so far, not so bad

"unselfconsciousness"

プロの道具

2016-01-06 22:21:12 | エッセイ
昨年末も押し迫った頃、長年付き合いのある友人と久し振りに会った。

そこで思わぬうれしいプレゼントだったのが、これだ。



床屋である親父さんが廃業して(長い話があるが、ここでは省略する)、
その後残念な事にすぐに亡くなられて(これも長い話があるが、またもや省略する)、
そのお宅も改装する事になり(同上)、
色々と整理している時に、家でチョキチョキとやっている私の事を思い出したそうで、
いい機会だと、わざわざ持ってきてくれたのだった。

道具には敬意を払うべきで、プロの道具なら尚更だ。
道具を使いこなしたその先に、プロの仕事がある。

その時にもその友人とも話したが、
髭剃り用のカミソリなんかはなかなか扱いが難しい物の一つだ。
皮の太いベルトのようなものでシャー、シャーっと研いで、
ショリショリと髭を剃っていく。
他人の、顔を、だ。
考えただけでも手に電流が走ったような感じになる。

職人(床屋さんもある意味職人だと思っている)というのはそういうもので、
世の中はそんな、
しかめっ面でくわえたばこでパチンコ打っててあんまり近寄りたくないような人相だけど旋盤使わせたらすごい、とかいうような、
一見すごくなさそうだけど実はすごい人がたくさんいる。


どこぞの首相(に言わせたどっかの官僚)も、
しょーもない戦時中のようなキャッチコピーを考えるのに金をかけるのではなく、
そういう人達がどうしたら気分良く働けるかを考えるべきなのに。
でもそんなの現場で経験するより、会議室で「そーでございます」なんて言ってた方が楽だと思ってんだろうね。

でも、いいものをもらった。
大事に使わせて頂くとする。もちろん、使えたら、だけど。


ちなみに。
小さな頃から、床屋さんのこのハサミを見る度に気になったのは、"指かけ"が無い方のわっかにくっついている、大きなビーズのようなもの。
もちろん、ハサミがぶつからないようにするためのクッションのようなものだと思っているけど、
金属だけの中に一つだけ異質な素材の物が付いているのが、妙に引っかかっていたのだ。




名前を調べてみると、「ヒットポイント」と言うそうな。
ヒットポイントか。
そんなに格好いい名前だったのか、お前。

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