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それだけが、僕の世界

2019-01-28 16:43:55 | 映画2019


 観終わった後、もうすぐ自分の母親の一周忌だったことを思い出した。兄弟の絆よりも、このユン・ヨジョン演ずる母親がよかった。そういえば、誰かが言ってたけど、「父親が死んだときには泣けなかったけど、母親が死んだときには号泣してしまった」という言葉を思い出した。やはり男にとってみれば、母親の死が一番悲しいんだよね。

 自閉症の弟ジンテはピアノの天才。しかしサバン症候群のため楽譜を読むことはできない。聴いた曲をすべて耳コピして弾くことができるのだ。そんな彼のスタイルは譜面立てにゲーム画面を出したスマホを置いて、一心不乱に鍵盤の上に指を走らせる。憧れのピアニストは彼が「かわいい子」と呼ぶハン・ガユル(ハン・ジミン)。車に轢き逃げされ脚が義足となり、3年前に表舞台から姿を消していたのだ。そんな彼女に偶然撥ねられた兄のジョハ(ビョンホン)。あまりにも出来すぎている関係にはちょっと引いてしまいがち。

 ボクサーの才能はとっくになくなっていて、スパーリングパートナーのバイトとか、ビラ配りでその日暮らしの生活をしていたジョハにとっては、父は刑務所、母親は自分を捨てた過去があったため家族が鬱陶しい存在でもあった。しかし、弟はそんな怨恨など一つもない。ただ、母親が死んでしまったら、彼の面倒を見るより、施設に送り込んだほうがいいと思っていた。

 一人暮らしが中学生時代からずっと続いていたジョハの気持ちもよくわかる。そして母親は自分の死期を悟り、家族の絆を取り戻すことに望みを託す。仕事で一か月プサンに行ってくると言い残して出て行ったが、実は病院に入院するためだったのだ。知らなかったのはジョハだけ。そして、ジンテのピアノ演奏を聴いて、ジンテのために思いっきりの愛を貫くのだ。ラストのコンサートは涙なしでは見られない。コンサートで死にゆくシーンは『ラスト・コンサート』以来かもしれない。「不可能とは事実ですらなく、単なる思い込みだ」というモハメド・アリの言葉も最後に生きてくる!


★★★★

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