何度教えても玩具を壊してしまうのも、この程度の力でそんなに簡単に壊れるわけがない、と思い込んでいるかららしい。
そんな時、とうとう、というかやっぱりと言うか事件はおきた。
その日は休みで伴侶も在宅。
私はミニチュアの宿題も山盛りで、休日ではあったが、時間を見つけては二階に上がり少しづつ作品を仕上げていた。
伴侶はせっかくの休日なので子供を遊ばせがてら、体を休めてのんびりと過ごしていたのだ。
しばらく作業をしていたところ、1階にいたいっくんに呼ばれて手の届かないところに置かれた玩具を取ってくれとお願いされた。
以前、こいちゃんといっくんで取り合いの喧嘩になったので、箪笥の上に片付けてしまった私の子供の頃の玩具を詰め込んだボックスだ。
面倒くさいなーと思いつつ、伴侶は平日の疲れからかダラリと横になっていたので、私がそれを取り、子供たちに
「絶対、喧嘩をしないならあげるからね。」と言い残してから2階にあがった。
念を押したのが良かったのか、こいちゃんといっくんは仲良く中の玩具(昔父が海外に行った際、買ってくれたキーホルダーや、メモ帳などである)を出して遊んでいるようである。
私も子供たちの楽しげな声を聞きながら2階で作業をしていたのだが…。
突如、それを切り裂くようないっくんの叫び声!
本当に痛いときにしか出さない、切羽詰ったいっくんの声にすぐ何かあったのだと思った。
「いだいー!!いだいー!!血が出てるー!!!」
え!?血?
私は、血は苦手である。
いっくんが指を押さえて2階に駆け上がってきたが、怖くて傷も見られない私は、とりあえずティッシュで指を押さえさせ、伴侶のもとに。
伴侶がいっくんの傷の具合を見ると「血が凄い、すぐ病院に行こう」との事。
すぐに伴侶といっくん、こいちゃんの3人で病院に向かってもらい、戸締りをしながら廊下や階段を見ると、テンテンと血が落ちており、遊んでいた玩具にも血しぶきが。
「ガラスで切った」としか聞いておらず、詳しい事を知らない私は、ひとまず3人の後を追って病院に向かった。
さて、病院に着くと落ち着きを取り戻したいっくんは何とニコニコ笑顔である。
指をガーゼで押さえてもらいご機嫌で話をしているが、血が噴出したのがよほど怖かったのか絶対に指を離そうとしない。
そのため、先生に見てもらうのも一苦労。
私は血が駄目なので伴侶と診察に入ってもらったが、ものすごい叫び声と、バタバタと呼ばれる応援の看護婦さん。
どうやら手足を押さえなければ診察することも出来ないらしい。
結局私が呼ばれ、「心臓までガラスが行くんだよ~時間がないよ~」と脅して観念したいっくんを何とか診察。
レントゲンまで撮って、破片がないことを確認して傷を保護して診療は済んだ。
最後はポケモンのシールを2枚も貰ったいっくんに怪我の真相を聞いてびっくりした。
直径2センチほどの金魚ばちなので、いっくんは興味を持ったらしい。
箱から取り出し、指で持ち、力いっぱいつまんだというのだ!
小さな金魚ばちで、しかもミニチュア。
ガラスは薄いし、丸みを帯びていて、割れたとたんいっくんの指をざっくりと裂いてしまったようなのである。
普通は、たとえ興味を持っても、力いっぱいつまんだりしないっ。
びっくりするやら、呆れるやら…。
後からいっくんの服を調べて見ると、ズボンにもかなり血しぶきが飛んでいた。
相当血が出て、痛かったに違いない。
これで学習して、もっと考えて行動してくれるようになればいいのだが…。
残された金魚がさびしげである。