みなさま、お久しぶり~っ…安定のwhiteでした。
2020年8月に(ようやく…笑)書いています。
この年に見たJERSEY BOYSはこれ一回だけ。忘れられない公演でした。
このときの感想については、ツイッターにグダグダと書いているのですが、こちらで、あらためて纏めたいと思っています。
このときのJERSEY BOYSの記事については
① キャストの演技を中心にした感想
② 日本版の演出と作品理解について
③ NHK BSで放送されたドキュメンタリー「ミュージカルの聖地に挑む~演出家・藤田俊太郎のロンドン進出」をめぐって
の3つのパートに分けて書きますね。よろしくお願いいたします。
さて、①についてです。このWhiteチームは2020年のプロダクションではもう存在していないのですね。Whiteは初演でも観たお馴染みのキャストで、非常に安定度が高い演技。初演の時は「ああ、ジャージー・ボーイズが日本へやってきたんだな」と思うと涙が止まらなかった思い出があります。
まず、一人ずついきましょうか…
★ひとつの完成形 ~海宝さんのボブ
さまざまな側面があるボブのキャラクターですが、海宝さんは、初演の時と同じく、一言でいうと「空気の読めない天才」…もっと言えば「空気が読めなくても、才能があるから許されている人」…もう、これに尽きます。完璧です。
この部分を、ここまで徹底的に演じるボブは、北米キャストでもあまり知りません。才気あふれる爽やかな声、常に上向き目線…このボブのキャラクターの対極にニックの無念な思いもがあるのですが、その対比も鮮やか。この辺りはニックのパートで書きましょう。
溢れる才能でどんどん前に進むボブ。その途上では、置き去りにしたものもあるってことも本人は気にしていない…というよりは気づいていない。「えっ、僕が誰を傷つけたっていうの?」…はい、そうなんですが…でも、今となれば、誰もあなたを非難しない(笑)
「君の瞳に恋してる」を売り出すシーンでは、表情に変化が見えます。自分の思い通りに事が運ばなくなり、喘ぎながら前へ進むシーンです。ここの演技もよかったです。
北米キャストの中で好きだったのはクィン・ヴァン・アントワープのボブで、彼は冷徹な策士の顔をのぞかせる演技で魅せました。矢崎さんがこのあたりを表現しているのではないかとインタビューなどから伺えます。いつか矢崎さんのボブも観たい。
★愛すべき迷惑男 ~中河内さんのトミー
OBCではクリスチャン・ホフがトニー賞助演男優賞を獲得したトミーですが、私的にはなかなか彼を上回るトミーには出会えませんでした。
トミーにはいろんな要素が求められます。ジャージー・ボーイズはブロマンス的な要素も大きく、トミーのキャラクターは、アウトローな部分と、それでもフランキーなどがついてくる「ある種の魅力」を併せ持っていなくてはいけません。
中河内さんのトミーはちょっと違いましたが、でも、私は気に入りました。なんか「こんなのが親戚にいたら、さぞ迷惑だろう」みたいな(笑)トミーにはコミカルな演技も求められますが、そこもそつなくこなしていて、茶目っ気もあって可愛い感じ。
でも、他人なら「茶目っ気があって可愛い」で済ませられても、こんなのが身近にいたら最悪だな…みたいな(笑)…中河内さんの親しみやすい雰囲気が、トミーのキャラクターを近くしてくれましたね。鉄砲玉トミーもなかなか良かったですよ。この方はダンスもうまいし、その身のこなしにも素敵でした。
★心優しい日本のニック ~福井さんのニック
さて、福井さんのニックです。ニックはジャージー・ボーイズのストリーの核です。とても難しい役だと思います。日本のミュージカル界のメジャーな作品に数多く出てこられた俳優さんがこの一見地味な役をどう演じられるのか、初演の時から興味津々でした。
初演の時はちょっと迷いながら演じておられるようにも感じたのですが、再演では、演技にもさらに磨きがかかり、見せ場となるシーンのタイミングもぴったりで、客の心をしっかりつかんでいたと思います。
(これで、演出がよければ、もっとよかったのに)
(その話は、あとでた~~~っぷりと!)
ニックは「ハーモニーの天才」と言われ、フランキーに歌の指導もしました。ニックも音楽の才能に恵まれた人だったのです。それなのに、彼は栄光の道から外れてしまいました。
「なぜ…」
実際、ニックは酒や女性が好きな享楽的な人で、物事に対するこだわりも強く「助けが必要な人」という一面もあります。北米のJBでは、「だから、ニックのキャリアは残念に終わったのです」と言わんばかりに、そこをやたらと強調して演じるニックが多く、もううんざり。向こうは明確な答えを求めるんでしょうね。
福井さん演じるニックは無理に「答え」を出そうとしません。とにかく「人生は思うようにいかない」と淡々と演じられて観客の共感を得ていきました。
これが日本のニックだ。
★「背負っている」からこそ ~中川さんのフランキー
初演の成功でますます活躍の中川晃教さん、フランキー役の魅力は多くの人が語っておられるとおりです。
フランキー役は非常に大変な役で、シングル・キャストとしてこの看板を一人で背負って務めを全うする姿は、そのまま劇中のフランキーの姿と重なりました。北米のJBでは、「冬」のパートのフランキーは明らかに十字架を背負っているイメージ。日本ではバックグラウンドとなる宗教観も違いますが、それでも中川さんのフランキーも、やっぱり「背負っている」フランキーというのが味わい深い。
あと、エンディングへ流れる場面の解釈は、日本版の作品理解・演出そのものがオリジナル版と大きく乖離してしまっているので、この辺りは演出の項でたっぷり書きます。今のところは、オリジナル版の解釈だったら、アッキー君はどう演じるだろう?という想像にとどめておきます。
さて、プログラムの中川晃教さんの紹介のページには(ファンの方はとっくに知っていらっしゃることなんでしょうが)中川さんは中学生の頃にコンクールで尾崎さんの歌を歌いましたが「尾崎豊は二人要らない」と審査員に言われ、シンガー&ソング・ライターになることを決意…とありまして…ここがとっても印象に残っています。
ヴォーカリストとして究極の職人芸で聴かせるフランキー・ヴァリさんを中学生で既にシンガー&ソング・ライターを目指した中川さんが演じる。これはこれで、フランキー像が面白く進化していくのではないかと思っています。
女性キャスト、アンサンブルキャストの皆さんもその実力を余すところなく発揮されていました。また別の機会に書きます。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。
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