祝いとしては最高の試合だったのではないか。西武の中村剛也が2本のホームランを左中間、左翼ポール際に放てば、日本ハムの糸井嘉男が3本のヒットを放ち、投手陣も西武は帆足和幸、日本ハムはケッペルが先発としての役割を果たし、延長10回裏に西武の上本達之がサヨナラ安打を打ってゲームセットと至れり尽くせり。西武が勝ったことを除けば、久しぶりに野球観戦の醍醐味を満喫できる試合だったのではと勝手に思っている。
 この試合で私が目を見張ったのが糸井の走塁。7回の右中間を破る打球は普通の選手なら二塁で止まるが、打者走者が糸井なのでストップウォッチを止めず、三塁到達と同時にストップボタンを押すと、画面に表示されたのは「11.06」という数字。
 アマチュアでは08年の日本選手権、トヨタ自動車の荒波翔(現横浜)が10.95秒、右打者ではやはりトヨタ自動車の荻野貴司(現ロッテ)が11.01秒という超弩級のタイムを記録しているが、プロでは荻野が昨年4月29日の西武戦で計測した11.00秒に次いで、この日の糸井が“小関史上”2番目。
 三塁を狙った糸井は中村剛也の名演技で憤死する。返球が近くに迫っているにもかかわらず、中村は遠くを見るような顔でボーッと立ち、返球がグラブに収まるのと同時に素早くタッチしてアウトを取っている。糸井はスライディングしなかったことを反省しているが、私は中村がうまかったと思っている。
 なお、日本ハムの「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12.3秒未満」は糸井の1回だけ。7月1日に見た西武戦では3人(8回)がタイムクリアしているので、違いは歴然としている。
 翌日、ネットを開くと「梨田監督が退任へ」の見出しが目に飛び込んできてびっくりしたが、全力疾走の鈍化も来季契約しない原因の1つなのかもしれない。

[この日の注目シーン]
 中田翔がノーステップをやめた打席を初めて見た。一本足のときの足上げ、さらにステップの出し方が性急で、ゆったりした部分が1つもない。ノーステップのときは当たり前だが、すべての部分がゆったりしていた。 


花火だけが印象に残ったヤクルトー中日戦

2011-08-23 23:51:24 | プロ野球観戦記
◇8月23日(火曜日)神宮球場
ヤクルト対中日

 ヤクルトが2対0で完封勝ちしたが、中日がだらしなかった。帰ってスポーツ紙を見たら中日はここまで4連勝していた。へぇ~と思った。とてもそんなチームには見えなかったのだ。
 0対0の膠着した展開で迎えた6回裏、ヤクルトは青木宣親の右前打と畠山和洋の四球で2死一、三塁のチャンスを迎えるが、5番バレンティンは高~く上げた投手フライ。0行進はさらに続くのかと思った次の瞬間、マウンド付近に集まったネルソン、グスマン、森野将彦を嘲笑うように、打球はその中間にポトリと落ちた。記録は投手への二塁打。
 5回表にはこんなプレーもあった。先頭の谷繁元信が左前打で出塁すると、堂上直倫がバントで送り、1死二塁で打席に立つのは投手のネルソン。何で期待の若手が送って、投手がチャンスの打席に立つんだよ、と思った次の瞬間、何とネルソンがセンターの頭を越える二塁打を放った。先取点は中日か、と思ってノートから顔を上げてグラウンドを見ると、谷繁が三塁に留まっている。後ろのラジオブースのアナウンサーの喋っているのを聞くと、三塁コーチャーは腕を回していたらしく、谷繁が勝手にブレーキをかけたようだ。
 7回には先頭の堂上直がレフト線へ二塁打を放ち、ネルソンのバントを石川雅規が一塁に悪送球して無死一、三塁のチャンスを迎える。ところが荒木雅博が二塁ライナー(これを捕った田中浩康が併殺にしようと一塁方向に体勢を取った瞬間、尻もちをつく)。さらに大島洋平がチェンジアップを三塁正面に打つと、三塁走者の堂上直が飛び出して挟殺プレーの末に憤死。それでも2死一、二塁とチャンスは続くが、森野が二塁ゴロを打ってまたもや得点が入らない。
 ヤクルトが勝った、というより、中日に勝たせてもらったようなゲームで、見どころ、唸りどころがまったくない。1位と3位がこんなゲームをしていたら、パ・リーグにますます差をつけられてしまうのではないかと本当に心配した。
ヤクルトは持ち味を発揮したと言っていい。6球団の得失点差を見ると次のようになっている。
 1位 ヤクルト 得点318、失点321 - 3
 2位 巨人   得点302、失点292 +10
 3位 中日   得点264、失点280 -16
 4位 阪神   得点304、失点289 +15
 5位 広島   得点290、失点346 -56
 6位 横浜   得点320、失点409 -89
 貯金が11もあるのに、得失点差は-3とは、いかにもヤクルトらしい。しかし、しつこいようだが、今日のゲームはまったく締まらなかった。5回終了のあとに打ち上げられた花火だけが心に残った。

川原弘之がフレッシュオールスターゲームでアッと驚く154キロ

2011-07-29 06:53:31 | プロ野球観戦記
◇7月21日(木曜日)くもり
フレッシュオールスターゲーム・富山アルペンスタジアム
ウエスタンL選抜対イースタンL選抜

 この試合の最高注目選手は、ソフトバンクの左腕・川原弘之(福岡大大濠出身高)だ。打者3人(1イニング)に対し全球ストレートで挑み、球速は富山アルペンスタジアムのスピードガンに154キロ、スカイ・A sports+のテレビ画面に152キロを弾き出した。
 09年ドラフトで今宮健太(明豊・遊撃手)に次ぐドラフト2位指名でプロ入りし、1年目は8試合に登板して2勝2敗、防御率2.52と、新人にしてはまあまあの成績。2年目の今年は2試合に登板して0勝1敗、防御率2.57とパッとしない成績が残っている(7月27日現在)。
 それでいてフレッシュ球宴に出場できたのは、チームメートで同期・同年齢の下沖勇樹が右肩腱板炎で出場辞退し、代役の声がかかったからだ。川原はこの与えられたチャンスで好結果を出し、自らの存在感を遺憾なく発揮した。
 甲子園大会にはついに出場できなかったが、高校3年夏前(5月30日)にそのピッチングを見たことがある。九州国際大付相手のNHK杯で、その日のストレートのMAXは136キロ。フレッシュ球宴での剛腕ぶりとは違う。
 まずフォームが変わった。NHK杯のときはバックスイングが内回旋だった。自然とヒジが上がるフォームで、一連の腕の振りが体の近くで行われていた。ところがフレッシュ球宴ではバックスイングが外回旋になり、腕の振りが体から遠くなった。付け足せば、高校時代はオーバースローだったのが、プロ入り後の今は少しだけ腕が横手から出ている。
 これらを総合すると、高校時代はヒジを起点とした自然な振り下ろしだったのが、今は腕を振って投げるパワー系に変身している。どちらがいいというのではない。わずか2年でこれほどの変身を遂げ、スピードアップした投手がいただろうかという戸惑。乱暴な比喩を用いれば杉内俊哉(ソフトバンク)から能見篤史(阪神)への変身、それくらい受ける印象が変わった。体幹の強化が変身の背後にあるのだろう。
 いずれにしろ、川原の出現でソフトバンク投手陣は将来へ抜けて、さらに強化された。とくに左腕がすごいので、その顔ぶれを以下に紹介する(成績は7/28現在)。
 和田 毅 8勝3敗、防御率1.78
 杉内俊哉 5勝3敗、防御率1.86
 山田大樹 6勝5敗、防御率3.46
 森福允彦 3勝0敗、防御率1.19 ※1セーブ、21HP
 大隣憲司 0勝0敗、防御率1.64
 ここに小椋真介、陽耀勲が続き、さらに川原が加わるのである。“左腕王国”と言っていいだろう。