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台風一家

ドールハウス 日本の風景

独身の頃、大阪のミナミの方に住んでいた。
地下鉄を乗り継ぎ、南海電車を降り、暫く歩くとフードモデルや金物屋さんの並ぶ商店街がある。
用もないのにぶらぶらと歩き回ってショーケースの中に置かれたフードモデルを眺めるのが好きだった。
フードモデルを見ていると妙にわくわくして、ヨダレが出そうなほどのリアルさが不思議で、とても楽しかった。
この商店街の中でのショーケースの中のフードモデルにはすべて値札が付いていた、つまり売り物である。
私はデザイン系の学校を進んだせいでこういった物に興味があったが、一般の人がこれを買うのか、それとも喫茶店の経営者が買うのだろうか、とその時はぼんやり考えたが、今はフードモデル収集などが一般的な趣味としてちゃんと確立しているらしい。

先日ホームセンタームサシでドールハウスを多数展示していて釘付けになった。
和風のドールハウスばかりで、たこ焼きややラーメンの屋台、昔の食卓風景などがずらりと並ぶ。
日本家屋独特のひなびた雰囲気で、懐かしい合掌造りや細かい飛び石の細工などため息が出る美しさだった。
すっかり魅せられてしまい、その場で「戸塚恵子のドールハウス なつかしい日本の風景(私たちが子供だったころ)」と言う写真集のような物を買った。

細かい粘土の細工もすばらしいが、私が一番驚いたのは「懐かしい」と感じながらもなかなか形に出来ない、思い出の中の情景を細部に渡って表現し、見る物にため息をつかせる程の郷愁の念を思い起こさせるその表現力だ。
技術力もそうだが、この感性はとてもではないがまねは出来ないだろう。

とはいいつつ、見ているだけでは落ち着かない。
作り方なども書いてあったので翌日早速粘土を100円ショップで購入し挑戦してみた。
粘土をこね、慎重に模様となるすじなどを入れているとそれだけでも変に楽しい。
今流行っている「大人の塗り絵」にもかなり癒されたが、また新しい幸せを見つけてしまった…
伴侶もこういったことには興味があるというので、伴侶の定年後には二人で制作にいそしむなんて良いかなと想像する。
すると白髪の老夫婦が必死に小さな細工を施して、言葉も交わさず黙々と作業を続ける風景が思い浮かんだ。
黙々と…黙々と……
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