また詩のみ更新『為生』

深く肺に溜めた空気
震えた唇から吐き出して
また頬を伝う雨に
もう同情さえ知り得ない
何で鳴くの？
もうとうに夜も更けて
耳に触れる鈴虫の子守唄
胸をほっと撫で下ろす
心地好い夜風が
良い夢を運んできてくれるのに
瞼で視界を塞ぐたび
闇で想いを包むたび
また泣き出す君がいる
こんなのは正気じゃないよ
我慢すること何もない
時に凪がれて遊ぶだけ
彩る筆さえ置いたのに
離れて放たれて
ずっともっと自由なのに
肋骨の間に潜む
身体を蝕む黒い影
何もかも忘れても
その姿だけがほくそ笑む
遠くなる貴方を惜しむ
そんな理由だったなら
何もかも愛しいのに
卑しい私は沼の底
這い回っては抜け出せない
かたちさえなき山椒魚
溜め息吐くたび濁る水
何の為生き
死ぬのだろう
疼く現で眠れぬままに