先週末公開の映画「ジャージー・ボーイズ」上映館数が143、上映していない地方も数多いという状況で、批評家の評価も観客の評価も高く、口コミでまだまだ人気が続きそうな気配です。このブログのアクセス数も凄いことになっていまして(笑)今になって、過去に書いた「いいかげんな記事」(汗)の書き直しをしています。
ああ、こんな日が来るなんて。
さて…「ジャージー・ボーイズ」は日本では上演されたことのないミュージカルで、出演俳優も舞台出身者が多く、映画俳優としては無名。モデルとなっているフランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズも同時代のビートルズやビーチボーイズなどと比べると、日本ではそんなにメジャーではない。映画の「売り」というのはクリント・イーストウッド監督の作品であるということだけ…。この現状では、配給会社は「クリント・イーストウッド作品である」ということを前面に出して宣伝するのは当然といえば当然。
このあたりは、最近映画化されたミュージカル「レ・ミゼラブル」とは違うところです。「レ・ミゼラブル」、たくさんの人が観られましたが、監督の名前を挙げられる人はどれだけいるでしょう(笑)でも、作品の知名度が高いので、それでよかったわけですね。事実、今回の「ジャージー・ボーイズ」は、イーストウッド監督作品だからという理由でご覧になる方も少なくないでしょうが、それはそれで、良いことだと思います。
私自身、実は、特別に映画が好きなわけではありません。面白そうだと思ったものはどんなに遠くで上映していても見に行きますが、それでも舞台や音楽のほうが好きで、映画はその次です。なので、映画やその周辺的なことについてはそんなに詳しいわけではありません。イーストウッド作品は「ミリオン・ダラー・ベイビー」「Jエドガー」を観ていますが二作品とも、とても好きな作品です。好きな映画は?と尋ねられればこの二つは確実に名前を挙げるでしょう。
「ジャージー・ボーイズ」の話に戻りますが…公開を待ちわびていた映画の絶賛レビューを目にするのはこの上ない喜びであり、興奮でありました…特に、本国アメリカでは冷たい反応だっただけに。
しかし、だんだん腑に落ちなくなってきました…なぜなら、イーストウッドのファンに言わせれば、結局「人間描写にすぐれているのも」「音楽の使い方がうまい」のも「面白い演出」も「セリフが面白い」のも、すべて「さすが、イーストウッドのなせるわざ」とくる。私から見れば「元の舞台がそうなのだから、映画も当然そうなった」のであって…「ちょっと違うんじゃない?」という思いがだんだん膨れ上がって、不快感さえ覚えるようになりました。
この映画はあくまでもミュージカルの映画化で、映画の脚本もミュージカルと同じくマーシャル・ブリックマンとリック・エリスによるものです。また、映画のエンドクレジットには「デス・マカナフ演出による舞台ミュージカルに基づく」とはっきり書かれています。映画の台詞の8割ぐらいは舞台と同じですし、演出の部分でも、明らかに舞台のものを取り入れていると思われるところが数多くあります。あくまでも、イーストウッド監督はそれを基に、スクリーンの上でもっとも映える方法をとってくれたのです。
ステージからスクリーンへ(1)
映画であれ舞台作品であれ、作品にはそれぞれの独立性がありますから、「原作を知らない人は批評すべきでない」とか、そういうことを言いたいわけではありません。しかし、そこまで「監督の腕」を讃えるのであれば、やはり元となった舞台を観たうえで、それに対して監督がどう働いたのか、十分に考察したうえで讃えるのでないと、あんまり説得力ないと思いますが。
例えば「キネマ旬報」の伊藤俊治氏の批評では
「フォー・シーズンズに材をとったジュークボックス・ミュージカルのドキュメンタリータッチの映画化」
とありますが、もともとが「ドキュメンタリータッチの舞台ミュージカル」なのです。映画化に際して「ドキュメンタリータッチ」になったわけではありません。このあたりは、ちょっと調べればわかることです。
また同誌の別の批評では野崎歓氏が
「おそらく演劇版に同様の工夫がすでにあったのかもしれない。だがこの劇中独白形式、映画でこそかくもドキッとさせ、かつ説得力をもつものではないか。」
氏にとっては、映画で見られる独白形式というものが、演劇版にもあったのかも「知れない」という推察の上でしかないにもかかわらず、「映画でこそ説得力を持つ」と言い切っている。こういうのって通用するのか?じゃあ、舞台との比較を具体例で示していただきたい。
…結局は、どちらも、「思い込み」で書いていらっしゃる。そして、何よりも残念なのは、ミュージカルというものをどこか軽く見ているのが見え隠れしている。
まぁ、プロの批評家さんでさえこういう有様なので、一般の方が「映画が素晴らしいのは、全てイーストウッドが素晴らしいから!」と手放しで褒め讃えているのも仕方がないかな、という気がします。私は、一般の方々にまでどうこう言おうとも思っていませんが…
私は今回の映画はとてもよくできていると思っています。「ジャージー・ボーイズ」という舞台ミュージカルは、実は非常に映画化が困難な作品でした。非常にユニークな形態を持つ作品だからです。映画化が決定するまでのゴタゴタ、ご存知の方もいらっしゃるでしょう。ドキュメンタリータッチにするといっても、映画はあくまでも「ジャージー・ボーイズ」でなくてはいけません。「フォー・シーズンズ物語」ではないのです。そして…あくまでも、舞台の映画翻案として完成度の高いものを目指したものが今回の映画だと思います。
舞台ミュージカルの「ジャージー・ボーイズ」のモデルになったフランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズ。この素晴らしい作品の素材となってくれたメンバーへの尊敬の念は、「ジャージー・ボーイズ」ファンとして、私は常に持ち続けています。あの人たちがいなければ、こんな素晴らしいミュージカルは出来ませんでした。
オリジナルへのリスペクト、今あらためてこの意味を考えさせられています。
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