離島暮らしと黒曜石(オブシディアン)

神津オブシディアンラボ活動誌

何故、離島で黒曜石なのか~神津島の黒曜石が語る古代人の海上渡航~ その1

2020-04-27 09:15:05 | 黒曜石
今回は、このブログを見つけた方や私の活動を見知った方がまず最初に考える(?)であろう疑問

何故、わざわざ離島に移住してまで黒曜石を追っかけているのか

について、簡単に書こうと思います(と言いつつ長くなるのはオタクの悪い癖)。


そもそも、神津島の黒曜石に出会ったきっかけは、大学での研究でした。
私、大学時代は考古学の学科に所属しておりまして、そこでの卒論のテーマを決める際、「海洋関係」にしようと考え調べていたところ、

「海を渡った黒曜石」がある

というのを目にして、興味を持ったのが始まりです。
この時は、まさかここまでのめりこむとは思ってませんでした。もともと鉱物とか化石とかが何となく好きだった(デ〇ゴスティーニの石系雑誌を全巻揃える程度)とはいえ・・・。   え、それ何となくってレベルじゃない? 

そもそも黒曜石は、その破片の切れ味から
・古代の人々が石器(石の道具)の原料として特に重宝し、多く使われていた素材
で、かつ
・風化に強く、長く土の中にあっても形を変えず残りやすい
ため、古代の人々の生活を調べる「考古学」において、かなりメジャーな研究対象です。
各地の遺跡から出てきた黒曜石の形、生まれ、その広がり方等を調べることで、当時その黒曜石を使った人々が
・どのような技術を持っていたか
・どのぐらいの範囲で活動、交流していたのか
・どの時期に活動が盛んであったか
等が分かるので、当時の人々の生活の様子を知る手掛かりになるのです。
特に、1990年代に入ってからは、遺跡から見つかった黒曜石がどこで生まれたのかを調べるための科学的な技術が向上し、簡単に大量に調べられるようになったため、すごい勢いで研究が進められました。
その結果、ある面白い事実が浮かび上がりました。
それは、これまで発見された黒曜石の中に、「海を渡っていた」黒曜石があることです。しかも、時期によってはかなり大量に、広い範囲で使われていたことも。

その黒曜石は、伊豆諸島のとある島から産出し、古代人の手によって関東地方を中心に運び出されていました。特に縄文時代に盛んに利用され、その範囲は最大で現在の愛知、三重県や新潟県等にまで拡大していたことが分かったのです。
この結果は、当時の考古学界に大きな驚きを与えました。なぜなら、これは当時の人々がそれだけの広い交流網を持っていたことを示し、そして
本土と伊豆諸島の間を流れる世界最強と言われる潮流「黒潮」を横切って往復し、大量の黒曜石を持ち帰るための「航海技術」を持っていたこと
を示すからです。
これにより、これまで考えられてきた当時の人々のイメージに、
「海上渡航に秀でた民」
という新たな側面が追加されることになりました。


そんな事実を解明した「海を渡った黒曜石」というのが、
まさに「神津島の黒曜石」というわけです。
このことを知った当時の私は、
「これはかなり面白いし、まだまだ新しいことが分かるんじゃないか」
と考え、この神津島の黒曜石を卒論のテーマに据えること決めたのでした。


・・・しかし、話はここで止まりません。
近年の研究で、世界の歴史すら書き換えるとんでもない事実も判明しました。
それは・・・・・・・・・




長く書きすぎたので、ここでパート分けします。
また次回!

石好きの生活 ~離島暮らしについて~

2020-04-15 15:44:37 | 離島暮らし
ようやっとblogにも慣れてきたように感じる今日この頃。

このblogでは、タイトルにもある通り、あまり経験している人がいないであろう「離島暮らし」の話も交えて、黒曜石マニアである私が、普段離島でどのような生活、活動をしているか、という話も書いていこうと思っています。
実際のところ、4年も離島に住んでいると、自分の感覚が世間一般のそれとずれてきていて、客観的に見直してみるとblogの良い記事ネタになるのではないか、と考えた次第。

島での夕焼け空(撮影下手ですが)
これを結構な頻度で見られるのは、ある意味贅沢

また、最近は田舎への移住に興味を持つ人が増えたせいか、ちょくちょく離島暮らしについて聞かれることも多くなり、どうやら需要があるようなので、そういう人達向けに、その一例を示すこともできるかな、とも思います。
詳しい内容は順次テーマを決めて書いていく予定。

今回は、田舎暮らしに確実に適さない人種を1つ挙げるだけにしておきます。


当たり前かも知れませんがとりあえず


虫大嫌い(特にクモ)な人


・・・この島は、諦めてください。m(__)m
手のひらサイズのクモが家にいて、基本的に共生することになります(家にとっては益虫のため)ので、あしからず。

そもそも黒曜石とは?

2020-04-09 17:06:49 | 黒曜石
どうも!
遂に(というかようやっと)緊急事態宣言と相成りましたね。
これにともない、最後まで残っていた参加予定イベントがもれなく中止となり、これで心置きなく島に引きこもれる、とある意味一安心した今日この頃です。

さて今回は、
「聞いたことあるけどそもそも黒曜石って何?」
「いや私は聞いたことすらないんだけど・・・」
って人達向けに、簡単に説明をしておこうと思います。
「へー、キレイな石だね。」
で済ませてしまわれると、とても悲し・・・もといとてももったいないのです。
以下、質問形式にてまとめます。


Q:黒曜石とはどういう石?

A:火山で生まれる天然ガラス

黒曜石(英名オブシディアンobsidian)は、ガラス成分を多く含んだマグマが火山から噴火した際、急速に冷え固まることでできる「天然のガラス」です。
コップ等のガラス製品みたいに平らに割れて、とても鋭い破片が出来ます。これは普通の石等とは違い、中身が規則正しく並んだ状態(結晶構造と言います)でなく、ぐにゃぐにゃな状態になっているからです。なので、どちらかというと水のような「液体」に近いです。学者によっては、
「固体に限りなく近い液体」
なんて言われたりします。

Q:色はやっぱり黒?

A:色々あるよ!

色は名前の通り黒色が多いですが、産地によっては赤、茶、銀、虹模様など、様々な色が見られます。中には正反対の白いものもあったり!
また、石にもよりますが、塊では黒く見えても、薄く割ってみるとかなり透明だったりすることもあります。
これを太陽や光源にかざすといい感じにキラキラ光って、とてもキレイなんですよ~・・・。(恍惚)

こんな感じ。

Q:中には何が入ってるの?

A:大体がガラス。でも水もちょびっと入ってる。

天然ガラス、という事で、中身は7~8割がガラス成分(二酸化ケイ素SiO2)ですが、実はほんの少しだけ水分が入ってます。マグマから生まれたのに水分が入っている、というのも、中々ヘンテコな話です。

Q:で、実際のところ何がすごいの?

A:切れ味

上でも軽く書きましたが、黒曜石は平らに薄く割ることができ、とても鋭い破片を作れます。この破片が持つ切れ味はハンパではなく、地球の天然の岩石から作れるものとしては、理論上最高の切れ味を出せるのだとか。
これは古代の人々もよく知っていたようで、石のナイフや矢じり等(石器と言います)を作る際の原料として、この黒曜石をよく用いていました。場所によっては、黒曜石をとるために命を懸けていた節もあります。これについては後々別の記事で詳しく書こうと思います。
ちなみに、聞いた話ですが、今でも神経の手術をするお医者さんの中に、黒曜石で作ったメスを使っている人がいるとか。なにそれカッコいい。


以上、軽く(という割には少し長くなりましたが)まとめてみました。
これで黒曜石はどんな石か、少しでも皆様に伝われば幸いです。
これら以外にも書きたいことはまだまだ沢山あるので、順次書いていこうと思います~。

新年度祝いと今年の抱負

2020-04-01 19:36:19 | 日記

皆様、新年度おめでとうございます。
世間はあまりお祝いできるムードではないので、こんなところででも少しでも思い出して頂ければ・・・と、思います。

改めまして、これからこのブログでやっていきたいこと云々をつらづらと。
ここでは、私がこれまで、そしてこれから行っていく黒曜石に関する研究や加工技術の修行過程、或いは離島暮らしにおける生々しい(!)体験談等を、まったり書いていければな、と考えてます。
自分の頭の中を整理するための覚書としての機能も持たせたいので、基本的にざっくばらんな文体の記事になるかと。
また、今後自分のやりたいこと(野望も含めて)をここに書くことで、あわよくば将来の自分の逃げ道を塞ぐ一助になれば、なんてことも考えてます。
ともかく、直感で書くことが多そうなので、基本グダグダ記事になる可能性が高いですが、こんなのでもよろしければ、今後ともお付き合いいただければと思います。m(__)m


あ、追記として、個人的な趣味の話もちょくちょく混ざる可能性があるので、それもご了承下さいませm(__)m×2