盗まれた顔 | |
羽田圭介 | |
幻冬舎 |
¥1,500+税 幻冬舎 2012/10/25発行
ISBN978-4-344-02268-3
見当たり捜査って、羽田圭介が創造したんじゃないんだ、実際に警察にあるんだ、げー、びっくりー!
指名手配犯の顔写真を頭に叩き込み、雑踏で顔を探す。
ひたすら顔を見て、顔だけで逮捕する。
顔覚えが極端に悪い私には、想像もつかない仕事です……。
その見当たり捜査を担当する、白戸。
五百人の指名手配犯の写真がファイルされた手帳。同僚の谷、安藤と共に、雑踏にまぎれてひたすら顔を捜す。
警察が舞台とはいえ、コレをミステリと呼んでいいのか?
フツーのミステリじゃない。ストーリーはちょっと弱い。
しかし読み応えがある。
見当たり捜査で顔顔顔ばかり見続ける白戸の心理描写が、すごくリアル。
羽田圭介、実はけっこー好きです。
『走ル』とか。
ストーリーで盛り上げるんじゃなくて、文章が読ませる。
引き込まれる。うまい。
> 依存し合っている者たち同士の繋がり。そこにしか生まれない幸せの種類があるのだと白戸は感じた。子は親に依存し、親は子に、そして配偶者に依存する。(119頁)
> 東京の街はいまや鏡だらけだ。建築技術の発達によりありとあらゆる建物はガラス張りとなっている。壁はなく、窓しかない。アパレルショップや高級ブランド店の中にいる人々は、充足している己の姿をこれみよがしにガラスの外へと露出すると同時に、ガラスに映る己の姿に自惚れる。ネット環境さえあれば消費活動においてはなんでもできてしまう現代、人々が街を歩く理由は、街の至る所で自分の鏡像に遭遇するためといっても過言ではない。(153頁)
> 塚本は当時を思い出すかのように左上のほうを見た。右利きの人間の眼球は記憶を思い出そうとすると無意識的に左上を向き、嘘をつこうとすれば右上を向く傾向にある。(220頁)
> 「奴らに俺の顔は見つけられない。おまえにしか見つけられないんだよ、白戸」(244頁)