廃院のミカエル | |
篠田節子 | |
集英社 |
¥1,600+税 集英社 2010/11/30発行
ISBN978-4-08-771378-7
これ、ちょっと『ミステリウム』の世界に通ずるものがあるな…。
篠田節子は『弥勒』で衝撃を受けて以来、とても好きな作家なのだけれど、『弥勒』がそうだったように読むのが怖くもある。ホラーじゃないけど下手なホラーなんか足元に及ばない怖さがある。
商社勤めだった美貴は、レバノンに転勤になり、そこで現地法人化されて本社から放り出され、さらに内戦が始まり、逃げ込んだギリシャで硬蜜という珍しい蜂蜜に出会う。ビジネスチャンスと見た美貴は、起死回生の転機にしがみつき、硬密を求めてギリシャ山中の村へ向かう。
現地に住む通訳の綾子。壁画修復士の吉園。三人が迷い込んだ人気のない修道院。
修道士たちの謎の死。
塗りつぶされたフレスコ画。
綾子の謎の行動。…
> 「これが底だ、と考えていつも次の一手を探してきたけど、その先に、まだ底があったりするんだ……」(45頁)
キリエ・イレイソン
神よ哀れみたまえ
俗世を捨てた修道士たちが求めた天上の世界。
宗教がらみの、だけど神がかっていない世界を描くと、篠田節子は本当にうまい。
装丁がまたいい。