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And This Is Not Elf Land

Copying Beethoven



映画「敬愛なるベートーベン」。

ベートーベンの死の床に駆けつけるアンナ(架空の人物)。馬車の窓から見えるのは荒涼とした空、丘、麦畑、羊飼い、農民たち、森…そして、彼女には「大フーガ」が聴こえてきます。

ベートーベンはキリスト教徒からは異端と非難される言動があった一方で、汎神論的な考えへの傾倒が見られたと言われます。この映画は、初めも終わりも、ベートーベンと強い師弟愛で結ばれていたアンナにも、彼が魂で耳にした万物の声(神の声)が届いてくる…というシーンでした。

小さいけれども音響のいい部屋で鑑賞することができてラッキーでした。少々、マニアックな内容ですが、第九に出たことがあるとか(?)、普段からベートーベンの作品に親しんでいる…という人は十分に楽しめると思います。

ベートーベンの写譜師として第九の完成に力を貸したアンナとの交流を中心に、彼の晩年を描いています。時々「細切れ」に流れる「合唱」部分。ああ、ここの部分にはこのようなメッセージが込められていたのか…と、今更ながら(…というのは、第九を歌ったのは「数十年前」だから)感動しました。

序盤に繰り返し、出てきたのは…男声で歌われる
Seid umschlungen Millionen! Diesen Kuß der ganzen Welt!

Brüder! überm Sternenzelt Muß ein lieber Vater wohnen.


大コーラスへの導入部への、ベートーベンなりの「こだわり」は、アンナの台詞によって明らかにされます。あのような形で写譜師をテストしたというのは実話なんでしょうか?だとしたら、興味深いですね。

短いシーンでしたが、ウィーンの森を散歩するベートーベン。ここはもっと見たかった気がしました。(本当は、もっと長いシーンとして撮ってあるのではないかな?)森を歩いているときは、聴覚の病も彼を苛めることはなく、風も、空も、木々も、小川のせせらぎも…すべてが「神霊だ、神霊だ…」と囁き掛けるようだ、と書き残したといいます。森での自然との対話は、彼の創作意欲を大きく刺激したようです。

やがて、第九交響曲は完成し、お披露目の日が来ます。歴史的瞬間の再現だと思うと、ちょっと興奮。映画では、彼の耳は聴こえにくくはなっているものの、通常のコミュニケーションに問題がないように描かれていましたが、実際には、全く聴こえない状態になっていました。

映画では、アンナが「影」で指揮をし、それを見ながらベートーベンが指揮をする方法を取ります。緊張の導入部から、
やがて合唱部分にはいり、アダージョの
Über Sternen muß er wohnen.
では、二人とも陶酔の表情になるのですね…。

第九交響曲の初演は大成功を収めます。

アンナは作曲家志望の女性でした。彼女にとってベートーベンは気難しい人間ではあっても、自分の求める世界に導いてくれる存在であります。恋人と別れてしまうことになっても、彼女は自分の魂の深い部分でベートーベンを求める自分に気づき、彼についていきます。もう、逃れられないと…。

このような魂の繋がりを持てる人なんて、この世界にどれだけいるでしょうか?でも、もちろん、それはそれで険しい茨の道なんでしょう…。選ばれたものだけが、辿ることを許される。

ベートーベン自身も、自分にはアンナがなくてはならない存在だと意識するようになります。部屋で沐浴しながら「Wash me!」と彼女に体を洗わせるシーンがあります。ここは唯一、二人が物理的に「ふれあう」シーンではなかったでしょうか?

このwashが、宗教的な意味の「洗い清める」であれば(少なくとも、私はそう受け止めた)、字幕の「洗ってくれ」はちょっと俗っぽい響きになり過ぎないでしょうか?しかし、ベートーベンの内に「下界的な」欲望が全くなかったとは言い切れないのかもしれませんし…こういう時の字幕って難しいですね。日本語では「洗う」は「洗う」ですしね。

ベートーベンの死後、戸を開けて外の自然にふれるアンナ。緑の丘、爽やかな風、空の光…そんな中で、合唱のダブル・フーガが聴こえてきます。

アダージョの後のダブル・フーガは、自然界のハーモニーだったのか…

コメント一覧

ペルちゃん
未来の国
よく調べたら、もうひとつは「未来の国」みたいです。
master of my domain
そうそう、プロレスと交互に放送されていましたよね、懐かしいな~。
もう二つは「開拓の国」と「科学技術カンケイの国」だったような気がします。これって、実際のディズニーランドの4つのテーマがそのまま番組に反映されていたと思うのですが、東京ディズニーランドも1回しか行ったことがないので、よく分かりませんすいません…
ペルちゃん
ディズニーランド
やっぱりディズニーランドでしたか。ちょっと自信がなかったもんで・・・。
でもうれしいなあ。覚えていた人がいるなんて。
ベートーベンの耳が聞こえなくなる、というところに大変恐怖を感じたものです。
ディズニーランドはテレビ番組でしたけど、今のディズニー映画よりもよっぽど夢があって面白かったと思いますね。
毎週金曜日夜8時からで、プロレスと交互に隔週で放送されてました。
おとぎの国、冒険の国、あと国が二つありましたね。なんだったかな。おとぎの国がディズニーアニメのコーナーで、これが一番楽しみでした。
master of my domain
あっ、覚えていますよ!!
「ディズニーランド」でやっていた「ベートーベン物語」。確か、2-3回に分けての放送だったと思います。あの中の第九のシーンでは、ベートーベンは指揮をしていませんでした。あの番組は、どれも内容が濃かったですよね~。その後、再放送とかDVD化…等の話がないのが不思議です。
ペルちゃん
ベートーベンの映画
イギリス・ハンガリーの合作映画ですか。
洋画はあまり見ないのですが、面白そうですね。
小学生の頃、テレビで見たベートーベンの白黒映画(テレビが白黒だったから本当はカラーかも?)がすごく印象に残っています。
あれは「ディズニーランド」でやっていたのかなあ。
覚えておられますか?
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