こども医療費助成…最近の仕分け頻出事業です。
これは、子育て家庭の経済的負担軽減のため、
こどもが医療機関を受診したときに発生する医療費を助成する制度です。
通院・入院、対象年齢、所得制限や自己負担の有無など、
自治体によって助成内容に違いがあり、全国一律の制度とはなっていません。
ほとんどの社会保障制度が均質化している日本にあって、都道府県や市町村でサービスに大きな差があり、そのために発生しているさまざまな問題について、仕分けの場で議論したいということなのでしょう。
都道府県の状況を調べたところ、平成21年度4月現在で、入院について最も手厚い愛知県と群馬県では、中学卒業まで所得制限を設けず無料。
大多数の県では、未就学時までを対象とし、所得制限や自己負担もあります。通院については、東京都が所得制限や自己負担はあるものの、中学卒業まで助成しています。(さらに別制度で助成があるそうです)
その一方で、3歳未満、所得制限を設け自己負担を求める県もいくつかありました。
そのうえ、かなりの市町村では県の制度に上乗せ助成をしており、上乗せした自治体と最低水準の自治体とでは、大きな差が生じています。
支援が手厚い自治体は、子育てに対する姿勢が積極的だと評価されますが、近隣の市町村と競い合うように上乗せすることは、財政を圧迫させる要因になりかねません。
また、自己負担がなければ不要な医療需要を誘発し、いわゆる「コンビニ受診」を増加させ、住民のモラルハザードを引き起こす危険も心配されます。
ある市で、助成開始後とそれ以前の乳幼児の受診年齢をサンプル調査したところ、年齢を引き上げた時点で、その年齢の受診が増加する傾向にあるようだ、と話していました。
受診が増えた結果、医療費が増加し、税金や国庫、他の保険者など、本人以外の負担にもつながるのです。高齢者医療制度の変遷を見れば、安易に無料化を進めるべきではないと思うのですが・・・
また、小児科医の過重労働や不足が問題視されている現在、この政策は都市間競争だけでは済まされないのではないでしょうか。
さらに、サービスが住民に直結する事業というのは、選挙結果にも直結するため、サービスの拡大はあっても低下は許されないと考える自治体も多いです。
鹿沼市でも、「夜間救急医療体制」を拡充したいが、小児科医はこれ以上の増加など限界だと健康課で訴えているのに、続いて仕分けをしたこども支援課では、近隣市が年齢を引き上げたらこちらもやる!との意見でした。
この事業を、地域の政策として進めるのか、どこの地域でも不公平なく、安心して医療を受けることができるナショナル・ミニマムとしたほうが良いのか…
子ども医療費助成制度は多くの問題が内在していると思います。
利用者である私たち自身も、影響の大きさを認識する必要があると思います。