新刊の森

人文分野を中心に、できるだけその日に刊行された面白そうな新刊を、毎日三冊ずつ紹介します。役立ちそうなレシピにも注目。

新たな構想が求められる時期が到来。「福祉国家論―所得分配と現代福祉国家論の課題― 」

2018年12月15日 | 新刊書
福祉国家論―所得分配と現代福祉国家論の課題―
アンソニー・B・アトキンソン (著), 丸谷 泠史 (翻訳)


福祉国家は、当然生まれるべき運命にあったが、
当初の見込みとは異なるさまざまな問題を引き起こしている。
福祉国家の構想を否定するのではなく、そうした問題を克服しながら
新たな福祉国家を構想することが必要なのだろう。
その意味ではタイムリーな一冊だろう。


単行本: 412ページ
出版社: 晃洋書房 (2018/12/15)
言語: 日本語
ISBN-10: 4771030332
ISBN-13: 978-4771030336
発売日: 2018/12/15

内容紹介
福祉国家批判の時は過ぎた.時は移り今日では福祉国家をどのように健全な姿に立て直すかが問われる時期である.福祉国家批判を経済学的観点から再検討し,新しい世紀の福祉国家像の基礎を展開.

『アトキンソン教授の福祉国家論I』につづく後半部分を収録した,待望の全訳.

目次
序 章 現代福祉国家論の課題

第I部 イギリスおよびヨーロッパにおける所得の不平等と貧困

第1章 イギリスの所得分配に何が起きているのか?
第2章 ヨーロッパ諸国における所得分配
第3章 ヨーロッパにおける貧困,統計および進歩
第4章 貧困率の国際比較
第5章 早期退職者が2つの国民に?

第II部 福祉国家の分析

第6章 福祉国家は必然的に経済成長の障害になるのか?
第7章 ナショナル・ミニマム?
第8章 イギリスにおける国家年金の発展
第9章 イギリスにおける失業者の所得維持と高い失業水準に対する反応
第10章 失業保険の制度的特徴と労働市場の働き
第11章 社会保険

第III部 ターゲティングと社会保障政策の将来

第12章 ターゲティングと家族給付
第13章 ソーシャル・セーフティネット
第14章 欧州社会的セーフティネットに向かって?
第15章 ベヴァリジに寄せて
第16章 国家年金

内容(「BOOK」データベースより)
真の福祉国家を求めて。福祉国家の再検討と制度改革。福祉国家批判の時は過ぎた。時は移り今日では福祉国家をどのように健全な姿に立て直すかが問われる時期である。福祉国家批判を経済学的観点から再検討し、新しい世紀の福祉国家像の基礎を展開。『アトキンソン教授の福祉国家論1』につづく後半部分を収録した、待望の全訳。

著者について
アンソニー・バーンズ・アトキンソン(Anthony Barnes Atkinson)
オックスフォード大学教授(ナッフィールド・カレッジ学長)、ケンブリッジ大学、ロンドン大学(LSE)教授を歴任.分配論,福祉国家論の世界的権威.
2017年1月逝去.

アメリカの救援組織を手掛かりに考える「ホロコーストとアメリカ」

2018年12月15日 | 新刊書
ホロコーストとアメリカ――ユダヤ人組織の支援活動と政府の難民政
丸山 直起 (著)


ホロコーストは世界的な出来事だったが
この書物はアメリカで誕生した救援組織「アメリカ・ユダヤ人合同配分委員会」に注目して
この組織がどのような活動を展開し、どのような困難に直面したかという観点から
この世界的で歴史的な出来事を考察するという注目作である。



単行本: 448ページ
出版社: みすず書房 (2018/12/15)
言語: 日本語
ISBN-10: 4622087340
ISBN-13: 978-4622087342
発売日: 2018/12/15

内容紹介
ナチス・ドイツによるホロコーストはユダヤ人の生命を奪っただけでなく、宗教や文化など
あらゆる「ユダヤ的なもの」を破壊した。その結果、数千のユダヤ人コミュニティが消滅し、
1億冊以上の書籍が失われた。ユダヤ人の犠牲は600万にのぼり、これはヨーロッパ
大陸のユダヤ人人口全体の実に72パーセント以上にあたる。
しかし、国際社会は絶望の淵に追い込まれたユダヤ人の運命に非情であった。
ユダヤ人の祖国パレスチナを委任統治するイギリスは、彼らの入国を厳しく制限した。
アメリカは制限的移民法を改正し、門戸を広く開放するつもりはなかった。
この両国だけでも政策を見直していれば、多数の人命が失われずにすんだ。
国家が頼りにならなければ、自分たちで不幸な難民を救うしかない。19世紀以来、
欧米諸国にはユダヤ人の救援組織がつぎつぎと誕生し、国際的な絆で結ばれていた。
そのひとつ、第一次世界大戦を機に発足したアメリカ・ユダヤ人合同配分委員会
(「ジョイント」)が、ナチス支配下で苦悩する同胞を救うため、すべての組織、資金、
人材を動員する。そのスタッフは戦乱の地に派遣され、身の危険を顧みずに救済
活動をおこなった。しかし、彼らの行く手には国益と官僚主義の壁が立ちはだかる。
本書は、危機の時代における「ジョイント」と、そのひとりの女性ソーシャルワーカー
の活動に焦点をあてながら、ユダヤ難民の辿ってきた道のりを詳細に跡づける。

目次

序章 ホロコーストへの道
一 ホロコーストとは何か
二 最終解決へ
三 本書の視点

第1章 難民はアメリカをめざす
一 アメリカの移民問題
二 制限的移民法の成立
三 ユダヤ難民とアメリカ
四 ユダヤ系団体の救援活動

第2章 危機の時代とアメリカのユダヤ人
一 ジョイント
ニ ナチ政権の登場とアメリカのユダヤ人
三 マーゴリス家の人びと
四 アメリカのマーゴリス

第3章 ドイツの反ユダヤ政策とアメリカ政府の対応
一 エヴィアン会議
二 政府間難民委員会とドイツ側の交渉
三 ユダヤ人はどこへ向かうのか
四 アメリカ入国の壁

第4章 セントルイス号の悲劇
一 キューバ
二 悲劇の豪華客船
三 交渉決裂
四 新世界と旧世界

第5章 戦時下のジョイント
一 第二次世界大戦の勃発
二 中国のユダヤ難民
三 マーゴリスの上海派遣
四 開戦と上海のユダヤ難民
五 指定地区

第6章 解放の年
一 解放
二 活動再開
三 大戦後のジョイントの救援活動
四 イスラエルへ

終章 なぜアウシュヴィッツは爆撃されなかったのか
一 アウシュヴィッツ
ニ アメリカ政府とユダヤ人社会
三 ローズヴェルト大統領の評価
四 ベルリン、1998年

註記
あとがき

図版出典一覧
略語一覧
事項索引
人名索引

著者について
丸山直起(まるやま・なおき)
1942年、長野県生まれ。1965年、早稲田大学政経学部卒業、1973年、一橋大学
大学院単位取得退学。小樽商科大学、国際大学、明治学院大学を経て、現在は
明治学院大学名誉教授。法学博士(一橋大学)。専門は、国際政治学・外交史。
主な著書に、『太平洋戦争と上海のユダヤ難民』(法政大学出版局、2005年)、
『ポスト冷戦期の国際政治』(共編、有信堂、1993年)、『アメリカのユダヤ人
社会』(ジャパンタイムズ社、1990年)、『国際政治ハンドブック』(共編、有信堂、
1984年)など。

生命について考える際の重要な視点「ウイルスの意味論――生命の定義を超えた存在」

2018年12月15日 | 新刊書
ウイルスの意味論――生命の定義を超えた存在
山内 一也 (著)


ウィルスの専門家が著したウィルス学の入門書。
ウィルスは生きているとも死んでいるとも言えない状態においても生存することのできる強靭な生物体であるらしい。
そのためウィルス学は生物学の根幹となり、生命についての思想の根っこのところにある物質である。
ウィルスの卓抜な生き方に、生命というものの秘密が隠されているのかもしれない。



単行本: 264ページ
出版社: みすず書房 (2018/12/15)
言語: 日本語
ISBN-10: 4622087537
ISBN-13: 978-4622087533
発売日: 2018/12/15


内容紹介
ウイルスとは何者か。その驚くべき生態が明らかになるたびに、
この問いの答は書き替えられてきた。

ウイルスは、数十億年にわたり生物と共に進化してきた「生命体」でありながら、
細胞外ではまったく活動しない「物質」でもある。その多くは弱く、外界ではすぐに
感染力を失って“死ぬ"。ただし条件さえ整えば、数万年間の凍結状態に置かれ
ても、体がばらばらになってしまったとしても“復活"する。
ウイルスの生と死は、生物のそれとはどこかずれている。

一部のウイルスは、たびたび世界的流行を引き起こしてきた。ただしそれは、
人類がウイルスを本来の宿主から引き離し、都市という居場所を与えた結果
でもある。本来の宿主と共にあるとき、ウイルスは「守護者」にもなりうる。
あるものは宿主を献身的に育て上げ、またあるものは宿主に新たな能力を
与えている。私たちのDNAにもウイルスの遺伝情報が大量に組み込まれており、
一部は生命活動を支えている。

ウイルスの生態を知れば知るほど、生と死の、生物と無生物の、共生と敵対の境界が
曖昧になっていく。読むほどに生物学の根幹にかかわる問に導かれていく一冊。

目次

はじめに ウイルスとともに生きる
第1章 その奇妙な“生”と“死”
第2章 見えないウイルスの痕跡を追う
第3章 ウイルスはどこから来たか
第4章 ゆらぐ生命の定義
第5章 体を捨て、情報として生きる
第6章 破壊者は守護者でもある
第7章 常識をくつがえしたウイルスたち
第8章 水中に広がるウイルスワールド
第9章 人間社会から追い出されるウイルスたち
第10章 ヒトの体内に潜むウイルスたち
第11章 激動の環境を生きるウイルス
エピローグ
あとがき


索引

著者について
山内一也
1931年、神奈川県生まれ。東京大学農学部獣医畜産学科卒業。農学博士。北里研究所所員、国立予防衛生研究所室長、東京大学医科学研究所教授、日本生物科学研究所主任研究員を経て、現在、東京大学名誉教授、日本ウイルス学会名誉会員、ベルギー・リエージュ大学名誉博士。専門はウイルス学。
主な著書に『エマージングウイルスの世紀』(河出書房新社、1997)『ウイルスと人間』(岩波書店、2005)『史上最大の伝染病 牛疫 根絶までの四〇〇〇年』(岩波書店、2009)『ウイルスと地球生命』(岩波書店、2012)『近代医学の先駆者――ハンターとジェンナー』(岩波書店、2015)『はしかの脅威と驚異』(岩波書店、2017)『ウイルス・ルネッサンス』(東京化学同人、2017)『ウイルスの意味論――生命の定義を超えた存在』(みすず書房、2018)などがある。