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カワイイ、カワイイ、オ人形サン。
モウ一体、欲シイ。
ゼッタイ、欲シイ。
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保は路上で見つけた人形――少女を手に入れようと考えた。そのためにインターネットの環境も整えた。少女のために準備するためだ。
自分の欲していたものが何なのか理解した今、妹が持っていたようなただの人形にもう興味はなかった。
そして少女に似合うレース飾りのたくさんついたドレスをネットで購入した。
あの子がこれを着たらさぞかわいいだろうな。
ハンガーにかけたドレスを見ながらうっとりする。
そして、妹の人形がきれいなくるくる巻き毛の金髪だったことを思い出し、ウィッグも購入しようとパソコンの前に座った。
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「じゃ、またお願いします」
笹本は受付にいる薬剤師に頭を下げ玄関を出た。
きょうは注文なしか。
大振りの手帳にチェックを入れて閉じると営業車に戻った。次の病院を回ったらきょうの午前中の仕事は終了だった。
笹本は医薬品のルート配送をしていた。担当の病院を回り、注文を聞いてそれを配達する。簡単そうでそうでもなかった。新製品の売り込みはしないがドクターの機嫌を損ねてはいけないし、看護師たちや薬剤師たちにも気に入られるようにふるまわねばならない。必然的にストレスが溜まってくる。
笹本は運転席に座り大きく伸びをした後、車を発進させた。
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