御家族様にしかできない介護ももちろんございますが、我々、介護事業者がお役に立てる場面もたくさんございます。
追い詰めたりするようなことなく、何なりとご相談いただけると幸いです。
今の時代は選択肢もたくさんございますし、頼れるところは頼ったほうが良いと思います。
~西日本新聞より記事抜粋です~
後ろ髪を引かれる思いを断ち切った。佐賀県内の40代女性は昨春、大手アパレルメーカーの正社員の仕事を辞めた。
「赤の他人の嫁よりあんたがいい」。2年前に父が病死して以来、介助がな
いと歩けなくなった母(78)に、同居を懇願されたからだ。
高校卒業後、衣料品販売に携わってきた。仕事が面白く、気付けば独身。キャリアを重ねた4年前、契約社員として働いていたアパレルメーカーで正社員に抜てきされる。「ここまで来た」。勝ち取った「正社員の座」だったが、フルタイムで残業は深夜まで及ぶ。母と同居するなら、この仕事は続けられない、と悟った。
《総務省によると、2007~12年の5年間に親の介護や看護で離職したのは約48万7千人。このうち女性は約38万9千人で8割を占める》
近くに住む兄2人には「女が介護するのが当たり前。独身ならなおさら」と言われた。この1年近く、「介護との両立」を目指し、派遣社員として衣料品店で働いてきた。しかし、求められる勤務日数は増え続け、最近は月20日近くにもなる。仕事、家事、介護。体がきしむ。「フルタイムじゃないと生活を維持できないけれど、それだと体がもたない」
晩婚化、非婚化が進む中、増え続ける「シングル介護」。高齢の親を独力で支えようと頑張れば頑張るほど、自分の仕事が不安定になり、苦しむ。
「天神(福岡市)でウインドーショッピングするのが息抜きです」。福岡県久留米市の独身男性(55)は力なく笑った。
宝石販売会社で働いていた。16年前に父が亡くなった後は母(85)と2人暮らし。76歳までホテルの厨房(ちゅうぼう)に立つほどの働き者だった。仕事を辞めてほどなく、物忘れが頻繁になり、徘徊(はいかい)するようになった。
男性は介護のため退職した。週2~3回、保険の電話勧誘のアルバイトを始めたが、1日に2回警察の保護を受けた7年前、「もう無理だ」と仕事を辞めた。
月約15万円。父の遺族年金と母の年金で生活する。一日中母につきっきり。週2回のデイサービス、月1回のショートステイのときだけが自分の時間だ。妹は「私には家族がいるから…」と介護に関わらない。
「このままでは共倒れ。働きながら母をみとりたいが」
介護の仕事をしたいが、どこから手を付ければいいのか。
久留米市の男性(57)は7年前に建設会社を辞めて以来、再就職先が見つからない。認知症の父(96)と2人暮らし。父がデイサービスから帰ってくる午後3時ごろには家にいなければならず、月2万円の新聞配達のアルバイトでしのぐ。
《育児・介護休業法では、対象家族が要介護状態になるたびに介護休業が取得でき、家族1人につき最大93日間取れる。しかし厚生労働省の調査によると、13年度に介護休業を取得した人がいた事業所は1・4%にすぎない》
「ほかに介護休業を取っている人なんかいなかったし、認知症じゃ93日間休んだところでどうにもならんでしょ」。父の年金約10万円と新聞配達、独身で蓄えた貯金を取り崩しながら生計を立てる。父は要介護5。「施設には入れたくない。自分が面倒をみられる間は、自分がみたい」。この暮らしがいつまで続くかは、分からない。
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今や就業者の40%に迫る非正規労働者。賃金が低い、雇用が不安定など、さまざまな課題の直撃を受けやすいのが、生計も人生も1人で背負う「おひとり非正規」ではないだろうか。彼らの不安を通して、非正規労働の問題を考えたい。