ヒトリシズカ特論 その2

日本の四季の移り変わりなどを、身近な場所に行って、その場での観察などによって、ご紹介しています。

人気ミステリー作家の伊坂幸太郎さんの最新刊の単行本「逆ソクラテス」を読み終えました

2020-07-08 12:00:05 | 
 人気ミステリー作家の伊坂幸太郎さんの最新刊の単行本「逆ソクラテス」を何回か読みました。

 この単行本「逆ソクラテス」は、集英社が2020年4月30日に発行したものです。



 人気ミステリー作家の伊坂幸太郎さんの最新刊なので、東京都内の大型書店では、5月には平積みされて、目立つ場所に置かれていました。

 この単行本「逆ソクラテス」は5編の短編で構成されています。この内の「非オプティプス」などの3編は書き下ろしです。この書き下ろし3編にまず感心しました。

 この単行本の表題になった「逆ソクラテス」は、権威的な小学校教師の担任の久留米をぎゃふんといわせる物語です。担任の久留米は“絶対的に正しい存在”として振る舞っていました。

 小学生の個性や意見を軽視している権威主義あるいはあまり何も考えていない担任の久留米は優等生の子を盲目的にかわいがり、成績のよくない小学生を大人として高圧的に見下す大人です。

 主人公の加賀は、担任の久留米が草壁という平凡な子どもを見下して接することに不満を感じていました。単純にものごとを決め付けて、それを小学生に押しつけていました。

 この「逆ソクラテス」という題名は、ギリシャの哲学者だったソクラテスは「自分は何も知らない」という非権威主義者として、何でも疑って考えたということから、権威主義の担任の久留米は非ソクラテスだという意味です。

 主人公たちは、成績が普通の草壁に、チームプレーでテストの回答を密かに渡して高得点を採らせます。この時には、優等生の美女の同級生も協力します。そして、このチームプレーは安斎という個性的な子どもが計画し、実行します。

 話は進んで、プロ野球選手が、この小学校にやって来て、草壁のプレーを見学します。

 担任の久留米は「草壁は平凡な選手」と決めつけています。しかし、プロ野球選手は「草壁は野球の才能がある」と評価します。

 時間は進んで、この草壁はプロ野球の選手として、渋い守備の名手になっていることを、主人公はテレビ観戦しています。才能が確かにあったようです。

 この短編の物語の進行役の主人公は、小学校、中学校、高校、大学と進むと、次第に平凡な成績の学生になり、ごく平凡な社会人になったと書かれています。なかなか意味深な結果です。

 また、個性的だった小学生の安斎も小学校をすぐに転校し、行方不明になります。
 
 この当たりの落ちが意味不明です。でも現実社会とはこんなものです。

 この短編「逆ソクラテス」を読み、小学校時代の同級生の変遷をいろいろと考えました。なかなか複雑な思いです。

 この「逆ソクラテス」は、文体がミステリー風ではなく純文学風になっています。ここがやや不満なところです。伊坂幸太郎さんの文体は変わるのかどうかが一番、気になっています。

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こおひいたいむ様 (ヒトリシズカ)
2020-07-08 21:02:12
こおひいたいむ様

コメントをお寄せいただき、ありがとうございます。

伊坂幸太郎さんは2000年に宮城県を舞台にしたミステリーで作家デビュー、その後は仙台市や宮城県を主な舞台として、軽妙な面白いミステリー作品を書かれています。青葉通りや蔵王のお釜などが小説に登場します。

たぶん、仙台市にお住まいだと思います。
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Unknown (こおひいたいむ)
2020-07-08 20:15:40
こんばんは。いつもありがとうございます。
伊坂幸太郎の作品は映画でしかふれたことがありません。

老眼が進み,蛍光灯の光量では小さな文字が見えなくなっています。
最近はもっぱら電子図書で活字にふれている程度です。

「ひかり」の写真,褒めていただき光栄です。ありがとうございます。

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鳳仙花さま (ヒトリシズカ)
2020-07-08 17:38:32
鳳仙花さま

コメントをお寄せいただき、ありがとうございます。

伊坂幸太郎さんは2000年にミステリー作家としてデビューし、コンスタントに軽妙な作風のミステリー小説を書いてきました。

この短編集の「逆ソクラテス」は異色の中身です。しかも、3篇は書下ろしです。想像外の伊坂幸太郎さんの作風です。
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伊坂幸太郎さん (鳳仙花)
2020-07-08 16:44:16
伊坂幸太郎さんのミステリーは、読みやすい文章で、そのくせどう展開していくのか、分からない点が面白さでした。
会話も軽妙で、面白いです。
でも、20年も書き続けると変わっていきますね。
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月光化面さま (ヒトリシズカ)
2020-07-08 15:07:09
月光化面さま

コメントをお寄せいただき、ありがとうございます。

伊坂幸太郎さんは2000年にミステリー作家としてデビューし、コンスタントに軽妙な作風のミステリー小説を書いてきました。

20年経ち、少し作風が変化することも自然なことです。でも、これまでの作風が好きなことも事実です。
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伊坂幸太郎さん (月光化面)
2020-07-08 12:54:53
伊坂幸太郎さんは長い間、優れたミステリー作品を書いてきました。作品を出せば、たくさん売れる人気作家ですが、直木賞は受賞していません。
この理由はちまたでは、いろいろとささやかれていますが、文体を変えたくなる時期であるような・・。
なかなか意味深です。
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