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スカパーで放送されていたものを鑑賞。これも久しぶり…
原作はテネシー・ウィリアムズの代表作の戯曲。エリア・カザンが1951年に撮ったものです。当時、既にブロードウェーではジェシカ・タンディ主演で大好評を博していた舞台でしたが(ジェシカ・タンディは『ドライビング・ミス・デイジー』や『フライド・グリーン・トマト』などで最近の映画ファンにも知られている)映画界での彼女の知名度はいま一つ…と判断した製作者側はロンドンでブランチ・デュボア役をやって、これまた高い評価を得ていたビビアン・リーに白羽の矢を当てたといういきさつがあります。
ロンドンの『欲望という名の電車』の監督はビビアン・リーの夫だったローレンス・オリビエがやっていて(スタンレー役も彼だったらしい)ビビアンは「カザンよりもオリビエからの影響が大きいものだった」と後になって語っています。
これもどちらかというと舞台向きの素材だと思うのですが、これは映画翻案の成功例の一つに数えられています。でも、個人的には、花売りの場面・物売りの声などはちょっと映画向きじゃない感じがして気恥ずかしい(?)感じもするのですが。白黒の映像は何とも言えない効果を出していますね。登場人物の顔の陰影をはっきり見せていて…最後にミッチがブランチに「明るい所で顔を見せろ」と迫る場面などは見ている側もその場にいるような緊張感がありますね。(しかし、ここって原作にありましたっけ!?)
また、クライマックスとも言えるブランチがスタンレーに凌辱されるシーン。この映画でのマーロン・ブランドの凄さは誰もが認めるところなのですが、実は彼はオスカーを取っていないのですね(今日、初めて知って意外だった!)南部のお嬢様として生まれ、現実と向き合うことができずに思い出と過去のプライドにすがって生きるブランチに、東欧からの移民の子孫として逞しい生命力を持ち、その圧倒的な男性性をひけらかすスタンレーが襲いかかるこの場面。一方、このときはスタンレーの妻でブランチの妹であるステラが産気づいて入院中でもあるのです。二人の男女の緊張したシーンの背後に「産みの苦しみ」がイメージされる場面で、ここは(舞台を見たことがない私には)原作本を読むだけでは分らない感覚で息をのむ思いで見入らずにはいられません。「何を」産み出す苦しみなのでしょう…このあたりの解釈は人それぞれかもしれません。
ただ、この時代のハリウッドの限界かな…と感じてしまう部分もあります。
ひとつは、ブランチの夫であったアレンについての扱い。映画では、アレンは詩を愛した繊細な美しい青年でブランチが心から愛した男性であったのですが、ある夜、弱々しく泣いている彼を見てブランチが「弱い人なのね」となじった直後にピストル自殺を図ったとなっています。しかし、原作では、アレンは実は同性愛者だったとなっているのです。彼が別の男性と愛し合っている場面をブランチが目撃してしまい、それを彼女に非難されてピストル自殺を図るのです。ブランチの内側の崩壊はアレンとの不幸な別れから始まっていると解釈できますし、この作品のテーマ(生と性)を考えてもここを変えるのはちょっと…と思うのですが。当時のハリウッドでは、ここは避けて通らなければいけなかったのでしょうか。
また、映画のステラは原作よりも「品がいい」雰囲気があって(でもこの役のキム・ハンターもオスカーを獲得しています)少し違和感があります。姉のブラントと違って、ステラは現実的にものを考え時代の変化にも適応できる女性なのですが、原作では、生まれも育ちも正反対で極めて粗暴な夫のスタンレーに理屈抜きで、一人の女として惹かれているのがよくわかります。これは、あまり男性性が強くなかった(であろう)アレンとの関係が不幸な結果に終わったブランチとの対比のようにも解釈できるのですが、映画ではそのあたりは薄いような…。
で、最後のシーンも映画では、おそらく夫の姉への暴行の事実にも感付いたステラが夫と同じ部屋には戻らない!…と叫び、2階の知人の住まいに駆け込んで終わります。(それでも、それは一時の逃避であろういう印象は受けます。この閉塞的な空間から抜け出すことなんて誰にもできないだろうから)でも、最初に観たときは「えっ!」と思いました。原作では、ステラは姉の悲惨な末路に胸を痛めながらも、どこか「満ち足りた」表情を見せるし、スタンレーも妻への欲情を隠さずに見せて幕は下ります。
こういう生々しさもテネシー・ウィリアムズの世界の一部でもあると思うのですが、映画ではここも薄められていますね。『欲望のいう名の電車』は重苦しく衝撃的な話ではあるけれど、それでも、大多数の人に受け入れられやすいようにアレンジされたのでしょうか。60年近くたった今も「名作」の一つに数えられているというのは、やはりこれは成功だったと考えるべきなのかもしれませんね。
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