兼題「仲秋」
重陽や節目の句集九冊に
仲秋や閉門告げる鐘かすか
仲秋や琵琶湖八景月見台
夕暮れの棚田に響くばったんこ
僧都の音澄み渡をり詩仙堂
兼題「自由題」
蜩や糺の森を一色に
背の子の動く手足や踊りの夜
かなかなや美術館への登り坂
青紅葉天狗の面の鞍馬駅
秋めくや青田に雲の影一つ
梅花藻や旧家の鯉の赤よぎる
兼題「自由題」
榧の木の千五百年夏の空
白南風を背に観音の寺めざす
夏草や熊野古道の曲がり角
瀬戸内の島より島へ晩夏光
昇天さんの張子の虎や青葉風
兼題「梅雨寒」
梅雨寒や地蔵に赤き帽子かな
長谷寺の渡り廊下や梅雨寒し
曼殊院の幽霊の絵や梅雨寒し
梅雨寒し駆け込むカフェミルクティー
梅雨寒し被爆ドームの首脳陣
梅雨冷えや止まらぬ咳の夕餉時
兼題「緑陰」
緑陰につながれし馬まどろめる
緑陰に乳母車より足のでる
緑陰に買いたての本鞄より
東林院のまばゆき白の沙羅双
涼風や西金堂の大庇
緑陰やメタセコイヤの道抜けし
兼題「桜 花」
白鳳の塔の相輪夕桜
夕暮れて古刹静もる花の雨
花冷えやランプの店に誘わるる
西行の句碑を掠める糸桜
猿沢池の芽柳の影揺れゐたり
鹿せんべいもっともっとと春うらら
兼題「水温む」
朝明けの飛鳥の川の水温む
塔映し猿沢池の水温む
日暮れ待つ人の蠢くお水取り
水温む人数多なる釣り堀に
近江富士の近く見ゆる日鷽の声
兼題「寒」
寒牡丹染井の井戸の蓋重し
向き合って素知らぬ顔の寒鴉
ボンネットに光る猫の目寒の夜
凍てかえる水面に塔の影落とし
静寂の壬生寺の舞節分会
篁に風ふきすさぶ梅一輪
兼題「初の付く句」
朝明けに星の残りし初御空
初水の柄杓のくぼみ泉涌寺
くくくくと初鳩の声こぼれおり
初泳ぎ水の重たきあと二百
志野椀の葛湯両の手一人の夜
大絵馬に跳ねる兎や朝の雪
兼題「歳の暮」
歳暮るる茅葺宿に夕陽射す
薬草の発祥の地や歳の暮
何一つ変わらぬ日々や歳くるる
散紅葉色つらなりて室生川
良き日和塔にかかりし冬紅葉
2022年最後の句会メンバー全員変わりなく
楽しい句会になりました 仕事もゴルフも健康
のためにスポーツクラブの水泳も頑張ります
2023年もよろしくお願いいたします。
兼題「風呂吹き」
風呂吹きやかまどの湯気の二筋に
風呂吹きや賑わう宵の先斗町
釈迦堂の湯気立ちのぼる大根煮
街路樹の色豊かなる今朝の冬
佇むや木の実の音のおちこちに
大和路や戸毎に柿のたわわなる
季題「秋の虫」
ちちろ鳴くかすかに湿る宿の下駄
虫の音や寂光院への畔の道
蟋蟀か和室の隅に何処より
虫時雨中途半端に閉じる窓
箕面川の秋澄む音となりにけり
秋桜や明日香の村をツ-リング
兼題「日焼け 潮焼け」
風受けて日焼けの車夫と奥嵯峨野
合宿の日焼けの笑顔歯の白し
高速道路右腕赤く日焼けせり
青空や糖度の高き西瓜買ふ
模様替え日焼けの畳一畳半
兼題「夜の秋」
竹薮の葉擦れかすかに夜の秋
夜の秋睡魔の襲ふ二ページ目
小窓より羽音密かに夜の秋
篁に透ける明かりや夜の秋
朝顔の蔓うだつへと届きをり