プレビューが始まって間もない時期に観ることができました。とても刺激的で、楽しい観劇体験でした。今日がオープンのようですが、このBWのリバイバル・ランが成功するように祈ってます!
このTHE MYSTERY OF EDWIN DROODというのは、英国の文豪チャールズ・ディケンズの絶筆となった作品です。
内容は…結婚を控えた青年、Edwin Droodが行方不明になってしまうのですが、どうも事件性がある模様…だって、後見人だった伯父をはじめとして、周囲は怪しげな人でいっぱいだったわけだし~さて、犯人は??
ところが、結末を書く前にディケンズは亡くなってしまいました。
はぁ~?じゃあ、このミュージカルではどういう結末なの~?!と思ったりするわけですが…なんと、ここでは、「犯人」を観客の投票で決めるのです。つまり、ドラマの結末は、その日の投票結果によって変わるわけ。
また、ちょっと話が前後しますが、このショーというのは、EDWIN DROODそのものを上演するのではなくて、イギリスにあるThe Music Hall Royalという劇団がやっている、という設定なので、このEDWIN DROODは、あくまでも「劇中劇」として演じられているわけです。つまり、このショーの大部分は「劇中劇」を観ているってことになります。
なんか、ぎこちない説明をしておりますが(汗)お分かりいただけるとありがたい。
とにかく、これは面白かったです!
演劇というものが、観る側が「虚構を楽しむことに徹する」ことで成り立つものだとすれば、その虚構性を逆手に取ったり、ちょっと禁じ手を使ったりしながら、観客を揺さぶっていくわけです。
順序よくお話しますと~~
まず、BWのショーなので、当然PLAYBILLが配布されますが、その中にまた、The Music Hall Royalとしてのチラシが入っているんですよ。
…正直に申しましょう~わたくし、最初は、事情をよく把握しておりませんでした(汗)
だって、その配役を観ると、伯父役がCliveナントカさんになっているのね…「はぁ~ウィル・チェイスじゃないの?」それでも「今日はアンダーが出るのかな~」と思ったのですが…Droodはステファニー・J・ブロックじゃなくてAliceナントカになっているし…
そのうちに、ショーが始まって、俳優たちが客席から客に挨拶をしながら登場するのですよ。で、JBのトミー役をやってたアンディ・カールが「こんにちは、ビクター・グリンステッドです。今日は客席におふくろが来ているので、僕を犯人に選ばないでね」なんて言ってるわけね…「えっ?」
……(そろそろ気づけよ…笑)
はい…まぁ、私のボケ話をしているとキリがないので、またこのショーの話に戻しましょう~
そして、この劇団(…つまり、RoundaboutのStudio54じゃなくて、The Music Hall Royalの劇団ってことね…ああ、ややこしい)の支配人役-演じているのはジム・ノートン-の配役紹介でステージ・パフォーマンスが始まります。そして、このThe Musical Hall Royalも「現代の」劇団という設定ではないのです。これを演じられているのも19世紀末であって、支配人から観客に「コルセットを緩めてください」「これは、そんなにお上品なショーではありません」なんてメッセージも伝えられるわけです。
ビクトリア朝時代のことに詳しい人であれば、この作品全体の風刺性なども読み取れることでしょう。
それと、この主人公の青年Edwin Droodの役はmale impersonator(男役女優)によって演じられると支配人は伝えます。つまり、これはcross dressedのショーでありまして、日本であれば、宝塚などでお馴染みですが…。この時代、こういう男役女優がよく活躍していたのでしょうか?そのあたりの事情も分かれば、より楽しめるでしょう。
で、Droodを演じるステファニーは、私的には「(かつてのJBのボブ役であった)セバスチャン・アーセラスのヨメはん」というイメージのほうが強いんですが(笑)この方、写真などで観る限りでは、ちょっと地味な印象もあったのですが、実際に見てみると、非常に美しい方で、かつ「男役」として必要なメゾソプラノの歌声も完璧でした。ステファニーのエルファバも、さぞかし見応えがあったと思います。この人は、何のショーに出ても、非常に評価が高いのですが、それは納得でした!これからは、セバスチャンを「ステファニーの婿」と考えることにしよう(?!)
Droodは女性が演じていることで、伯父のJasperのDroodへの思い、そして彼の婚約者Rosaへの思いの屈折具合をさらに面白くさせているようでした。これは、男優が普通に演じていたら、また違うものになっていたでしょう。Jasper役のウィル・チェイスは、このショーのもっともユニークな要素である「劇中劇を演じる」ということの可能性を最大限に生かそうと模索しているようでした。この人も、舞台映えはするし、素晴らしい歌唱力だし、この役の演技もどんどん進化させていくに違いないと思いました。
とにかく、このプロダクションは実力者ぞろいで、もう最初から終りまで圧倒されっぱなし!チタ・リヴェラ…存在感あり過ぎ!!Rosa役のベツィー・ウルフの歌唱力にしても、凄いのなんのって!そんな中で、久しぶりに見たアンディ・カールは、やっぱり…でした(?)今回は、戯画的に演じる役なので、何とか許せましたがね~しかし、同じく戯画的に演じる墓守役のロバート・クレイトンの破壊力の前には、アンディー君は完全に霞んでしまっていまっているよ。このロバート君、1月に見たANYTHING GOESに出ていた人なのですよ…この役も上手すぎる、、というかヤバすぎる(?)
このショーは「劇中劇」とうことで、虚構の中の虚構を楽しむ作品でもあります。劇中劇であるEDWIN DROODがThe Music Hall Royalの都合で手が加えられたり、The Music Hall Royalの事情が観客によって決定されたり、またまた劇中劇の筋書きが観客によって決定されたりなど、観ている者の視点が常に揺さぶられます。…だいたい、ACT Ⅱで登場した謎のDatcheryなんて、どう見ても「重要参考人」でしょうが~そんな「決め方」でいいのかよ!…とか、突っ込みどころも満載(笑)でも、そういう部分こそ、陰鬱な原作を良質のコメディーに作りかえるのに成功させたのだと思われます。
とにかく、非常にユニークでスリリングな劇場体験を味わえました。結局、われわれ観客はRoundaboutの観客ではなくて、The Music Hall Royalの観客だったんだナ…ま、ロビーから、その「仕掛け」があったしね(笑)
そして、何よりも…このプロダクションは、キャストも素晴らしく実力者ぞろい。ここが一番重要な点でしょう。このTHE MYSTERY OF EDWIN DROODの魅力は、手法のユニークさだけではなくて、パフォーマンスのクオリティーの高さなのだ…と、観る者を納得させてしまうのが凄いところだと思いました。
これは、今度のTONY賞レースに残ってほしいですね。
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Elaine's
えりか
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