梅雨が明け本格的な夏のこの時期、北山では枝打ち作業が始まります。
春の成長時期には皮が剥けやすく、木肌に傷がつくので、枝打ちは行いません。それが7月の下旬になると成長が落ち着きはじめ、木肌が固まってくるので、枝打ち作業ができるようになります。但し、やはり杉に与えるダメージを最小限にするため、「ヒモ枝打ち」と呼ばれる(ひものように細い枝を打つからこう呼ぶそうです)、植林後7~8年生の初めて枝打ちをする木からはじめます。
北山杉に枝打ちを行う理由は
1.丸太表面に節痕の無い、ツルツルの木肌に仕上げるため。
2.まっすぐに伸び、真円の杉をつくるため。
3.成長を抑え、年輪の詰まった、強度のある干割れしにくい丸太をつくるため。
などがあげられます。
つまり、細く長く育てて、まっすぐな節痕の無い磨き丸太をつくるための、もっとも重要な作業が「枝打ち」なんです。
職人さんが手に持っているのが「枝打ち鎌」。草刈り用とは違い、刃先が短く、幅も狭くなっています。
常に切れ味を保つために1日に4~5回は砥ぎます。
手前の木の枝打ち痕にご注目!!幹ギリギリの高さ・・いや少し荒皮をむき、ややえぐるように枝を打ち落としていきます。打ち痕が高くなると、節として長く残ってしまうので、できるだけ幹にそってきれいに打ち落とすようにします。
「打ち痕を見れば職人さんの熟練度がわかる」と言います。安定してこのようにスカッ!と打てるようになるまでに、最低3年はかかるそうです。ちなみにこの職人さんはこの道30年のベテランさんです!!
パチッ パチッ 林に枝を打つ小気味良い音が響きます。
やや太めの枝を打つ時は、このように枝を下方へ十分に絞り、一気に打ち落とします。
鎌を持つ右手側の枝を打つ時も、左手で枝を下へ十分に絞り・・・
パチッ と一気に打ち落とします。この時、手を切らないように、枝を持つ左手は木の裏側から回すようにします。
そして腰より下の枝は「鉈(なた)」を使います。鉈はこういった低い場所の枝や、鎌で打てないくらいの太い枝を打つ場合に使用します。
地面には、緑の絨毯が広がります。この枝葉はやがて朽ちて杉の肥料となります。
この枝打ち作業はこの後4~5年おきに、4~5回繰り返し行い、やがて30年生以上で伐採される頃には、荒皮の下にツルツルのきめ細やかな木肌と、目の詰まった年輪を持った、真っ直ぐに熟成された北山杉となります。
その間、枝打ち職人が1本1本樹幹を登り、それぞれの杉の個性を見て、太くなりすぎていれば「ゆっくり大きくなれよ!」と多めに枝を落とし、他より細ければ「早く大きくなるんだぞ!」と枝を落とす量を少なめにします。
まさに、わが子を育てるように、北山杉は育てられるのです。この北山杉の育成に無くてはならない枝打ち技術。そして枝打ち職人。
なんとしてでも後世に受け継いでいかなければならないと、改めて感じました。
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