「社会福祉士」の独り言Ⅱ-日々の雑感

福祉に関わる事柄の他、日々感じたことを書き綴っていきます。

『君を守りたい-いじめゼロを実現した公立中学校の秘密』中嶋博行著 朝日新聞社 2006.9

2017-06-08 23:06:16 | 読書
弁護士である著者は、「いじめ」とはまさに「学校犯罪」だという認識を持つことの必要を説く。本書の前半で紹介される事例は、日本弁護士連合会の出版物などで、公になったもの。「なかまはずれ」から、芸能ショーいじめ、ばい菌いじめ、シャモリンチ、十字架・死刑いじめ、電気椅子いじめ・サンドバックリンチ、性的いじめ、汚物いじめ、死に至るいじめ。こうしたいじめの手口を読むと、私の認識不足だったのか、いかにこの20年間続けられてきたのか暗澹とした思いとなった。もはや、いじめの社会的背景とか、加害者側の心の問題とか、そのような議論ではなく、被害生徒を一刻も早く、救い出し、いじめを止めさせる即効薬が必要。どんないじめでも、最初に言い出す中心的ないじめっ子がいる。その「主犯」をピンポイントでたたけば、いじめグループはたちまち全滅する。そのためには、ためらうことなく断固たる少年司法(刑事司法)で裁く必要があるという。アメリカの学校で実証された「力の論理」の適応を真剣に考えるべき。その「力」とは、いじめに対する徹底した監視 警察への通報も含めた断固たる処分、それにより、学校に正義のルールを実現することを説く。
『君を守りたい』という書名は、実は「君を守り隊」のことである。「君を守り隊」は、生徒自身が、自分の判断で、保護者の同意の元、入隊する。学年ごとに昼休みに校内をパトロールする。いじめの情報がないか調べる。いじめは絶対許してはいけないという呼びかけをする広報が活動の三本柱。スタートして10年。何か、生徒全体が監視というイメージがあるが、いじめのどんな小さい芽(例:物を隠す、挨拶をしなくなる・・)でも見過ごさず、報告を受けた場合、教師が速やかに対応するという姿勢が貫かれているということだと読み取った。ここでは、著者が前半で主張している処罰という手段はとらない。あくまでも、人間教育の立場で対応している。これに習いながら、第三者でもいい、ともかくどの学校でもいじめ情報の収集と、校内パトロールは出来るはずだと著者は提言する。

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