あちらでは今だにSEINFELDの映画を望む声があります…(SEX AND THE CITYもヒットしたことだし)でも、10年前に終わったものを映画化しても「今さら」という感じだし、だいたいもって、仮に映画になったとしても、「日本公開の可能性は皆無!!」(BEE MOVIEどころじゃないですよね)
でも、このエピソードなどを見るとブロードウェーでの「舞台化」はできるんじゃないか…なんて思ってしまう。これは初期の代表的な(と言っていいのかな?)エピソード。
正味22-23分ぐらいのストリーの内容と言えば、ただただChinese Restaurantで席が空くのを待たされているだけ。脚本を手がけたLarry David, Jerry Seinfeldをはじめ、出演者たちにとっては「まるで舞台劇のよう!」なんて、たいそう気に入ったエピソードだったそうですが(JuliaもJasonも元々は舞台の人だし)NBCは最後までOAを許可しなかったそうです。「あまりにも中身がない」と。
あっ、それと、このエピソードにはKramerは出てきていません。Larryに「このエピソードは特殊なものだから」と説明されたそうですが、KramerのMichael Richardsは「嵌められた!」と怒っていました(笑)
さて、いつものチャイニーズレストランにやってきたJerry, George, Elaineの3人でしたが、店が混んでいて席が空くのを待っていなきゃいけない。お店のマネージャー役は有名なJames Hong。最後までいい味を出しています。まだ現役で活躍していらっしゃいますよね。彼の名演があってこそのエピソードでもあります。
とにかく、待てど待てど案内がないし、自分たちの後に来た人が先に案内されているようにも見えるし、特に空腹なElaineのイライラも最高潮になってきます。そんな時、Jerryは彼女に「あること」を持ち掛けてみます。
JERRY: You walk over that table, you pick up an eggroll, you don't say anything, you eat it, say 'thank you very much', wipe your mouth, walk away- I give you 50 bucks.
(あそこのテーブルへ行って、何も言わずに春巻きをつまんで食べるんだ。で、口元をぬぐいながら「ごちそうさまでした」と言ってここへ戻ってくれば50ドルあげるよ)
GEORGE: What are they gonna do?
(そんなことしたら大変よ!)
JERRY: They won't do anything; in fact, you'll be giving them a story to tell for the rest of their lives.
(大変なもんか!あの人たちは一生、君のことを話のネタにするだろうけどね)
ELAINE: 50 bucks, you'll give me 50 bucks?
(50ドルよね、50ドルくれるのよね?)
JERRY: 50 bucks. That table over there, the three couples.
(ああ、3組の夫婦が座ってるあそこのテーブルだ)
ELAINE: OK, I don't wanna go over there and do it, and then come back here and find out there was some little loophole, like I didn't put mustard on it or something...
(わかったわ。でも、私があそこへ行って実行してこっちへ戻ってきても、うまく言い逃れるようなことはしないでね。マスタードをつけなかったからダメとか)
JERRY: No, no tricks.
(いや、そんなセコいことはしないよ)
ELAINE: Should I do it, George?
(やるべきかしらね、George?)
GEORGE: For 50 bucks? I'd put my face in the soup and blow.
(50ドルのためだろ?僕ならスープに顔を突っ込んでブクブクやってもいいくらいだ)
てな訳で、Elaineは見知らぬ人ばかりのテーブルに近づいて行くのでした。
これで(何も言わずに)テーブルの上の食事を貰うことができるんでしょうかね~?結局、Elaineは「愛想笑い」をしただけですごすごと戻ってくるのでした。ここのシーンはJerryもJasonも素で笑っていますよ。
私も、チャイニーズレストランに行くと、どうしてもこのシーンを思い出してしまいます(笑)面白い発想。知らぬ人がテーブルに近づいてくると「ん?春巻きをつまんでいくつもり?!」なんて考えてしまう…Larry Davidもチャイニーズレストランでの待ち時間にこの脚本を書いたのだそうです。
もう一つ好きなシーンがあります。痺れを切らしたElaineは、Jerryに「あなたが話をつけてきてよ!」と言うのですが、Jerryにはコメディアンとしてのどうしようもない「性」がある(笑)つまり「この僕が、普通の『話のつけ方』をするわけにはいけないんじゃないか…」なんて考えてしまって(たぶん)躊躇するんですが、そこへ店の常連さんと思えるCohenという男性が入ってくるんです(ここで笑ってください)
MR. COHEN: Hey, what stinks in here?
(やぁ、相変わらず臭うな、ここは)
Bruce: Mr. Cohen! Haven't seen you for a couple of weeks.
(Cohenさん、半月ぶりぐらいじゃありませんか!)愛想笑~
MR. COHEN: Well, I've been looking for a better place.
(ああ、もっといい店を探してたのさ)
BRUCE: Better place... Want a table?
(もっといい店なんて…も~う♪お席を準備いたしますよ)
MR. COHEN: No, just bring me a plate and I'll eat here.
(いや、ここで食べるからここへ運んでくれよ)
BRUCE : Give him a plate and you eat here... Come on, I give you a table.
(まぁ、お人が悪い~…席を準備いたしますから、どうぞこちらへ)
このCohen氏、やけにマネージャーに受けがいい。だいたい…ナンで、この人ばかり特別扱いなのっ!?こういうのを目の前で見せられると、当然Jerryは穏やかじゃない。Jerryにとっては、例のユダヤ教に改宗した歯科医に腹が立ったのと同じくらい、このCohen氏も気分の悪い人物なのでした。ここのJerryの表情は笑える。(あんな「何のひねりもない」ユダヤジョークで世渡りする奴は許せん!…みたいな)
まぁ、こういう感じで、場面転換のない異例のエピソードが続くわけです。制作側は気に入らなかったそうですが、それでもそれ以降のSEINFELDの方向性を示すものとなりました。
今見ると、どちらかというとLarryのCURB YOUR ENTHUSIASM (ラリーのミッドライフ☆クライシス)に近い感じです。台詞回しとか。あとはキャラクターがまだ確立してない時期のものなので、Georgeの演技がちょっと中途半端。Jasonも「手探り」の状態だったんでしょうね。
あと、もう一つ気に入らないのは、Elaineについては、終始「猛烈におなかがすいたのぉ~!」という苛立ちだけで終わらせているところ。脚本の中では、JerryとJasonはそれぞれにレストランへ来るまでの「込み入った事情」を背負っており、一見、何の中身もないナンセンスなやり取りの中で、それぞれの事情が「溶解」していく。これこそ舞台劇の面白さとも共通するところじゃないでしょうか。一方、Elaineの扱いは、彼女の際限なく面白いキャラを考えると、ちょっと勿体ない。最終的には、勿論Kramerも参加させて(ちょっと冒険かもしれないけどネ)、脚本を練り直して、80分ぐらいの面白い不条理劇にできないでしょうか?
そうなれば、私もブロードウェーでのオープニングに駆けつけて、図々しく赤じゅうたんを歩きますよ(…なんて言ってますが、あそこって誰でも歩けるの…!?)
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