リートリンの覚書

古事記 中つ巻 現代語訳 十二 久米歌


古事記 中つ巻 現代語訳 十二


古事記 中つ巻

久米歌


書き下し文

然して後に、登美毘古を撃たむとする時、歌ひて曰はく、
みつみつし 久米の子等が
粟生には 臭韮一本
そねが本 そね芽繋ぎて
撃ちてし止まむ。
また歌ひて曰はく、
みつみつし 久米の子らが
垣下に 植ゑし山椒
口ひひく 吾は忘れじ
撃ちてし止まむ 
また歌ひて曰はく、 
神風の 伊勢の海の
大石に 這ひ廻ろふ
細螺の い這ひ廻り
撃ちてしやまむ 
また、兄師木・弟師木を撃ちたまひし時、御軍暫し疲れき。ここに歌ひて曰はく、 
楯並めて 伊那佐の山の 木の間よも い行きまもらひ 戦へば 吾はや飢ぬ 島つ鳥 鵜養が伴 今助けに来ね


現代語訳


 然して後に、登美毘古(とみびこ)を撃とうとした時、歌っていうことには、
みつみつし 久米の子等が
粟生(あわふ)には
臭韮(かみら)一本(ひともと)
そねが本(もと) そね芽繋ぎて 
撃ちてしやまむ
また、歌っていうことには、
みつみつし 久米の子らが
垣下(かきもと)に
植えし山椒(はじかみ)
口ひひく 吾は忘れじ
撃ちてしやまむ 
また、歌っていうことには、 
神風(かむかぜ)の 伊勢の海の
大石に 這ひ廻ろふ
細螺(しただみ)の い這ひ廻り
撃ちてしやまむ 
また、兄師木(えしき)・弟師木(おとしき)を撃ちになられた時、御軍(みいくさ)は、暫(しば)し疲れました。ここに、歌っていうことには、
楯並(たたな)めて
伊那佐山(いなさのやま)の
樹(こ)の間(ま)よも
い行(ゆ)きまもらひ 戦へば
我はや飢ぬ 島つ鳥(しまつとり)
鵜養(うかひ)が伴
今助(います)けに来(こ)ね



・みつみつし 
氏族の名の「久米」にかかる枕詞。「御稜威 (みいつ) 」を重ねて形容詞化した語で、威勢がよい、勇猛であるの意から武をつかさどる家の久米氏をほめたたえたものか
・粟生(あわふ)
粟の生えている所。粟畑
・臭韮(かみら)
においの強いニラ(韮)の意か。
・神風(かむかぜ)の
伊勢」にかかる枕詞
・細螺(しただみ)
ニシキウズガイ科の巻き貝・キサゴの古名
・楯並めて(たたなめて)
楯 (たて) を並べて弓を射る意から、「射 (い) 」の音を含む地名「伊那佐」「泉」にかかる枕詞
・伊那佐山(いなさのやま)
奈良県宇陀市街の南方にある山
・島つ鳥(しまつとり)
島の鳥の意で、「鵜 (う) 」に掛かる枕詞


現代語訳(ゆる~っと訳)


 その後、登美毘古を撃とうとした時に、歌っていう、

威勢がよい 久米の兵士たちが
粟の生えている畑に
においの強いニラが一本
その根と その芽をひとくくりにして 
撃ち取ってしまおう

また歌っていう、
威勢がよい 久米の兵士たちが
垣根に 植えた山椒は辛くて
口がヒリヒリと
我らは敵から受けたあの痛みを忘れない
撃ち殺してやるぞ

また歌っていう、 
(神風の吹く) 伊勢国の海の 
大きな石に 這い回る
細螺のように 我らも這いずり回り 
撃ち殺してやるぞ

また、磯城の地の兄師木と弟師木を撃った時に、神倭伊波礼毘古命の軍の兵士たちに少し疲れがみえました。

ここで歌っていう、 
(楯を並べて弓を射る)
伊那佐山の 木々の間から
通り抜けながら見守りながら 
戦えば 我らはひどく腹が減った
(島の鳥の鵜を)
吉野川の鵜飼いたちよ
今すぐ助けに来ておくれ



続きます。

読んでいただき
ありがとうございました。



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