『2020年版 プロ野球問題だらけの12球団』(草思社)が出ます。2000年にスタートして今年で21冊目になりました。巻頭の特集は1が「東京オリンピック金メダル大作戦」、2が「球団増のエクスパンションを今提案する理由」。野球の国際化が進んでいる現在、MLBとともに世界を牽引しなければならない日本に12球団しかないって、寂しいと思いませんか。王貞治・ソフトバンクホークス取締役会長も声を挙げている今は球団増の絶好のチャンスです。12球団の分析をやっていて注目する球団は、パ・リーグはソフトバンク、ロッテ、オリックス、セ・リーグは中日、ヤクルトです。若手の抜擢ができるかどうか、そこに一番注目しています。
◇新刊案内
『ドラフト未来予想図』(文藝春秋、定価1458円)
・はじめに
・プロ野球2018年の現在地
イチロー、松坂、大谷がドラフトを変えた
・12球団ドラフト戦略分析
・ドラフト1965~2018
人生で必要なことはすべてドラフトで学んだ
・ドキュメント2018・10・25
吉田、根尾、藤原……高校生たちの未来予想図
・あとがき
はじめにの冒頭で「過去10年間(2000年~2017年)、ドラフト会議(育成含む)を経てプロ野球の世界に入った選手は918人いる。このうち成功、もしくは成功の可能性の高い選手は、パ・リーグ95人、セ・リーグ78人の計173人。(中略)成功率は918分の173。つまり18パーセント強にすぎない。プロ野球の生存競争の厳しさをこういう部分で味わってほしい」と書きました。この数少ない成功選手を適切なポジション、打順、ローテーションなどに配置したチームだけが強豪と称されることが許されますが、この「数少ない成功選手を適切なポジションに配置する」ことが難しい。その証拠に12球団のほとんどが1~4年の間に黄金時代と暗黒時代を行き来する不安定な時期を経験しています。この不安定な〝揺らぎ″を回避する手段がドラフト。12球団が過去に行ってきたドラフトを分析しながら、成功法則と失敗の原因を探っていくのが前半。
後半は私と野球との関りを書きました。大学を卒業してすぐ雑誌のライターになり、週刊誌の編集者に「ドラフトを特集しませんか」と言って一蹴されたところから始まり、ドラフト候補の簡単なレポートを12球団に送ったところ球界に参画したばかりの西武の広報課長から勤務先に電話が入ったことやドラフト会議倶楽部を立ち上げた頃のこと、さらにアメリカ野球旅行やそこで知ったストップウォッチを使った野球観戦の方法など、40数年間を一気に書き上げました。
日刊スポーツ「野球の国から 高校野球編」に明日29日から3日間、登場します。テーマは、29日が松坂大輔以前の甲子園大会ベストナイン、30日が松坂大輔以後の甲子園大会ベストナイン、31日が甲子園と監督です。それにさきだって、この記事を執筆していただいた金子航さんによる取材後記が日刊スポーツドットコムに掲載されました。沖縄・海邦リーグ、佐賀・鳥栖リーグ(クロスロードIN鳥栖)のことや、秋季神奈川大会で鎌倉学園が横浜高校相手に演じた8回裏の猛攻撃など、バントや非暴力について話したことをうまく拾って書いていただきました。正月元旦からは「野球の国から シリーズⅡ」の監督編がスタートします。第1回に登場するのは和歌山県立箕島高校を春夏連覇に導いた尾藤公さん。今でも忘れられないのは尾藤さんが亡くなる数年前、東京・四谷三丁目の酒場「あぶさん」にご一緒したときのこと。あぶさんの大将・石井和夫さんが店内のモニターに延長17回の熱闘、星稜戦を映し出すと店内のお客さんが一斉に拍手してくれたんです。それまでは放って置いてくれたのに気づいてくれていたんですね。今でも思い出すとウルっときます。
https://www.nikkansports.com/baseball/column/kunikarahs/news/201712270000003.html
ドラフト会議が10月26日(木曜日)17時から行われます。1965(昭和40)年からスタートして今年で52年目。巨人V9 の1年目だったことを考えると感慨もひとしおです。それから9年後、巨人の独走にストップがかかり観客動員数はゆるやかに上昇に転じていきます。私が中継の解説をするようになったのは1999年が最初で今年が19年目。20年は続けたいと思っていたのであと一歩です。今年はスポーツジャーナリスト・西尾典文さんとのダブル解説。最初に知り合ったのは西尾さんが筑波大学の大学院生だった頃で付き合いはもう15年以上になります。その間1回も嫌な気分になったことがありません。この3年くらいは私より球場に足を運んで緻密に選手を見ています。こんな頼もしい相棒はいません。あと6日、清宮幸太郎、安田尚憲、中村奨成、石川翔、田嶋大樹、東克樹、馬場皐輔はどこに指名されるのでしょう。皆さん、小関、西尾のダブル解説を楽しみにしてください。
https://www.sky-a.co.jp/category/baseball/3000020/
『大谷翔平 日本の野球を変えた二刀流』(廣済堂出版、定価1300円+税)
『「野球」の誕生』球場・球跡でたどる日本野球の歴史(草思社文庫、定価800円+税)
大谷本は7月下旬、『野球の誕生』は8月2日刊行予定です。この時期に本を出すことがなかったので、野球観戦と折り合いをつけるのが大変でした。
大谷本は歴史作家がたとえば織田信長を書くように、丁寧に一歩ずつ、その歩みをなぞって書きました。本を出すことは考えていませんでしたが、大谷のデビュー以来、テレビの映像や資料をまめに集めていたのが助けになりました。足りないところは国会図書館にも足を運んでひたすら資料集めに没頭。主観を廃し、客観的要素を膨らまして大谷のスケールに沿って書くということを心がけ、読み返してみて結構面白かったです。『野球の誕生』は2013年11月に刊行した『野球を歩く』の文庫化です。やっと2冊とも手が離れ、他のことに没頭できます。今夏は徳島・板野高校の森井絋斗(投手)、菰野高校の岡林飛翔(投手)を見るのが楽しみ。