パン屋を演じた『スキージャンプ・ペア』以来の・・・いや、『過去のない男』以来のアキ・カウリスマキ映画。
監督自ら“敗者三部作”と銘打っているこの作品。警備会社で夜警をしている主人公コイスティネンは仕事をそつなくこなすが、同僚からは嫌われ、家族も恋人もいない、孤立した人生を歩んでいるのです。本人は「警備会社勤務のままじゃ終わらない」と、夢は大きく独立心旺盛なのだけど、どうもうまくいかない。警備会社も3年目だというし、職場の人間関係が原因で転職を重ねているのだと想像できる。
失業だとか転職だとか、人生の落伍者というキーワードは他人事ではないのですが、コイスティネンのように真面目な不器用さを見せつけられると、ついエールを送りたくなってきます。なにしろ、夜明けのカフェで声をかけてくる謎の女ミルヤに誘われるままデートする、なんてシチュエーションはやばいでしょ・・・孤独さゆえに人を見る目がないというか、純粋すぎるというか。それに加えて、ソーセージ屋の女性アイラの気持ちにも気づかないという鈍感さも憎めないところ。
やがて宝石強盗の幇助罪として実刑を受けることになるのですが、いつの間にかミルヤのことを信じて、警察や裁判所でも彼女の名を出さなかった。そこに男らしさも感じられるものの、彼女に対する執着心もなさそうだったし、罪を全て一人で被ってしまうほどの神のような存在だったのかもしれません。だけど、時折キレてしまい、暴力的な一面を見せるところは人間臭さも感じてしまいました・・・
一見すると冷たさも感じられる町並み、それに刑務所の壁の映像。カウリスマキの映像にはこの敗者の心情をそのまま建物に投影したかのようなものを感じます。そして、刑務所内で初めて笑顔を見せる主人公や、ほのかな希望を感じさせるラストシーンには全体に比べると際立つほど印象的。それに暴力シーンを直接見せない手法そのものにも作り手の優しさを感じさせる作品でした。
★★★★・
監督自ら“敗者三部作”と銘打っているこの作品。警備会社で夜警をしている主人公コイスティネンは仕事をそつなくこなすが、同僚からは嫌われ、家族も恋人もいない、孤立した人生を歩んでいるのです。本人は「警備会社勤務のままじゃ終わらない」と、夢は大きく独立心旺盛なのだけど、どうもうまくいかない。警備会社も3年目だというし、職場の人間関係が原因で転職を重ねているのだと想像できる。
失業だとか転職だとか、人生の落伍者というキーワードは他人事ではないのですが、コイスティネンのように真面目な不器用さを見せつけられると、ついエールを送りたくなってきます。なにしろ、夜明けのカフェで声をかけてくる謎の女ミルヤに誘われるままデートする、なんてシチュエーションはやばいでしょ・・・孤独さゆえに人を見る目がないというか、純粋すぎるというか。それに加えて、ソーセージ屋の女性アイラの気持ちにも気づかないという鈍感さも憎めないところ。
やがて宝石強盗の幇助罪として実刑を受けることになるのですが、いつの間にかミルヤのことを信じて、警察や裁判所でも彼女の名を出さなかった。そこに男らしさも感じられるものの、彼女に対する執着心もなさそうだったし、罪を全て一人で被ってしまうほどの神のような存在だったのかもしれません。だけど、時折キレてしまい、暴力的な一面を見せるところは人間臭さも感じてしまいました・・・
一見すると冷たさも感じられる町並み、それに刑務所の壁の映像。カウリスマキの映像にはこの敗者の心情をそのまま建物に投影したかのようなものを感じます。そして、刑務所内で初めて笑顔を見せる主人公や、ほのかな希望を感じさせるラストシーンには全体に比べると際立つほど印象的。それに暴力シーンを直接見せない手法そのものにも作り手の優しさを感じさせる作品でした。
★★★★・
この主人公の人格は、不思議ですね。
とても苛々するんですけど、どこかで味方したくなっちゃいますね。
なかなか個人的には好みな感じです。
他にも色々観たいなぁ~と思うのですが、
レンタルになかなか置いてなかったりもするんですよね。
でも、「過去のない男」は是非観たいと思います♪
そこまで考えると、世の中が悲しくなってきますよね。アメリカ新自由主義だなんて言っても、結局は弱者切り捨てに他ならない。金持ちがどんどん金持ちになる仕組みなんですからね~
なんだか原始的な資本主義に戻ってしまったかのような世界です。
それでもヨーロッパはまだ福祉が充実してるほうなのでしょうかね。
日本のことを考えると今後も不安になってしまいますが、邦画でもこれくらいの作品が登場してもらいたいものです。
チャップリンは金字塔ですよね。
『過去のない男』
記憶をたどるより、観た方が早いので、借りてきました(笑)
『過去』の方が、無一文・記憶喪失・不況・失業・トレーラーで凍死・ゴミ箱暮らし等、どん底の貧困状況なのに、さしのべられる手が多く、義理人情・愛・暖かさ・心の豊かさを感じ、生まれ変わり・人生のリセット観まである。
少しうまく行きすぎ。。
だから『街』は、弱者、無知なモノは利用される、殺伐とした現代を投影したのかと思いました。
しかし、弱きモノを救うのは、弱きモノ、強いられたモノ、優しきモノ。
この構図・・
いつの世も・・
そうでしたか・・・いつも書き込みの時間が気になってたのですが、夜勤のせいだったのですね。
この映画はチャップリンの『街の灯』とは全くの別物ですけど、落ちぶれた者が這い上がるというテーマが共通しているし、多分タイトルでオマージュを捧げているんでしょうね。
チャップリン作品のリメイクというのはある意味、大それたことなので、誰も挑戦しないんじゃないでしょうか・・・
心も体も削られ、刷り減り、ガタガタになっていきます(現在進行形)
ああ・・規則正しい生活が送りたい(涙)
ところで、この作品はチャップリンの『街の灯り』のリメイクなのでしょうか?
別物としてご覧になりましたか?
学生時代には警備員のバイトをやりましたですよ!
多かったのは道路片側通行の交通誘導でしたが、孤独を感じました。仕事中に歌を作ったりして楽しんだりもしましたが・・・夜間といえば、ガソリンスタンドのバイトもやりました。昼夜逆転は人間の性格をも変えてしまいそうです。
今の世の中じゃ刑務所に入ってたほうが快適だという人も多いんじゃないでしょうか。そこまでいくと、起死回生なんてのもないと思うけど、とにかく更生することが大切ですね。それと、更生できる社会を作ってもらいたい・・・
昼夜逆転の生活は、大変です。
服役中は、寝床もあり、飢餓もなく、運動時間も、仕事もあり、僅かながら報酬も出る。
規則正しい、健康的な生活。
罪の償い、更正が目的なのだから当然ですが、酒・女・自由より、ソレを求め、軽犯罪を犯し、服役を繰り返す人もいる。
弱者には厳しく、残酷な現実です。
でも、主人公には、心配して駆け付る人がいた。健康だし若い。
起死回生のチャンスや奇跡など、そうそうない。
現実と自分を認識し、努力し、一つ一つ目標を達成し、心身共に健康で、豊かな人生を歩んで欲しい。
死なないで・・
監督から弱者・若者へのメッセージですね。
犬のことで3人の男たちに殴られるところ・・・奥の部屋に連れていかれて・・・
あのシーンはインパクトありましたね~~直接的な暴力よりも印象に残ってしまいます。
『浮き雲』も観てきたのですが、どちらかというと、街のあかりのほうがいいかな。想像力を駆り立てられるといった点で!
>kisen様
どの映画も90分くらいなのかな?
見やすくていいですよね~
ミルヤという女性。この手の弱者と付き合ったことがなかったのでしょう。母性本能をくすぐられながら、結局はちょっと反省しただけ。再会するまでの期間が長かったためか、ああいう結果になってしまいましたが、あの期間が短ければ結果は違っていたかも・・・
俺だってパチンコで勝った翌日には気分爽快で、何だって出来ちゃうような気になりますから(笑)
俺も警備員のバイトをしたことありますけど、あの制服を着ちゃうと強くなった気になって、ヤクザにだって注意したことあるし・・・
完成度としては『過去のない男』には届かないけど、ちょっとだけ希望を持たせてくれるところに、現実味があったりして・・・可能性が低いところに・・・
kossyさん、こんばんは。
これも、男の美学なんでしょうね。でも、なんとなくミルヤという女性も彼に心惹かれているような感じに描かれてましたね。
今は身動き取れないから、マフィアのボスの言うことを聞いてるけれど・・・って感じでしたね。
しかし、好きな女性ができると突然、犬をほったらかしてる強そうな男に食ってかかる。こういう描写って、映画でよく見るけれど、男の人って本当にそうなのかな。
そんなに急に自信がつくものなのかな。
どんなに気づいてもらえなくても彼を思いつづけたアイラには尊敬を覚えます。
でも私は、せっかくここまで「敗者」の世界を描いたのだから、ラストはもっとハッとするような驚きを期待しました。そこが少し残念に思います。(あくまで私の個人的な思いですが)
一見殺風景とも思える風景の中で、終始どこか優しく温かい目線で描かれていく部分がとても心地よかったです
。