山々は新緑に包まれ、野も萌える若草に覆われて新しい息吹を放出している。
ここは谷間の草深い山村。
ソウは畦に立って、父コキラを見ている。
山肌にしがみつくようにある小さな田に、父コキラとソウの兄ジンは苗を植えている。
朝から二人で懸命に植えているが、もう昼前だというのに、この小さな田の半分も進んでいない。
「ソウ。苗!」
父の声にソウは応えて、足元の苗の束を父の近くへ放り投げる。
暫くして父と兄は田から上がってきた。
泥だらけの手足をそばの小川で洗って、昼飯を食べるために父は二人の息子を伴って家に帰る。
ソウは裸足の足裏に触る草の感触が好きだ。
道の真ん中に生える草の上を、ピョンピョンと踊るように歩く。
茅葺の家の中は土間の向こうに、敷かれた藁の上にムシロが置いてある。
その上に三人は掛けるように座った。
ソウの母ユウがヒエやアワの入った粥を椀に入れて、三人に差し出した。
おかずはユウが家の前の草むらで採ってきた野草を塩漬けしたものだ。
家族4人は粥をすするようにして食べた。
この貧しい村では収穫する米の中から、地主へ納める分を除くと残りは少なく、着物などは町へ出て、その貴重な米と引き換えに仕入れてきた。
村人が食べるものは少量の米と、アワ、ヒエ、家の周りで採れる僅かな野菜、それに山菜や野草だ。
ここは谷間の草深い山村。
ソウは畦に立って、父コキラを見ている。
山肌にしがみつくようにある小さな田に、父コキラとソウの兄ジンは苗を植えている。
朝から二人で懸命に植えているが、もう昼前だというのに、この小さな田の半分も進んでいない。
「ソウ。苗!」
父の声にソウは応えて、足元の苗の束を父の近くへ放り投げる。
暫くして父と兄は田から上がってきた。
泥だらけの手足をそばの小川で洗って、昼飯を食べるために父は二人の息子を伴って家に帰る。
ソウは裸足の足裏に触る草の感触が好きだ。
道の真ん中に生える草の上を、ピョンピョンと踊るように歩く。
茅葺の家の中は土間の向こうに、敷かれた藁の上にムシロが置いてある。
その上に三人は掛けるように座った。
ソウの母ユウがヒエやアワの入った粥を椀に入れて、三人に差し出した。
おかずはユウが家の前の草むらで採ってきた野草を塩漬けしたものだ。
家族4人は粥をすするようにして食べた。
この貧しい村では収穫する米の中から、地主へ納める分を除くと残りは少なく、着物などは町へ出て、その貴重な米と引き換えに仕入れてきた。
村人が食べるものは少量の米と、アワ、ヒエ、家の周りで採れる僅かな野菜、それに山菜や野草だ。