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家へ帰ろう

2019-03-14 05:15:25 | 映画2019
 ツーレスの意味が解らなかったので、アルゼンチンの選手の名を付けてみましたが、映像から伝わってくるボロボロとなったアブラハムの右脚は痛々しかった。反ナチスの映画はハリウッドを中心に定番となっているのですが、このロードムービーの中にドイツ人女性を魅力的に描いていたことが特徴として挙げられます。頑なに「ドイツの国を通りたくない」「ドイツの地に足を下ろしたくない」と、拒み続けていた88歳の老人アブラハムが文化人類学者のイングリット(ユリア・ベアホルト)に心を許す瞬間が美しい。ドイツ人は反省している。ユダヤ人虐待した史実を70年間ずっと恥ずかしい記憶として捉えているのだ。とにかく、おでこにキッスなんてのも恥ずかしいようで、美しいのです。

 アブラハムの娘たちは老人ホームに入れたがるだけだし、脚を切っちゃえと言ってくるし、もう子育ても終わったのだからと、突如家出をする始末。頑固で狡猾な彼のDNAを受け継いだかのような孫娘も面白いし、10歳以下の女の子に対しては特別な思い入れがあることもうかがえる。ただ、旅先で出会う女性たちは魅力的な女性ばかり。宿屋の女主人ゴンザレスもいい関係になりそうだったし、イングリットとも心打ち解けたようだし、最後の看護師ゴーシャ(オルガ・ポラズ)なんて、色っぽいだけでなく、彼の人生を支えてくれそうなくらい優しい女性だ。

 「ポーランド」という言葉をも頑なに口にしないアブラハム。腕には迫害されていた時に彫られた数字も出てくるのですが、末娘(40歳前後か?当然戦争を経験していないユダヤ人)の腕にも数字が彫られていたことが印象に残る。鑑賞中ずっと気になっていたので、ネット検索してみたくなるほど。なるほど、イングリットのパターンとは真逆であるけど、過去に起こった負の遺産を伝承していく重要性をも訴えていたのだと納得。

 93分と短めではあるけど、色んな要素がぎっしり詰まったロードムービー。スペイン語が基本だけど、イディッシュ語や様々なヨーロッパの言語が飛び交う作品でもありました。また、おじいちゃんが案外お洒落なのも仕立屋をやってたから。最後までスーツが登場しないのも良かった。70年前の約束という一途な信念が人とのコミュニケーションで巻き起こす笑い。さらに亡き妹や家族の楽しかった記憶などが、過去の迫害後の瀕死状態の映像や列車の中で見た恐怖の幻影とも対比され、感情を揺り動かされる映画。もちろんラストは号泣必至です。


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