古事記 中つ巻 現代語訳 九
古事記 中つ巻
宇陀の血原
書き下し文
尓して大伴連等が祖道臣命、久米直等が祖大久米命二人、兄宇迦斯を召し、罵詈りて云はく、「いが作り仕へ奉れる大殿の内には、おれまづ入りて、其の仕へ奉らむとする状を明かし白せ」といひて、横刀の手上を握り、矛ゆけ矢刺して、追ひ入るる時に、己が作れる押に打たえて死ぬ。尓して控き出だし斬り散りき。故其地を宇陀の血原と謂ふ。
現代語訳
尓して、大伴連(おおとものむらじ)等が祖、道臣命(みちのおみのみこと)と久米直(くめのあたい)等が祖、大久米命 (おおくめのみこと)の二人が、兄宇迦斯を召(め)して、罵詈(ばり)ていわく、「いがが作り仕え奉れる大殿の内には、おれがまず入れ。その仕え奉ろうとする状(さま)を明(あ)かしもうせ」といい、横刀(たち)の手上(たか)を握り、矛を向け、矢を向けて、追い入るる時に、己が作った押に打たれて死にました。尓して控(ひ)き出(い)だして、斬り散(はふ)りました。故に、その地を宇陀の血原(うだのちはら)と謂います。
・罵詈(ばり)
口汚くののしること。また、その言葉。ののしり
・いが
二人称の卑称。相手を軽んじていう
・おれ
二人称の卑称
・手上(たかみ)
( 手の上の意 ) 剣の柄(つか)をいう語。たかび)
・宇陀の血原(うだのちはら)
比定地・現・奈良県宇陀市莵田野町宇賀志
現代語訳(ゆる~っと訳)
そこで、大伴連たちの先祖の道臣命と久米直たちの先祖の大久米命の二人が、兄宇迦斯を呼びつけて、ののしって、
「お前が作った御殿の中には、お前が先に入り、どのようにお仕えするのか、その実際の様子を明らかに示せ」といって、
横刀の柄を握り、矛を向け、矢を向けて、御殿に追い入れたその時、兄宇迦斯は、自ら作った罠に掛かって死にました。
そこで、罠から死体を引き出して、斬り刻み、まき散らしました。こういうわけで、その地を宇陀の血原といいます。
続きます。
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