
ジャロッド・スペクターが、役者として、見事な成長を遂げました。
この話を、真っ先に書くつもりが、事故のことが先になってしまって残念でした。大したことがないように願っています。1週間ぐらい休めば、出ることができるようになってほしいです…
だって、今のJBで、ジャロッドの代わりができる人はいませんよ!彼はまだ30歳だし…この役は35歳を過ぎてもできそうだし…まだまだやってほしいです。彼のパフォーマンスを見ながら、何度も何度も「あと何年ぐらいできそうかな~」なんて、計算していました。
ジャロッドのフランキーは、私にとっては、ジョン・ロイド・ヤング、コーリー・グラントに続いて3人目で、この人の歌のうまさは、生で観る前から、公開されている映像を見れば納得!でした…また、ルックスもよく、華もあるし、将来はプロダクションを背負って立つ器であろうということは明らかでした。しかし一方では、前者の2人が役者としても完成度が高かったのに比べると、ジャロッドの「演技力」は、よくわかりませんでした。
でも…どっちにしても、これは「ジュークボックスもの」なんだからして…「歌を取るか」「演技を取るか」という選択に迫られれば、「歌」になるんだろうナ~的に納得していたようなもんでした。
最初にに生で観たのは、2009年の秋になります。そのときは、歌の上手さは、予想以上で感動しましたが、役者としては…まぁ「恥ずかしくないレベル」かな~という印象でした。というか、ここでも書いていましたけど…「この人は、役者の顔をしていない」と思ったんですよね。
特に、この人、役者にとって大事なはずの「目のあたりの表情」が分かりにくい顔立ちなんです~これって、ちょっと致命的じゃないでしょうか…でも、全体的には、甘い雰囲気で、可愛らしいし、アイドル的な人気も備えたエンターティナーになる資質はありそうでした。
だいたい…「演技」って言っても…所詮、ジュークボックス・ミュージカルだし~最初から期待値は低いだろうしね~ま、世間の人はそれほどにも思っていないさ、、なんてね…
ところが!
今回、私はぶっ飛びました!!
あの、目じりが下がり気味の、ちょっと憂いのある顔立ちが、母性本能をくすぐる可愛らしさだけじゃなくて(?…はいはい)…むしろ、フランキーを演じるにあたっては、非常に「プラス」に働いているのです!(「働かせている」というほうが正しいかも)目のあたりの表情が分かりにくいのも、まったく気にならなくなりました。むしろ、観ているものに、そこを「想像」させる余地を与えている演技に進化しているんですよ。
わお、しばらく見ないうちに、こんな凄いことになってたのか!
人というのは、自分自身の苦しみだけじゃなく、他者の苦しみをも背負って、喘ぎながら、それでも真摯に生きようとして、また苦しむ…大げさかもしれませんが、私には、第2幕のジャロッドは、荒野をさまようキリストに見えました…私はクリスチャンではありませんが、おそらくクリスチャンの人であれば、なおさらそういう印象を持たれるかもしれませ。まさに、神がかっていました。
とにかく、JERSEY BOYSの脚本は、非常によくできているんです。そして、今、ジャロッドが、最高級のパフォーマンスで、それを証明していますよ!
私は、「フランキー×トミー」は「力をめぐる闘い」であり(しかし、アンディー・カールのトミーには文句があります!…あとで、じっくり書く!)「フランキー×ボブ」は「才能をめぐる闘い」であり、「フランキー×ニック」は「ことばをめぐる闘い」なんだろうと思っています。そのあたりの解釈が、ジャロッドの中でも、きちっと確立してきているようです。(まぁ、私のと100パーセント同じではないだろうけど…笑)あとは、年数を重ねるうちに、技術もついてきたのでしょう。もともと器用なんでしょうね~これに依るところも大きい。
例えば、ジップのアジトで、ニックがトミーとの10年の確執をぶちまけるとき、最初は、フランキーは、呆気にとられてニックを見ます。単純に「(普段から、あまり本心を語らないのに)今日のニック、どーしたの?」と驚いてるような表情を見せます。でも、そのニック君、次第に「トミーのタオルの使い方が悪いし、それに、下着を着替えない」という、本当に意味があるんだか、ないんだか…「よくわからないようなトミーへの不満」を口にし始めます。フランキーは、最初は「?」な表情をしながらも、次第に、これらの言葉の裏に隠された、ニックの本当の思いを理解しようとする表情になっていきます。このときのジャロッドの表情が、ニックの本当の気持ちになんとか寄り添おうと、自分自身と格闘しているかのような表情に移り変わっていきます。
ニックは、何ごとも、「シンボル」で表現するようなところがあります。それは、第一幕のシーンでも見られるとおり。そして、ニックが「グループを抜けたい」と口走ったとき、フランキーは、ニックの「代弁」をしようとするんですよね。これも、それなりのフランキーの成長であるんです。「そうか、君は休暇が取りたいんだろう。ツアーが終わったら、休暇を取るといいよ」と。つまり、このときのフランキーには、ニックは「疲れて休みたいだけ」のことを、「グループを抜ける」だの何だのと、大げさに言っているだけだと踏んだんでしょう。当時のフォー・フォーシーズンズはギャラも高く、メンバーは、金銭的に潤っていました。ニックの最後の独白にもあるように、ここで「辞める」なんて「あり得ない」はずなのです。しかし、ニックの気持ちは固く、フランキーは思いとどまらせることができませんでした。ここでの、フランキーの、絶望感の大部分は、自分に対するものだったのですね…ジャロッドの演技は、そこを強く打ち出しています。
ニックは、グループを去るとき、辞める理由として「ツアーのときの、ホテルのケチくさい石鹸が嫌だとか…」またまた意味不明なことばを残して去っていきます…やがて、フランキーは、悲しみや苦しみの連続の中で、それらが意味していたものがわかるようになります。「僕は、あのときニックが言っていたことが分かるようになった」という、ここの独白も説得力があります。
また、トミーとの関係で「おやっ?」と思ったのは、恋人のロレインに「あなたはトミーに利用されてるだけよ!」と言われて「トミーだって、好きであんなことをやったんじゃないんだ!」と激高するシーン…ここは、いろいろ解釈が分かれると思いますが、ジャロッドは、反射的に、この言葉を吐いた後…「あっ、ぼ…僕は今何て言った?」と、ハッと我に返って、うろたえる表情を加えていました。(これは、USのテイラーは、やらなかった)
男同士というのは、利害とかに関係なく、むしろ、明らかに理不尽な目にあわされている相手であっても、力強いエネルギーに満ち溢れている…つまり「雄」としての魅力があるものに、理屈抜きで吸い寄せられていくところがあると思います。フランキーとトミーの関係も、そういうものだと私は思っていますが、そういう、女性にはとうてい理解できない、「雄の行動の特徴(?!)」も、しっかりと演じられていました。(しかし、繰り返すけど、アンディー・カールにには文句がある)
また、グループの中では、知的で、家庭環境も「まあまあ」だったボブは、「勝ち組」みたいなもんでしたが、才能あふれるボブにも、それ相当の苦しみがあることを知るシーンも非常に繊細に演じていました。それが理解できたからこそ、名曲「君の瞳に恋してる」は生まれたのでしょうし、ボブが、ホーンセクションをフランキーにプレゼントして去っていくシーン…ここは「この曲は、もう君のものだ」と言ってるんですよ~ここで、ボブの「裏方に徹したい」という思いも達成されたわけです。このふたりのキャッチボールも素晴らしい!
ステージ・ドアで、私はジャロッドに「あなたはどこまで凄くなるの?」と言うと、「またまた~、やめてよ」と照れながらコロコロ笑っていましたが、まんざらでもない表情でした。きっと、自分でも意識しているんでしょうね。そう思います。
JERSEY BOYSは本当に面白いです。
これは、まぎれもなく、ジュークボックス・ミュージカルです。確かに、演じる人によっては、いわゆる「単なるジュークボックス・ミュージカル」で終わるでしょう(それは認める)しかし、演じる人によっては、まったく違ってくるともいえます。ジャロッド・スペクターは、とてつもなく高いところを極めようとしています。少なくとも、本人には、頂点は見えてきているのだと思います。
最後に…ジャロッドは私を見るなり「しばらく日本へ帰っていたんだね?」と言うので、「えっ?」という表情をすると、「だって、ここが家みたいもんでしょ?」と笑ってました。
あ~~~,そーいうことね(ははは)すぐに反応できなかった自分が情けない(汗
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Elaine's

yukitsuri
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