ブロードウェイでプレビュー公演が始まったキャロル・キングのミュージカルBEAUTIFUL
結論から言うと
↓ ↓ ↓
「面白くない」
観る前は、けっこう肯定的な感想もあったので(しかし、どれも「JERSEY BOYSほどではないが」という前置きがついてたけど…笑)多少期待していたのですが、ダメでした~
実は、今回、まだJBは観ていませんで(昨夜はテネシー・ウィリアムズの劇「ガラスの動物園」を観賞。でも、あれもダメだった。評価が高かったので、期待していたのに~)とにかく、私は今、無性にJBが観たい(!)完全に「JBロス症状」になってしまった!明日、マチソワするかも!
ただ、このBEAUTIFUL、後になってじっくりストリーをおさらいしてみると、「ちゃんと筋が通ったテーマがあったんだなぁ~」と思えるのですが…ところが、観ている最中は、ひたすら面白くなかった。
まず、若くしてソングライターとして頭角を現したキャロルはジェリー・ゴフィンと恋に落ち、劇作家をめざすジェリーの書いた詞に曲を付け、順調にヒットを飛ばしていきます。
とにかくまぁ、この二人の出会いのシーンを含めて、開始10分で、ストリーの展開は全部読めてしまうんだな。ここが「致命的」といえば「致命的」
そして、かれらにとっての、ライバルでもあり、盟友でもあったのが、バリー・マンとシンシア・ワイルというソングライターのコンビでした。(バリー役はジャロッド・スペクターが演じています)
ジェリーは父も劇作家で、自分もいずれは劇作をしようとしていた。そして、ポピュラーソングの作詞をすることについては、「たった3分程度の大衆受けするヒット曲で、どんな世界が描けるというのか?」なんて、どこか冷めて見ていたところがありました。それでも、周囲の要請に応えて曲を書き、バリー&シンシアのコンビとともに曲を競い合います。
ここが前半のシーンですが…これ、クリエイターの意図が入っていたのでしょうか…私の耳には、バリー&シンシア・コンビの曲のほうが、旋律もリズムもカラフルだと感じ、曲作りにおいての「職人的なうまさ」を感じました。ジェリー&キャロル・コンビの曲もいいのですが、バリー&シンシアの音楽には、時代や人々の意識がどのように変わっていこうとも、そういう「周辺」的なものに一切影響されないような、音そのものとしての普遍の魅力が感じられました。
実際、ジェリーが一番焦っていたのはそこだったんでしょう。ブリティッシュインベイジョン、カウンターカルチャー、ニューロック…あの時代、ミュージシャンには逆風の連続でした。ジェリーも、ストレスで、相当に神経をすり減らしてしまっていました。ところが、一方のバリーといえは、ちょっと試しに、最新のトレンドを自分の音楽に取り入れてみても、生来の器用さも手伝って「楽々とK点越え」な結果を出してしまう。それが、郊外の家のシーン。
「もう自分にはかなわない!」と落胆したジェリーは「お決まりのコース」で家族と離れていきます。
辛い離婚を経験したキャロルは、娘たちとカリフォルニアへ移り住み、自分で作詞をして歌うようになります。東海岸とはまた異なる「空気」の中で、当時の西海岸の人たちが至上の価値としていた「自然回帰」「精神の自由」のテーマも織り込んで、名盤TAPESTRYが完成しました。
ジェリーが望んでいた「音楽で精神性を表現したい」ということが、なんと離婚して西海岸に移ったキャロルの手で結実したことになります。ここは、ある意味「感動」ですよ。最後のシーンで、ジェリー現れたのも納得です。実は、TAPESTRYは二人の共作のようなものだったと考えられないでしょうか?…そうですよ。
いい話だな~(????)
そう、テーマとしては悪くないんだけど、舞台で観ると、あまりにつまらん!
以下、JBとの比較もさせていただきます。
まず、JBの場合はRags to Riches(ぼろきれから金持ちへ)と呼ばれる、ドラマとしてアピールしやすい「成功物語」が基礎にあります。テーマそのものが観客を惹きつけて離しません。キャロルの場合は比較的裕福な家の聡明な娘として生まれ、女性ソングライターの草分けといてのいろんな限界もあったでしょうし、子育てをしながらの仕事も大変だったことでしょうが…なんか「無理やりドラマチックにしている」って感じが鼻についてしまう。
また、二組のソングライター・コンビが話の中心になっているので、「仕事場で曲を作りました」⇒「プロのシンガーに歌ってもらうと、こんな仕上がりになりました~」のようにリプライズで曲を聴かせられるシーンの連続が、冗長にみえて仕方がありませんでした。例えば、JBでも多くの曲が歌われますが、オリジナルと同じ尺で歌っているのは「君の瞳に恋してる」ぐらい。あとは「うまい具合に端折って」います。つまり、観客のなかに湧く「まだ聴きたいのに!」という思いを、しっかり残して、それを最後まで持続させていくわけです。このあたりは計算され尽くしています。ところが、このBEAUTIFULは、聴いているうちに飽きてしまって…。それと、こういうやり方では、アーティストの歌のシーンがストリーとぷっつり切り離されてしまっているようで(リトル・エバのエピソードなどは除く)これじゃ文字どおりの「カタログミュージカル」で…ちょっと何とかできないものかと。
そんな中で、よかったのは、バリーとシンシアが愛の告白で歌うWalking in the Rain. 絶妙のタイミングで中断したり、歌い手を変えたりなど。舞台ミュージカルの中で既製の曲を聴かせるための「すべてのヒント」があのシーンにあると思いました。実は、JBって、こういうところが上手いんです。あらためてJBの素晴らしさを実感ですよ(!)
あとは、ソングライターが主人公なのだからして、当然、ピアノの前で歌うシーンが圧倒的に多いわけですが、舞台ミュージカルとなると、あれってちょっと絵的に単調かな~とも思いましたが。フロントメザニンで観たのですが、大きなグランドピアノの中には(当り前かもですが)ピアノ線もハンマーもない空洞でした(笑)演奏する「ふり」だけができるように作られているんですね。珍しいものを見せていただきました。
あの名盤のTAPESTRYというのは、キャロル・キングとジェリー・ゴフィンのお互いの感性が、お互いに傷つけあいながらも、ようやく実を結んだものだと解釈されます。実は、私はフライトの間、何度も繰り返して聴いていましたが、音楽としてのオリティも高いし、何よりも、全体のバランスがすばらしい。あの時代がなぜこの作品を押し上げたのか…いろいろ考えさえられました。もともと「シンガーソングライター系」の音楽が苦手な私なのですが、それでも自然に聴き惚れてしまいました。
私も、長年ポピュラー音楽を聴いていますが…音楽にとって優先されるべきものは「音」なのか「詞」なのか?「感性としての音」なのか「中に込められたメッセージ」なのか?…実は、今もよくわかりません。でも、当のアーティストたちも、それらの狭間で格闘しているものなのですね。そういうことも実感させられたミュージカルでした。
それでですね…このミュージカルも、アーティストとしての彼らにテーマを集中して、しょうもない日常的な家庭生活や夫婦生活のあれこれとか、ぼんやりと「お察しください」な表現にとどめておけばいいのでは?(ハッキリ言って、キャロルのお母ちゃんの役、なくていいと思う)あれもこれも入れるから、全体的にメリハリがない。
今、プレビュー中で、何度も変更を加えながらやってみているんでしょうが…やっぱ、根本的には、舞台ミュージカルとしての「素材の弱さ」感は否めませんかね…
こういうのこそ、「映画」にしたほうがいいのではないかと思えてしまいました。
あくまでも「私の感想」です。
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