リートリンの覚書

古事記 中つ巻 現代語訳 五 高倉下


古事記 中つ巻 現代語訳 五


古事記 中つ巻

高倉下


書き下し文


故天つ神の御子、其の横刀を獲し所以を問ひたまふ。高倉下答へ曰さく、「己が夢に云はく、天照大神・高木神二柱の神の命以ち、建御雷神を召して詔りたまはく、『葦原中国はいたくさやぎてありなり。我が御子等平らかにあらず坐すらし。其の葦原中国は、専ら汝が言向けし国ぞ。故、汝、建御雷神降るべし』とのりたまふ。尓して答へて白さく、『僕は降らずとも、専ら其の国を平けし横刀有り。是の刀を降すべし』此の刀の名は佐士布都神と云ふ。またの名は甕布都神と云ふ。またの名は布都御魂。この刀は石上神宮に坐す。『此の刀を降さむ状は、高倉下が倉の頂を穿ち、其れより堕し入れむ』ともをす。『故阿佐米よく汝取り持ち、天つ神の御子に献れ』とのりたまふ。故夢の教への如し、旦に己が倉を見れば信に横刀ありき。故是の横刀を以ち献るのみ」とまをす。


現代語訳


故に、天つ神の御子は、その横刀を獲(え)た所以を問いになられました。高倉下(たかくらじ)が答えて、いうことには、「己が夢に、天照大神 (あまてらすおおかみ)・高木神(たかぎのかみ)二柱の神の命を以ち、建御雷神(たけみかづち)を召して詔りして、いうことには、『葦原中国(あしはらのなかつくに)は、いたくさわがしいようで、我が御子等が平らかではない。その葦原中国は、専ら汝が言向けした国だ。故に、汝、建御雷神降るべき』と仰せになりました。尓して、答えて、いうことには、『僕は降らずとも、専らその国を平(ことむ)けした横刀が有ります。この刀を降すべきです』この刀の名は佐士布都神(さじふつのかみ)と云う。またの名は甕布都神(みかふつのかみ)と云う。またの名は布都御魂(ふつのみたま)。この刀は石上神宮に坐(いま)す。『この刀を降ろす状(さま)は、高倉下が倉の頂(むね)を穿(うが)ち、それより堕し入れます』ともうしました。『故に、阿佐米(あさめ)よく、汝が取り持ち、天つ神の御子に献れ』と仰せになられました。故に、夢の教えの如し、旦(あした)に己の倉を見れば、信に横刀ありました。故にこの横刀を以ち献(たてまつ)ります」と申しました。



言向(ことむ)く
背いた者を説得して自分に従わせる。
あさめ
朝、起きたときに見る目の意か。


現代語訳(ゆる~っと訳)


そこで、神倭伊波礼毘古命は、その横刀を手に入れた理由を問いになられました。

高倉下(たかくらじ)が答えて、

「私が見た夢では、

天照大神と高木神の二柱の神のご命令によって、建御雷神を呼び寄せて、詔りして、

『葦原中国は、とても騒がしいようです。我が子孫が困っています。その葦原中国は、すべてお前が平定した国です。ですから、建御雷神よ、もう一度天降りするように』と仰られました。

すると、建御雷神が答えて、
『私が天降りしなくても、すべてその国を平定した横刀があります。この刀を降ろしましょう』

この刀の名は佐士布都神といいます。またの名は甕布都神といいます。またの名は布都御魂。この刀は石上神宮に鎮座しています。

『この刀を降ろす方法は、高倉下の倉の屋根の頂上部分に穴をあけ、それより落とし入れましょう』といいました。

『こういうわけで、朝の目覚めの吉兆として、お前が剣を取り、天津神の御子に献上するように』と仰せになられました。

こういうわけで、夢の教えの通りに、翌朝、自分の倉を見たところ、まことに横刀ありました。

それゆえに、この横刀を献上いたします」といいました。



続きます。

読んでいただき
ありがとうございました。



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