先日のこと。真正極楽寺(真如堂)から金戒光明寺へ向かう途中に、金戒光明寺の塔頭のひとつである西雲院のそばを通りかかった際にキンシバイ(金糸梅)の花が咲いているのを見つけました。あまり花付きはよくなかったのですが、小さくて可憐な花をぽつぽつと咲かせていました。
キンシバイ
キンシバイは中国が原産のオトギリソウ科オトギリソウ属の半常緑低木です。梅の花に似て雄しべが金糸を束ねたように見えることから和名がつけられています。また、見た目がヤマブキ(山吹)にも似ていることからクサヤマブキ(草山吹)という別名で呼ばれることもありますが、このクサヤマブキはケシ科クサノオウ属のヤマブキソウ(山吹草)の別名にも使われています。
でも最近よく見かけるのはタイリンキンシバイ(大輪金糸梅)のほうでしょうか。タイリンキンシバイはキンシバイを元に品種改良した園芸種で、学名の園芸種名ではヒドコートと名付けられていることから属名のラテン語名のヒペリカムと合わせてヒペリカム・ヒドコートと呼ばれることもあります。
タイリンキンシバイ(2019年1月撮影)
キンシバイも耐寒性がありますが、タイリンキンシバイのほうがより耐寒性があるのか、このタイリンキンシバイは真冬の1月に花を咲かせていました。また、タイリンキンシバイは名前のとおり、キンシバイより大きな花を咲かせるのが特徴ですが、葉が対生するキンシバイに対して十字対生になる点も特徴あるいは違いと言えるでしょうか。
対生するキンシバイの葉
このタイリンキンシバイと同じような大きな花を咲かせますが、雄しべがさらに長いところが特徴的なのはビヨウヤナギ(未央柳)ですね。ビヨウヤナギもタイリンキンシバイ同様に葉は十字対生になります。
ビヨウヤナギ(2018年6月撮影)
ビヨウヤナギも中国が原産で、漢字では「美容柳」と書き表されることもあるのですが、日本でビヨウヤナギと呼ばれるようになった理由からすると「未央柳」のほうが忠実な表記となるでしょうか。その謂れについては以下の過去記事で触れていますので、お時間があればご一読ください。
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最後に、花だけでなく花後にできる実も観賞価値があるのは、こちらのコボウズオトギリ(小坊主弟切)ですね。
こちらはヨーロッパが原産ですが、花はタイリンキンシバイやビヨウヤナギだけでなくキンシバイと比べても小さいかもしれません。花が咲き終わった後にできる赤く色づいた実を小坊主の頭に見立てたのが和名の由来です。また、この実は、そのかわいらしさから生け花の花材としても重宝されるようです。
さて、ここまで4種を紹介してきて、在来種のオトギリソウ(弟切草)を紹介していませんが、それは管理人が写真を持ち合わせていないだけなので堪忍してください。
このオトギリソウの漢字表記が「弟切草」というのは、ちょっと物騒ですよね。でも、これにはちゃんと謂れがあるので、その紹介だけしておきますね。
その謂れはというと、平安時代のことですが、オトギリソウは塗ればたちまちに効く鷹の傷薬の材料になり、このことを知っているのは鷹匠の兄弟だけで、二人だけの秘伝でした。でもある日のこと、弟がこの植物と秘伝の鷹の傷薬のことを他人に漏らしてしまい、それを知って怒った兄が弟を斬り殺したのだそうです。以降、この植物のことをこの伝説にちなんで「弟切草」と呼ばれるようになったとされています。