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And This Is Not Elf Land

天井桟敷の人々


「名画」として名高い、1945年のフランス映画。
原題は「楽園の子供たち」。
舞台は、19世紀のパリの劇場街。

なかなか全編を通して見る機会がなかったこの作品ですが、初めての映画館での鑑賞となりました。1945年制作の映画で、かなりフィルムの劣化が進んでいたり、ノイズが気になったりした個所もありましたが、
ま~あ、最後は
「圧倒!」
わぉ!!!

190分という、ちょっと長めの映画ですが、舞台演劇が好きな方必見ですよ!!!


映画全体としては、あのバルザックの小説『ゴリオ爺さん』のような趣でした。一人ひとりの人物の内にある「愛」「エゴ」「嫉妬」「絶望」などの描写を上手くかみ合わせながら、次第にパリの街の俯瞰図のようになっていく。「個」と「全体」のバランスが素晴らしい。多少、スパイスが効きすぎているようなセリフが、主要な場面で最大限に生かされているし…フランス語が分かれば、洒落や当て擦りなども理解できたんでしょうけれど~

劇中劇のシーンも美しいし、逆に舞台から客席を眺める絵も圧巻!天井桟敷の客たちの描写も素晴らしい!(しかし、あれでは、落ちる人も相当いたのでは?)そして、ラストのカーニバルのシーン。仮面、衣装、踊り、紙吹雪…白黒画像であるがゆえに、かえって想像力がかき立てられます。

とにかく、個々のキャラクターの人物造型やストリーの組み立てなど、非常に完成度が高く、ストリーにも最後まで惹きつけられる。

…ただ、これは、私があまりに「ハリウッド的」なパターンに馴らされすぎているのかもしれませんが…ちょっと「おっと、そう来ます?!」と感じた部分もありましたね。

ガランスをめぐる男たち-バチストは無言劇(パントマイム)に素晴らしい才能を見せる一方、明るいお調子者のフレデリックは饒舌でシェイクスピアを好む。ピエールはならず者ではあるけれど、文学の才能があり、劇の執筆もする…とくに「静」のパフォーマンスのバチストと「動」のフレデリックが、お互いに刺激を与え合うシーンがあって、バチストに「オセロこそ、無言劇が相応しい」というセリフがあり、そしてガランスへの愛と嫉妬が渦巻き…こうくれば、どうしても、そこにピエールの劇とやらに、伯爵の財力もからませた大団円を期待してしまったのですが。

しかし、この映画のラストは、何らかのテーマのために、それぞれのキャラクターが「役割」を演じるというのではなく、それぞれが、自身の真実ために、自身を存在させていくという、まことにフランス的(と言っていいのかな…笑)な印象を残して終わりました。この映画が1945年に、3年以上の歳月をかけて制作されていますが、当時の難しい政治的社会的背景も無関係ではないと思います。製作者たちも俳優たちも、どのような思いで、この映画に取り組んだことでしょう。とにかく、さまざまな条件が重なり合って、この奇跡のような名作が生まれたのでしょう。

あと、細かいところに言及すれば、あのお調子者のフレデリックですが、彼は役者としてはバチストほどの深さはないような印象を与えるかもしれませんが、私的には「おや?」と思ったところもありました。第2部の冒頭、せっかくの新作をアドリブで作家のひんしゅくを買ってしまうところですが…確かに、現代の私たちから見れば、ああいうのってTVのバラエティー番組がしょっちゅうやるパターンでうんざりな感じがしますが、実際、あのように、劇が虚構であることを逆手にとって、観客に揺さぶりをかけるというのは、ワイルダーなども取り入れていたことで、あれはあれでフレデリックの個性が生かされた斬新なアイデアではなかったかと思いますね。実際、フロア席の「お上品な」客も大喜びでしたし。

一方では、フレデリックが、直情的で直観的な「オセロ」を演じたときの、「お上品な」客たちが見せる冷やかな態度というのも…これは、同じ頃に」ブロードウェイで起きたアスタープレイスの騒乱を思い起こさせました。そういう時代だったのでしょう。

バチスト役のジャン=ルイ・バロー…、(このキャラクターは、実在したパントマイム役者がモデルになっているんだそうですが)この人が素晴らしいの!調べてみると…94年に83歳でお亡くなりになっていらっしゃるんですね…良かった(?)だって、この方とリアルタイムでリアルにお会いしていたら、私は間違いなく追っかけてました!!(だって、「ストライク・ゾーンど真ん中」だし)生前は、舞台での活躍も顕著だったようですね。確かに、舞台役者として完璧な佇まいをしていらっしゃいますよ、この人!顔立ちと言い、スタイルと言い~そして、顔の表情とボディランゲージの豊かなこと!(パントマイムではないシーンでも、素晴らしいの!)とにかく、わたくしにとっては「即一目ぼれ」系のタイプでありました



わたくしとしては、最終的には、登場人物の中で、もっとも同情と共感を覚えたのは、バチストの妻のナタリーでありました。彼女は可愛らしくて、優しくて、賢い女性だったのですが~

ホントに、
役者を愛するって、
大変なことなのですよね…(?)




「ね」って何だよ…

以上
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