空也上人がいた (朝日新聞出版特別書き下ろし作品) | |
山田太一 | |
朝日新聞出版 |
¥1,200+税 朝日新聞出版 2011/4/30発行
ISBN978-4-02-250850-8
山田太一19年ぶりの小説。これが最後かもしれない、と言われれば読んでみたくもなる。
主な登場人物は、特別養護老人ホームでヘルパーをしていた27歳の青年と、ケアマネージャーの中年女性、それから81歳の老人の三人。少ない。
ストーリーもシンプルといえばシンプル。特養で事故を起こして辞めた中津草介は、ケアマネの重光雅美に紹介されて、吉崎征次郎という老人の在宅介護に通うことになる。
吉崎は、草介にご馳走をふるまったり、京都へ空也上人像を見に行かせたり、何を考えているのかわからない。疑惑はそれでもおいしい料理や気前のいい礼金にまぎらわされる。分不相応とおもいつつも、甘えが出る。意地もあるけれど期待もある。
…というような草介の心理が山田太一の筆で描かれる。
吉崎の狙いが那辺にあるのか、草介は疑う。
草介が特養で起こした事故への惧れ。
老人の人生最後の恋。
重光の若者への憧れめいたほのかな感情。
寄り添うように、空也上人がいるのだ。
うーん、やっぱりうまいですね。