JERSEY BOYS: Chasing the Music, Trying to Get Home
2008-04-04
チラッと耳にしたのですが、あの山下T郎氏とヨメさんが、おそらくJERSEY BOYSを観るのが主な目的で、10年ぶりにNYを訪れ、大絶賛していたらしい~
JERSEY BOYSはフランキー・ヴァリのこんな台詞で終わります。
「君たちの人生で最高だった瞬間は?」と人に訊かれることがある。
Sherryの大ヒット、殿堂入り…いろいろあったけれど、最高だった瞬間は、自分たちのサウンドを作り出せたときだった。あのときが最高だった。あのときの僕たちには音楽しか残っていなかったんだ。そして、今もこの世界にいて、バッテリー仕掛けのウサギの人形みたいに、跳ねるのを止めることなく歌い続けている。音楽を追い続け、故郷を求め続けながら。
考えてみれば、「大スター」というのは、本当に全盛期だった期間というのは案外短かったりするものなのですよね。そして、一旦栄光を手にしたとしても、それを守り抜く苦労の方が大きかったり、私生活では「人並みの幸福」とは縁がなかったり…
Four Seasonsのメンバーたちも例外ではありませんでした。そんな様々な人生のエピソードがfour seasons(季節の変遷)になぞらえられて語られていきます。それぞれのエピソードは違ったメンバーがナレーターを務め、巧みな音楽・視覚効果のもとで、普遍の人生物語のように思えてきます。
特に、メンバーとしては地味な存在だったNick Massi(ニック・マッシ)のキャラクターが、何でもないような「小さな幸せ」が人生の中でどれほど大きな意味を持つのか、彼の言葉で伝えてくれます。彼は「身の丈を知る」ことの大切さを話すのです…これって、典型的なアメリカのヒーローだったら絶対に口にしないようなこと…。
フランキーは、ニックが抜けた後「彼はクインシー・ジョーンズのようになれる腕を持っていた。…でも、しくじる人間もいる」と話します。ニックは最後に「どんな夢があっても、4人の仲間がいて、その中での自分の立場がリンゴ(スター)だと気づいた時点で、自分の子どもと過ごす人生を選んだほうがいいんだ」とも語ります。
【追記】この後、シカゴでマイケル・インガーソルの素晴らしいニックの演技にふれ、この役の解釈が少し変わります。
JERSEY BOYSでは、フランキーやボブの溢れんばかりの才能も、トミーの強烈な個性も余すことなく描かれていますが、このニックの描写が「物語」としてのバランスを取っているようです。これが「舞台劇」としての成功をもたらしたのではないでしょうか…そんな気がしますね。
俳優たちはありのままのFour Seasonsのメンバーを忠実に演じてはいるけれど、それは「真似」ではなくて(いや、初めは「真似」に見えるかもしれないけれど)次第に「象徴」になっていくのです。少なくとも、観ているうちに、一つひとつのキャラクターが巧みに「象徴化」されていく快感を味わいながらショーに没頭することができますね。
「夢」「不和」「成功」「挫折」「別れ」「思い出」…それらが自分の人生と重なってくることが、会場をベビーブーマー世代で満杯にするのだと思います。小さな幸せを得た喜び、別れの辛さ、実現できなかった夢を想う気持ち、そんな一つひとつに心を寄せることができるからこそでしょう。
フランキーが娘の不幸の知らせを受けるシーンでは、何人もの人が「貰い泣き」をしていました。
しかし何と言っても、このショーの成功は、彼らの音楽の素晴らしさがあって成立しているというのは言うまでもありません。彼らの曲が後年、様々な人の手でリバイバルヒットしたという事実がそれを裏付けています。また、最近になって、フランキー・ヴァリは新たなアルバムもリリースし、まだまだ現役の実力を見せています。
また、彼らの育った環境というのが(現実としては大変だと思いますが)非常にドラマティックで、こういう素材としては面白いものであったこと。そんな中で生まれた独特の世界観を表すようなBig Girls Don't CryやWalk Like a Manという曲も、その歌詞の世界は何を意味しているのか、ステージ上でも解釈が繰り広げられるのも面白い。
ちなみにこれらの曲の当時の邦題は
Big Girls Don't Cry「恋のやせがまん」
Walk Like a Man 「恋のハリキリ・ボーイ」
これを考えた人、今も御存命なら一度お目にかかりたい…素晴らしい邦題ですよ。
また、我々の世代にとって嬉しいのは、4人が揃いのスーツを着て、独特の振りをつけて歌うスタイルは、どうしてもグループサウンズを思い出してしまって(笑)「ええっ、ああいう振り、テンプターズとかオックスとかやってたよ!」とか(ハハハ)「な~んだ、ルーツはここにあったのね」なんて発見も楽しいのです。
音楽しかなかった若者たちが、栄光を手にし、いつまでも内なる故郷を追い求めるように、自分の音楽を求め続けていくこと、それが彼らの「人生」そのものであること。そして、それは「私たちの人生」でもある…そんなテーマが、最高の技術とスタッフの愛情をもって演じられているところがJERSEY BOYSの魅力ですね。
私個人としては、ライブで歌うよりはソングライターのイメージが強い人にはあんまり魅力は感じませんし、「内なる故郷を求める」どころか、夢を求めて大都会に出てきて家賃払わない若者にも「…」ですしね(まだ言ってるよ…笑…もう、終わるだろうが~)
JERSEY BOYSはとりあえず、世界中のカンパニーの追っかけをしてもいいかな…と。
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