http://www.ehonnavi.net/ehon/932/のせてのせて/
「のせて のせて」 松谷 みよ子 文 東光寺 啓 絵 童心社
毎月第1と第3金曜日に、絵本講師が絵本の紹介をしています。
午後1時20分~25分、FMチャッピー(茶笛)の ”くらっしぃ~”という番組内「絵本大好き」コーナーです。
インターネットで聞くことができます。
4月15日、出演させていただきました。
乳幼児ママ&パパ向けに、おすすめ乗り物文学絵本『のせて のせて』を紹介しました。
前日の晩、熊本地方で大きな地震があり、被害の甚大さが報道されているさなかでしたので、
ラジオのパーソナリティさんも、挨拶でそのことにふれていました。
放送の準備をしながら私も、気持ちはゆさぶられていました。
でもね。頑張らないといけません、絵本から元気を分けて、電波でとばそうと、心を込めて、話しましたよ。
内容を以下、記録しておきます。
*みなさん、こんにちは。石井宏子です。
きょうはこどもの大好きな乗り物の絵本です。
*「いない いない ばあ」で有名な、ロングセラー「松谷みよ子 あかちゃんの本」シリーズの一冊です。
このシリーズは松谷さんが「赤ちゃんの文学をつくりたい」と願って生まれたものだそうです。もう、この願いから既に、しびれますよね (≧∇≦) …私も、赤ちゃんにこそ、まがい物でない本物、美術でも音楽でも文学でも、本当のものを、と願ってやまないのです。
*黄色い小さな絵本です。小さな男の子が、素敵な車の前でこちらを向いて笑顔で片手を挙げています。クラシックな赤いオープンカーです。 …表紙からもう、男の子と一緒にドライブが始まるようなんです。
*さあ入りますよ。門をあけてはいるように、本の表紙を開くと、赤い色の”見返し”があり、自動車からつながってワクワクした気持ちのまま進むと、同じ男の子がまた迎えてくれます。始まるよ、ここを開けて。といっているようです。同じ絵だけれど、小さいのです。たくさんの余白があります。余白があると、見る方は期待がふくらんで、ページをめくるんですね。素晴らしいエントランスです。旅先の宿であれば、もう五つ星ホテルでまちがいなし。
*この絵本のつくり方が、本物の文学、芸術です。お芝居であれば、劇場に入って、着席、待って、いま幕があきました。こういう絵本を、ぜひ選んであげていただきたいですね。
隅から隅まで、見る人を楽しくして差し上げようと心を配ってつくられています。
(よみます)
*まこちゃんの じどうしゃです はしりますよ ブブー
(車の先に、よはくがあります、めくります)
ストップ! のせて のせて うさぎが 手をあげています。
*ちょうどまこちゃん自動車が進んで行く絵本の構成。フワフワしたうさぎらしいうさぎが、赤い目を輝かせて、ちゃんと片方の前足をあげています。こうした描き方も、赤ちゃんをきちんと観客としてリスペクトしていることの表れです。
*こうしていろいろな動物たちが、まこちゃん自動車をよびとめて、みんなが乗せてもらいます。仲間がふえていく楽しさを絵があらわして、
*繰り返しのおはなしのことばも、のってくると少しずつふえていきます。
まこちゃんの じどうしゃですよ
ブブー ブブー
くまも いっしょ うさぎも いっしょ ねずみも いっしょ
びゅーん
*それに、あかちゃん絵本なのに、ちゃんと『物語』です。
なぜかといえば、クライマックスがあるんですよ。まこちゃん自動車は、トンネルに突入します。まっくら。
*暗いところは、こわいですね。 特にちいさな子にとっては、とても不安。
でも、すぐにわかる。ちゃんと出口がある、明るいところへ出られることを、絵でもことばでも、伝えてくれています。
でた! おひさまだ!
*そして、終わりにもお楽しみがあるのです。
赤ちゃんから、ちゃんとわかり、4、5歳になっても更に想像力をはばたかせることができる、珠玉の1冊です。
*絵とことばで子どもの心をガイドしてくれる。子どもは自分で心を動かします。それが感動であり、想像力の芽が生まれたということだと思います。
*想像力は、自分以外のだれかのことを、思うという力でもあるんです。
(熊本できのう地震がありましたけれど、つらかったり、怖がっていたりされている皆さんのことを思う、そういったことが、みんなも自分も、困難を乗り越える勇気のもとになるんだと思います。)
*ぜひ、黄色いまこちゃん絵本を、お子さんの友達にしてあげてほしいです。