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And This Is Not Elf Land

ステージからスクリーンへ(6)




映画「ジャージー・ボーイズ」公開から10日。

これまでは海外のミュージカルに関心のある人しか知らなかった「ジャージー・ボーイズ」
こんなに多くの人たちの話題に上る日が来るなんて…

そういえば、これまではJERSEY BOYSのことを略してJBと呼んでいましたが(向こうの人がそうしている)、これはもう使ってもわからなくなるかなぁ~という気も。

先日「『ジャージー・ボーイズ』もいいけど、JBの映画も観たい…」というコメントを見つけて一瞬「?」と思いましたが、JBってジェイムズ・ブラウンのことなんですね(笑)そう、彼の映画GET ON UP8月頭にアメリカで公開されて、アメリカの映画館でこのトレーラーが紹介されていました。日本では公開予定がないようです。このGET ON UP、批評家受けは「ジャージー・ボーイズ」よりよかったようですが、興行的には下回っています。


ネット上で、映画「ジャージー・ボーイズ」の感想を読んでいると、やはり面白いのは、あくまでも「作品論」(「テクスト論」と言っていいかもしれない)として分析されている方のものです。ちょっとした台詞や場面描写の深い解釈あるいは綿密な分析が示唆に富んでいて、また新たな発見に満ちていて…読みながら何とも言えない興奮を覚えてしまいます。こういうのに出会うと、やはりこの作品、映画化されてよかったな…と思います。

さて、映画でもクライマックスである「ロックの殿堂入り」のシーンですが、今回はこのシーンの舞台版の全台詞を紹介したいと思います。

映画では、構成上、あれ以上の台詞を持ってくるのは無理だったんだろうと思いますが、舞台では、あの数倍の台詞があります。映画でもあのシーンに感動されたという人も多いことから、舞台版の全台詞を紹介することで、さらに「ジャージー・ボーイズ」の世界に近づいていただけるのではないかと思います。

Melcher Media社のスクリプト本からの訳です。舞台は、時々台詞が変えられることもあるのですが、このシーンに関しては、今年7月のブロードウェイプロダクションで見る限り、台詞はこのスクリプト本のとおりでした。誤訳はご容赦ください(汗)

また、ここはRagdollのコーラスをはさみながら台詞が展開します。映画でも少し歌いましたが…






ロックの殿堂入りのシーン


トミー:なんだよこれ、タームマシンにのってるみたいじゃねぇか。

ボブ:トミー、ベガスはどうだ?

トミー:忙しくしてるさ、ゴルフをやったり、資金をちょいと洗ってみたり…ま、いつも通りさ。…フランキー、娘さんは気の毒だったな。つらい話だ。

フランキー:ありがとう、トミー。

ボブ:フランキーは新しい家庭を持って、3人の息子がいる。

フランキー:今度こそ、うまくやりたいと思っているよ。

トミー:ところでお前ら、この後、俺たちのスイートルームに来いよ。パーティーをやるぜ。

フランキー:「俺たち」って?

トミー:俺とニックさ。

ボブ:お前ら、同じ部屋とったのか?

トミー:奴は自分のタオルを持ってきたさ。325号室だ。家族と友達、料理と音楽、最高じゃねぇか。

フランキー:確かに…

ニック:俺たちがまた同じステージに上がることができるなんて思わなかったよな。

トミー:俺だってステージに上がれるなんて思ってもみなかったぜ。ところで、ちょっと言わせてもらう。これは世界で一番すごい賞だ。「ロックの殿堂」だぜ。ほかのアカデミー賞とかエミー賞とか…あんなもんは金で買えるんだ。でもこれは違う。だって、これは世の中の人が選んでくれるんだからな!

俺は今何をやっていると思う?ジョー・ペシの助手さ。昔、ひっぱたいていた、あいつだよ、1,2か月前に、奴を車に乗せていたとき、奴はこう言った。「トミー、ちょっと聞くけどな、お前は昔はどんな奴だったと思っているんだ?」俺は言ってやった「立派な男だったよ」すると奴は「はっきり言わせてもらうと、お前は嫌な奴だった。よほどのことがない限りは、みんなお前には我慢できなかった」

人ってのは、自分に都合のいいように記憶しているもんなんだ。だってそうだろ…フランキーをステージに上げ、ゴーディオをグループに入れ、ヒットが出るまでみんなをまとめ上げたのはこの俺だ。故郷ではヒーローだ。2002年には「ニュー・ジャージー州ベルビル、マン・オブ・ザ・イヤー」にも選ばれたんだからな!
ところで、ベガスに来て、カジノへ行って、俺の名前を口にしてみろ…神に誓って、12秒でつまみ出されるぜ!
(退場)


ボブ:僕は故郷に引き寄せられることもなければ、故郷にかかわり続けることもなく、故郷と心中することもなかった。今、自分がいるところが故郷なのだ。今はテネシー州ナッシュビルにいて、ほとんど毎日、午後から新しいボートに乗って過ごしている。まさに、これが僕の人生だ。僕は今でもフランキーのパートナーだ。彼は自分のできることをやり、僕は自分のできることをやり…それでいつも、最終的にはうまくいく。40年前の、あの握手の契約からずっとそうだ。

僕はスポットライトに当たるのが嫌だった。ほかのみんなは何というか…とてもドラマティックだ。僕はドラマに夢中にならない数少ないイタリア人の一人だ。僕はただ、ボートの上で、美しい妻がいて葉巻があればそれでいい…そしてこう思っていれば安らぐのさ「僕がいなければ、なにも起きなかった」とね!
(退場)


ニック:グループを抜けた後も、なんかこう引き寄せられるものがあって…フランキーがアトランティックシティーとかニュー・ジャージー近辺でライブをやるときは、俺は車に飛び乗って駆けつけたもんだった。フランキーはステージに上げてくれて、2,3曲歌わせてくれて、それでいつも訊いた。「ニック、なんで辞めたんだ、なぜだ?」

はっきり言うと、裏取引やツアーや不味い料理やトミーと同室が嫌なわけではなかった。いったん口に出すと、それが本当のようになってしまった…俺は家へ帰りたかった。それがすべてだった、女の子と遊んだり飲んだりするよりも…自分のグループを作るよりも。
まぁ、正直言えば…それはエゴのようなものだったかもしれない。みんな前面に出たがる。でも、4人のメンバーがいて自分がリンゴ・スターだったら、家で子どもと過ごしているほうがいいんだ。(退場)


フランキー:僕はトミーのパーティーにはいかなかった。何度かドアのところまでは行ったんだが、中に入れなかった。何故かわからないけど…おそらくニックは「フランキー、何を気取ってんだ?」と言いたげに僕を見ていただろう。ニックはどう思っていたのか、それはもう知る由もない。2000年のクリスマスイブの日に、神は彼に永遠の休息を与えたもうた。彼はあくまでもスタイルこだわったらしい、最後はカトリックとして。

人は「人生最高の時は?」と問う。ロックの殿堂入り?レコードが売れたこと?手品の帽子から取り出したような「シェリー」?全部素晴らしかったよ。

でも、街灯の下で歌っていた4人、何もかもが手の届かないところにあって、そんな中で初めて、あのサウンドができた。僕たちのサウンドだよ…何もかもなくなって、そこには音楽だけがあった。あれが最高だった。

だから僕は今も歌い続ける。テレビに出てくる電池で動くウサギの人形のように。ただただ歌い続ける…音楽を追いかけ、故郷に帰るんだ。




【参考】
①トップの写真はブロードウェイのオリジナルキャスト。ジョン・ロイド・ヤングの姿がありますが、他のメンバーは誰も映画には出演していません。

②フランキーが語る「テレビに出てくる電池で動くウサギ」というのは、アメリカのエナジャイザー社の電池のCMでおなじみのうさぎの人形のことです。

First Energizer Bunny Commercial
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