小関順二公式ブログ

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明治神宮大会大学の部・ベストナイン

2012-11-16 12:44:12 | 2012年観戦記・大学野球

 11月14日に幕を閉じた明治神宮大会大学の部のベストナインを選定したい。高校の部が野手中心だったのにくらべ、大学の部は投手に逸材が多かった。候補を挙げよう(松山大は見ることができなかった)。

■ベストナイン候補
捕手  梅野隆太郎(福岡大3年)、君島立将(富士大4年)、木下拓哉(法大3年)、
    嶺井博希(亜大3年)
一塁手 大城戸匠理(法大3年)
二塁手 河合完治(法大3年)、高橋孝司(三重中京大4年)
三塁手 大畑建人(大阪体育大3年)、多木裕史(法大4年)、藤岡裕大(亜大1年)
遊撃手 大累 進(道都大4年)、喜納淳弥(桐蔭横浜大2年)、高田知季(亜大4年)、
外野手 建部賢登(法大4年)、久保皓史(富士大1年)、中村篤人(亜大3年)、
    山下翼(亜大1年)、天願陽介(富士大3年)、今塩屋雄二(福岡大4年)
投手  則本昂大(三重中京大4年)、佐藤峻一(道都大4年)、三嶋一輝(法大4年)、
    石田健大(法大2年)、松葉貴大(大体大4年)、多和田真三郎(富士大1年)、
    東浜巨(亜大4年)、九里亜蓮(亜大3年)

 投手の候補は以上の8人だが、彼ら以外でもストレートに特徴のある升岡滉太郎(三重中京大4年)、唐仁原志貴(福岡大1年)が今後に楽しみを残した。候補8人の中ではドラフトで指名された則本、佐藤、三嶋、東浜の4人と、国際武道大戦でノーヒットノーランを記録した多和田がとくによかった。
 球威で則本、三嶋、バランスのよさで佐藤、多和田、緻密さで東浜と、それぞれ特徴があったが、打者を圧倒するという部分では東浜が抜けていた。福岡大戦では6回1死までノーヒットノーランペースで、前日の多和田に続いて2日連続の快挙かと胸が躍った。
 野手では捕手と遊撃手に好選手が揃った。捕手はバッティングもいい梅野に対してディフェンス型が揃い、イニング間の二塁スローイングでは君島と木下の強肩が目立ち、実戦では嶺井が桐蔭横浜大戦で2つの二盗を阻止し、実戦向きを証明した。4人は甲乙つけ難かったが、総合力で梅野が上回っていたので選出した。
 一塁手は大城戸以外に競争相手が見当たらず、大城戸自身のバッティングの完成度も抜けていたので文句なく当選。二塁手は高橋の俊足は魅力だが、やはりバッティングの完成度で河合が上回り、これも文句なし。
 迷ったのは遊撃手、三塁手、外野手の3ポジションだ。
 遊撃手はディフェンスで目立った大累、高田より、評判の好投手、松葉貴大(大阪体育大)、九里亜蓮(亜大)を攻略してチームの優勝に大きく貢献した喜納が勢いで上回り、三塁手は知名度が高い多木、藤岡に触手が動いたが、優勝した桐蔭横浜大のエース、小野和博から二塁打、三塁打を放った大畑建人の強打のほうを取った。
 外野手はやや層が薄かった。法大の突撃隊長・建部は文句なし。あとの2人はネームバリューでは亜大の2人だが、中村は絶不調で落選。山下もヒットゼロでは選びにくい。消去法で久保、天願、今塩屋が残り、成績主体で久保、今塩屋に決まった。

■ベストナイン
投手  東浜  巨(亜大4年・右投右打・181/80)
捕手  梅野隆太郎(福岡大3年・右投右打・176/78)
一塁手 大城戸匠理(法大3年・右投左打・178/74)
二塁手 河合 完治(法大3年・右投左打・175/75)
三塁手 大畑 建人(大阪体育大3年・右投左打・174/80)
遊撃手 喜納 淳弥(桐蔭横浜大2年・右投左打・174/73)
外野手 建部 賢登(法大4年・右投左打・172/71)
    久保 皓史(富士大1年・右投左打・180/77)
    今塩屋雄二(福岡大4年・左投左打・180/81)

 準優勝の法大から3人選んだのに対して、優勝した桐蔭横浜大からは喜納ただ1人。桐蔭横浜大の全員野球をこういう部分からも納得してもらいたい。


142キロでも打てない・当たらない東浜巨のストレート

2012-10-30 11:34:31 | 2012年観戦記・大学野球

◇10月24日(水曜日)神宮球場
東都大学リーグ
青山学院大2-0亜細亜大

 東浜巨(亜細亜大)がソフトバンクに1位指名された記念に、リーグ戦最後となった試合を振り返りたい。この試合で計測した東浜の最速は142キロ。これをどう見るかだが、認識しておかなければいけないのは、神宮球場のスピードガン表示が2011年秋以降、スカウトたちのスピードガン表示とほぼ同じになったということ。それまでは、スカウトのスピードガンに142キロと表示されれば、神宮球場のスピードガンには146、7キロと表示された。つまり水増しである。そういうことがきれいになくなった。
 マスコミの中には「東浜が技巧派になった」と思っている人がいるが、スピードに関しては下級生のときも今もそれほど変わらない。東浜の名誉のために言っておくと、2011年5月31日、史上初めて府中球場で行われた未消化のリーグ戦・中大戦で、ストレートがスカウトのスピードガンに最速148キロと計測された。そのくらいのスピードは出る投手なのである。
 さて、この青山学院大戦で奪った三振は13個。内訳はストレートで奪った(結果球)のが9個で、そのうち6個は見逃しだった。東浜のMAX142キロのストレートがいかに脅威だったかわかる。142キロという最速スピードと13奪三振というアンバランスを見て、私は杉内俊哉(巨人)を思い浮かべた。
 誰だったか忘れたが、あるスカウトは「今まで見た中で一番(ストレートが)速いと思ったのは河本育之と杉内だ」と言った。河本は正真正銘の150キロ級左腕、それにくらべて杉内のストレートはほとんど140キロ前後だ。それでも打者は打てない、当たらない。そのストレートと東浜のストレートは同質である。
 開かない前(左)肩、出どころが見えない腕の振り、そういった部分で東浜と杉内は共通点がある。大学レベルの打者が東浜のボールを打てるわけがないのだ。
 今回のドラフト後、仕事で私は藤浪晋太郎(大阪桐蔭⇒阪神1位)のことばかり書いている気がするが、即戦力候補ナンバーワンは大学卒の東浜である。投手としてのテクニカルな部分をしっかりロジックを組み立て話す姿は沖縄尚学時代と変わらない。そういう部分は藤浪にも感じた。プロ相手のピッチングが今から楽しみである。

※10/27に行われた関東大会、佐野日大対東海大甲府の観戦記はホームページに紹介しました。じきにアップされると思います。


1位入札候補、東浜巨のベストピッチ

2012-10-10 09:05:17 | 2012年観戦記・大学野球

◇10月9日(火曜日)晴れ
東都大学リーグ/神宮球場
亜細亜大3-1中央大

 亜大のドラフト1位入札候補、東浜巨(右投右打・181/73)が見事な投球をした。今秋は9/1の東洋大戦、9/18の駒大戦を見たが、首を傾げる内容だった。スピードは9/1が最速144キロ、9/18が143キロ、この日が145キロと大して変わらない。失点もそれぞれ1、2、1と少ない。それでもこの日のピッチングが圧倒的によく見えた。投げ始めからフィニッシュまでの投球タイムは、9/1が1.8~2.1秒、9/18が1.9~2.1秒、10/9が2.0~2.3秒と大きな違いが見える。
 9月に取材した藤浪晋太郎(大阪桐蔭)は春が約2.1秒、夏が約1.8秒と投球タイムが速くなっていて、それに対して「あんまりゆっくりだとバラけてしまうので、ポンポンとしっかりリズムを作って」と説明してくれた(雑誌『アマチュア野球』より)。しかし、東浜は沖縄尚学時代から、投球タイムが遅ければ遅いほど投球内容がよくなる。
 ストライク率の高さも好・不調のバロメータである。よくないときは安易にボール球を振らそうと横着なピッチングになるが、この日は低めいっぱいのストライクゾーンにストレート、ツーシームを丁寧に配し、打者を打ち取っていった。3回までに奪った三振は2個。これは東浜にしては少ないペースだ。
 ツーシームを大きく落とさないで小さい変化でストライクゾーンに入れるという意識の徹底がこの三振数に表れていると思う。4~7回までの4イニングは三者凡退で切り抜け、12アウト中、三振が9個とようやくいつものドクターKぶりを発揮している。これは3回までの丁寧なピッチングで、ボール球を振らせる環境が整ったからと見ていいだろう。
 とにかくストレート、ツーシーム、スライダーとすべてのキレ味が素晴らしく、被安打は1回裏、影山潤二(3年・左投左打・173/68)に打たれた中前打のみ。8回はいずれも3ボール2ストライクから四球を3つ与え1死満塁にし、捕手・嶺井博希のミットが打者のバットに当たる打撃妨害で1失点を許した。3回にも2つの死球で一、二塁のピンチはあったが、それ以外は完璧に抑えた。ドラフトを16日後に控え、ようやく本来のピッチングを取り戻した東浜。1位入札で迷う球団のスカウトは、これでまた悩む材料が増えたのではないだろうか。


大学選手権の私的ベストナインに早大選手7人

2012-06-19 08:37:45 | 2012年観戦記・大学野球

 大学選手権は早稲田大の5年ぶり4回目の優勝で幕を下ろした。投打の層の厚さと各選手の溌剌とした動きは他校より一歩抜きん出て、文句なしの優勝と言っていい。表彰選手は次の通りだ。

 最高殊勲選手 吉永健太朗(投手・早稲田大1年)
 最優秀投手  杉上  諒(龍谷大4年)
 首位打者   古本 武尊(外野手・龍谷大4年)
 敢闘賞    東浜  巨(投手・亜細亜大4年)
 特別賞    則本 昂大(投手・三重中京大4年)

 これだけだと野手が物足りないので、独断と偏見でベストナイン(左投手、救援投手を入れて11人)を選んでみた。

 右投手  吉永健太朗(右投右打・182/80 早稲田大1年)
 左投手  川満 寛弥(左投左打・186/80 九州共立大4年)
 救援投手 有原  航(右投右打・187/93 早稲田大2年)
 捕手   地引 雄貴(右投右打・183/75 早稲田大4年)
 一塁手  杉山 翔大(右投右打・172/78 早稲田大4年)
 二塁手  中村 奨吾(右投右打・180/75 早稲田大2年)
 三塁手  茂木栄五郎(右投左打・171/75 早稲田大1年)
 遊撃手  高田 知季(右投左打・175/65 亜細亜大4年)
 外野手  古本 武尊(右投左打・175/77 龍谷大4年)
      中村 篤人(左投左打・179/77 亜細亜大3年)
      金子 聖史(右投右打・175/75 九州共立大2年)
 指名代打 高橋 直樹(右投左打・172/72 早稲田大4年)

 11人中7人が早大の選手。いかに彼らの活躍が鮮烈だったかこれだけでもわかる。なお、次の学校の試合を見ていないので、このベストナインが独断と偏見以外の何ものでもないことを断わっておく。
[見ていない学校]……旭川大、国際武道大、上武大、関東学院大、福井工大、立命館大、岡山商大、四国学院大、福岡大、西日本工大

※決勝戦、早稲田大対亜細亜大の観戦記はホームページに掲載します。

http://kosekijunjihomepage.com/


大瀬良大地(九州共立大)にほしかった細かな技術

2012-06-18 02:29:26 | 2012年観戦記・大学野球

◇6月17日(日曜日)晴れ
大学選手権準決勝/神宮球場
早稲田大3-2九州共立大

 早大が吉永健太朗(1年・右投右打)、九州共立大が大瀬良大地(3年・右投右打)の先発でスタートし、早大が横山貴明(3年・右投右打)、有原航(2年・右投右打)とつないで九共大の反撃を2点に抑えて辛勝した。
 吉永は6回、2死一、二塁の場面で降板したが、110~130キロのスピード差をつけたチェンジアップで九共大打線を翻弄した。厳密に言えば、110キロ台がチェンジアップ、120~130キロ台がシンカーと、異なる球種を投げ分けていたのかもしれない。チェンジアップがカウント球で、勝負にいくのはシンカーと用途も異なっていたようで、この2つの球種が威力を発揮した。
 それに対して大瀬良は、MAX151キロのストレートと130キロ台後半のカットボールを主体にした力のピッチングで早大打線に対抗した。普通カットボールは真横に小さく曲がる球をイメージするが、大瀬良のカットボールは斜めに小さく変化してくる。この角度は新鮮で、7奪三振中、5個がこのボールだった。
 よくなかったのは左肩の早い開きで、これが右打者の内角をストレートで突けない大きな要因になった。5回表、2死二、三塁の場面で1番中村奨吾(2年・右投右打)に先制の2点タイムリーを打たれたとき捕手は内角を構えていたが、ボールは真ん中に入り、これをセンター前に痛打された。
 またフィールディングにも甘さを見せた。2対2で迎えた8回、3番高橋直樹(4年・右投左打)、4番杉山翔大(4年・右投右打)に内野安打を打たれるのだが、普通の投手なら難なく捕っていた打球である。無死一、二塁から5番地引雄貴(4年・右投右打)に決勝打を打たれて、九州共立大の決勝進出の夢は断たれた。

※6/17の亜細亜大対龍谷大の観戦記はホームページに掲載されます。

http://kosekijunjihomepage.com/