閣僚による「原爆投下しょうがない」発言が世間を賑わせた今夏。さらに原爆症認定問題もクローズアップされているなか、素晴らしい映画が登場したように思う。
それでも、避け続けていた被爆者団体との面会を急いだのは、内閣支持率低下を食い止めようとしただけなのが情けないところだ。科学的に因果関係を解明できてないという口実は、裏を返せばそれだけ核兵器には未知なる影響力が存在することを示しているのだし、逃げ口上そのものが核容認の本音をも感じさせてしまう。
被爆者の苦悩は物理的な苦痛だけではなく、伝染するというデマによって起こる差別も大きいことは、先日観た『ヒロシマナガサキ』でも明らかにされていました。その差別があるがために、自身が被爆者であることを言えない立場にしたり、自殺してしまう者も多かった。周りの人が皆死んでいるのに自分だけが幸せになることができない、死んだ人に申し訳ない・・・などと生き残った者の苦悩。『ヒロシマナガサキ』でも被爆者のそうした本音を知ることができたし、映画『父と暮らせば』でも心打たれたものだった。
原爆による直接被害を描いた作品は数多くあれど、生き残った被爆者をテーマにした映画はまだまだ少ないように思う。戦後生まれの日本人が人口の75%を超えた現在、原爆が投下された日も知らない若者がいることも嘆かわしい事実なのですが、原爆症認定率の低下にも驚かされるのです。長年の苦痛に耐え、被爆したことをも隠していた人が、症状が悪化してやっとの思いで申請したら却下されるのである。
映画はそうした政府や行政に対する怒りをぶつけるような内容ではなく、静かに叙情的に被爆者の心を描いたもの。ただ、前半「夕凪の街」では、「誰かに死ねばいいと思われた」とか「やった!また一人殺せた」などといった、今までにない戦争や原爆そのものを憎む直情的な言葉も登場するので、そのシーンでは心が痛む。また、原作漫画にはなかった防火用水への合掌や、悲惨な様子を描いた絵によって『ヒロシマナガサキ』をも思い出して涙を禁じえることができなかった。
二部構成となっている後半「桜の国」では、安らかに眠る死者への鎮魂の想いを感じさせられるのですが、現代に生きる被爆二世の差別や、生きていくことの力強さがじんわりと響いてくるのです。薄幸の女性を演じた麻生久美子とボーイッシュで現代っ子的な田中麗奈の対比もさることながら、ケロイドの傷痕を曝け出しても誰も口にしない銭湯の様子とピチピチお肌が眩いくらいのラブホのバスルームのシーンが絶妙なコントラストとなっていました。さらに、伯母の死や父が敢えて選択した被爆者との結婚を見て、七波が生まれてくる決意をしたという、世代を越えてもしっかりと融合する脚本もよかったです。
★★★★★
それでも、避け続けていた被爆者団体との面会を急いだのは、内閣支持率低下を食い止めようとしただけなのが情けないところだ。科学的に因果関係を解明できてないという口実は、裏を返せばそれだけ核兵器には未知なる影響力が存在することを示しているのだし、逃げ口上そのものが核容認の本音をも感じさせてしまう。
被爆者の苦悩は物理的な苦痛だけではなく、伝染するというデマによって起こる差別も大きいことは、先日観た『ヒロシマナガサキ』でも明らかにされていました。その差別があるがために、自身が被爆者であることを言えない立場にしたり、自殺してしまう者も多かった。周りの人が皆死んでいるのに自分だけが幸せになることができない、死んだ人に申し訳ない・・・などと生き残った者の苦悩。『ヒロシマナガサキ』でも被爆者のそうした本音を知ることができたし、映画『父と暮らせば』でも心打たれたものだった。
原爆による直接被害を描いた作品は数多くあれど、生き残った被爆者をテーマにした映画はまだまだ少ないように思う。戦後生まれの日本人が人口の75%を超えた現在、原爆が投下された日も知らない若者がいることも嘆かわしい事実なのですが、原爆症認定率の低下にも驚かされるのです。長年の苦痛に耐え、被爆したことをも隠していた人が、症状が悪化してやっとの思いで申請したら却下されるのである。
映画はそうした政府や行政に対する怒りをぶつけるような内容ではなく、静かに叙情的に被爆者の心を描いたもの。ただ、前半「夕凪の街」では、「誰かに死ねばいいと思われた」とか「やった!また一人殺せた」などといった、今までにない戦争や原爆そのものを憎む直情的な言葉も登場するので、そのシーンでは心が痛む。また、原作漫画にはなかった防火用水への合掌や、悲惨な様子を描いた絵によって『ヒロシマナガサキ』をも思い出して涙を禁じえることができなかった。
二部構成となっている後半「桜の国」では、安らかに眠る死者への鎮魂の想いを感じさせられるのですが、現代に生きる被爆二世の差別や、生きていくことの力強さがじんわりと響いてくるのです。薄幸の女性を演じた麻生久美子とボーイッシュで現代っ子的な田中麗奈の対比もさることながら、ケロイドの傷痕を曝け出しても誰も口にしない銭湯の様子とピチピチお肌が眩いくらいのラブホのバスルームのシーンが絶妙なコントラストとなっていました。さらに、伯母の死や父が敢えて選択した被爆者との結婚を見て、七波が生まれてくる決意をしたという、世代を越えてもしっかりと融合する脚本もよかったです。
★★★★★
最近になってようやく原爆症認定問題が解決へと向かいはじめました。
やっぱりこの映画で一番のポイントは、今でも苦しんでいる人がいるんだということかな。この映画を観たときには『ヒロシマナガサキ』を観たこともあって、自分の中にかなり重くのしかかってきました。
日本が行ったことも反省しなければならないのですが、あまりにも内容が膨らみすぎると見づらくなりますもんね。
今後もいい映画が作られることを願ってます♪
被爆・戦死・戦後60年3世代苦しむことは【誰か】の決定・望んだこと。【誰】?敵国の政治家?軍幹部?戦争とは?戦死とは?被爆とは?
憎しみの連鎖や復讐を煽る表現ではなく、悼み悲しみを訴える秀作。
ただ、日本は被爆国ですが、敗戦国。戦時中は敵国で侵略・虐殺をしたことも表現すべきだと思いました。
戦死した方のご冥福を祈ると共に、今も苦しむ方がいる事実を認識し、憎しみを連鎖をせず、平和や命の尊さを称え、戦争反対!作品が多く製作ることを願います。
そういえば、ようやく認めはじめましたよね~
60年もかけてやっと・・・それまでに原爆症で亡くなった方にも謝罪してもらいたいです。
世界で唯一の被爆国だということを風化させないように、今後も意識づける映画ができればいいですね。
戦後60年をかけて、まだ原爆後遺症の認定がどうのとかったるいことを言ってる、厚生省や政府には、呆れて何もいえません。
教科書の原爆記述で、論争するのもいいけど、こういう作品を子供たちにはすべて見せた方がいいと思います。
堺正章のキャスティングはかなりバッシングされてそうですね・・・
やっぱり青年期とのギャップがあるからなんでしょうけど、コメディアンというイメージを払拭できないということも・・・
原作に忠実な構成というもしょうがないんでしょうけど、大幅に変えても批判されそうですいねぇ・・・(笑)
やっぱ藤村志保じゃ苦しいかな?って感じでした。
堺正章もあとから読んだ原作からすればキャラはいい感じなのに、どうしても場の空気をかえてしまう人でしたね。
原作を読んで、原作に着実に映画化されてたんだなぁとびっくりしました。
おおっ、今年一番でしたか!
俺もベスト10には入りそうな勢いでした。
実は、俺は原爆スラム?のことを考えたこともありませんでした。最近の大地震の仮設住宅などを考えたら、当然あった事実ですもんね・・・俺の知識なんて「はだしのゲン」からだけだったし・・・
原爆が落とされた直後だけじゃなく、今でもずっと被害者がいる事実。戦後は終わったなどと言ってる偉い人が多いけど、もっと知らなければなりませんよね。
原作も読んだことだし、もう一度観ておきたい作品です。
>たましょく様
ご心配かけてしまいました。
そうですよね、戦争の生々しい描写だけじゃなく、被害に遭った人たちのその後をきちんと描いてありました。まだまだ苦しんでる人たちがいる!このことを忘れちゃいけませんよね。
自分も原爆症のために不安なはずなのに、被害者に悼む主人公の心理がとてもよかったです。
>AKIRA様
たしかに第二部「桜の国」は作るのが難しかったんだな~と感じてしまいます。
堺正章の起用も賛否両論ですし、好意的な目で見ないとだめなのかもしれません。
俺は原作を後から読んだのですが、逆パターンだと、映画のほうが良く見えてしまいました・・・
>MIYAUCHI様
ご心配かけて申し訳ありません。
感動が前半にやってきてしまった。
原作を大幅に変更して、感動をラストに持ってくることもできたのでしょうけど、原作とかけ離れてもいけないし・・・難しいところですよね。
戦争というものを客観的にとらえてあったし、被害者の立場から見た戦争を描いたことによって、より身近に感じられるかもしれません。俺も多くの人に観てもらいたい映画だと思います。
>Elie様
「誰かに死ねばいいと思われた」
すごくきつい言葉だし、そのアメリカを指す“誰か”という言葉が戦争を始めた日本そのものも意味しているような・・・深いですよね。
堺正章が「夕凪の街」に繋がっていくそれぞれのシーンが本当によかった。
いい映画でしたよね~
>シャイロック(師走)様
どうもありがとうございます!
復帰したものの、ちょっとカンを取り戻すのに時間がかかってしまいました。
毎日コツコツと更新しないと、結局しんどいことになりそうです(汗)
この映画は本当にいいから、是非ご覧になってくださいね。
>miyukichi様
どうもありがとうございます。
『ヒロシマナガサキ』は被害者の生の声が聞けますから、リアルだし、心にグサリときますよぉ~
DVDがいつ頃になるのかわかりませんけど、テレビで全国一斉に放送されるほうがいいのかもしれませんね。
とにかく苦しんでる人が大勢いるんだから、なんとかしてあげたい!新しく厚生労働大臣になった人はどう対処するんだか・・・
>aq99様
たしかに・・・
『時間ですよ』に夢中になってた頃、この映画を先に観ていたとしたなら、視聴率も上がらなくなったかもしれませんよね。
何も知らないで観た俺は、最初「刺青かな?」などと感じたオバカさんです・・・
>たいむ様
直接的な反戦メッセージも心揺さぶられるものですけど、こうした人間の心をそのまま描かれると、人間本来の心が動くというかなんというか・・・被害者の心を直接感じ取れるような。
戦争映画はいつも傍観者として観ていたことも、この映画によって変わりそうです。
麻生久美子と田中麗奈の演技がピタリと当てはまり、これ以上の配役なんて考えられそうにもありませんよね。
>taka0096様
原作は一見すると普通の少女漫画のような雰囲気ですもんね。読み込むうちに徐々にその奥の深さを感じてしまいました。
原爆を描いた絵は『ヒロシマナガサキ』にも多数使われてました。CGを使ったりしてもっとリアルに映像化できるんでしょうけど、被害者たちの心が伝わってきますよね。
個人的に皆実の心象風景に出てきた「絵」が怖かったです。色々想像してしまって、全身鳥肌でした……。
ストレートに反戦を訴えるものでも、やり場のない怒りをあらわにするものでも、保証を訴えるものでもなく、それ以前のただ人間の気持ちを描いた作品としてとても心に響きました。
配役もはまってましたね。
大泣きでしたが悲しいばかりの涙じゃないところも良かったです。
あれ、小中の頃見てたら、すごい衝撃やと思います。
おっ、女の裸が見れる!と思ったら・・・。
どうされたのかと心配してました。
復活、おめでとうございます☆
「ヒロシマナガサキ」は観ていないんですが、
記事を読んでいたら観たくなってきました。
DVDになってからになりそうですが・・・。
原作も読まれてるんですね。
どちらもとてもよかったですよね。
何十年にもわたっての苦しみ、
もうこれっきりにしないといけませんね。。
kossyさん帰ってきてくれてよかった^^
ずっと心配してましたよ。もうココも終わりかなとか思っちゃったよ~。すいません^^;
でも良かったです。帰ってきてくれて^^
またTBさせてくださいね^^
「誰かに死ねばいいと思われた」という言葉にはグサッときました。
『桜の国』の間も、『夕凪の街』に繋がるシーンでは何度も涙が込み上げてきて…
TBさせていただきますね。
更新されていなかったので心配しておりました。
「夕凪の街」が良かったですね。麻生さんの演技が良かったと思います。
何年たっても消えない心の傷跡、戦争は絶対にしてはいけないですね。多くの方に観てもらいたい映画ですね。
「夕凪の街」は麻生久美子さんの存在感で
素晴らしい余韻でしたが,
「桜の国」は演出が肌に合わず,
ツッコミが前に出てきてしまい,入り込めませんでした。。
戦争を題材にした映画は苦手だったのですが
醜い争いよりもそれによって巻き込まれ多くの
人間の心情や境遇をしっかりと描いてましたね。
見えなくとも今尚、戦争の傷に苦しむ人々が
この国に多く居ることを実感させられました。
今年一番、涙腺が壊れた邦画でした。
原爆スラムの、イキイキとした暮らしぶりの蔭で
もうあの頃多くの方が発症し、亡くなっていただろうに・・
と、考えるともうダメでした・・・
原作に無いシーンや小物(髪飾り)使いも「現代に繋げる」
「忘れない」のメッセージを感じ、良かったと思いました