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由愛は走って逃げていた。家に帰る途中、物陰から急に出て来た男に腕をつかまれたのだ。ドレスがどうのこうの言っていたが気持ち悪くて力いっぱい振り払った。
だが男がしつこく捕まえようとしてきたので、脇をすり抜け走って逃げた。友達の家から帰る途中の出来事だ。友達のお母さんが送ってあげると言ってくれたが由愛は気を遣って断った。まだ空は明るかったので危険はないと思った。
やっぱり送ってもらえばよかった。
由愛は後悔した。肩から掛けたポシェットに防犯ブザーはつけていない。母親から一人で出かける時は必ず持つように言われていたのに、ランドセルから外すのが面倒で持ってこなかったのだ。
こんな時に限って通行人もいない。
息が上がってスピードが落ちてきた。由愛は振り返ってまだついて来ているか確かめた。男はにやにや笑って距離を縮めてきた。
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