評価5
再読(前回2018年11月30日)。
犯罪加害者側の姿を描いた長編。
早くに両親を亡くした剛志、直貴兄弟は兄が働きながら弟の面倒をみてきたが、直貴の大学進学資金欲しさに剛志が強盗殺人事件を犯してしまい懲役刑に服してしまう。残された直貴は大学進学をあきらめてアルバイトを始めるが凶悪犯の弟だということが発覚して辞めさせられてしまう。この件を契機に、直貴の人生には兄の経歴がつきまとうこととなり、メジャーデビュー寸前のバンドを退団、良家の女性との恋愛も消滅、なんとか就職した会社でも理不尽な異動をさせられるなど世間の差別に翻弄される生き方を余儀なくされるのだった。
それでも、弟の境遇を知らない「塀の中の」兄からの手紙は毎月届けられて、この手紙が直貴のやるせない気持ちを一掃苛立たせることになって行く。
直貴の現状を知らずに送られる手紙の呑気な内容と悲惨な直貴の姿が状況設定が変っても延々と静かに続くことがなんともいえず物悲しい。途中、出て来る直貴の勤務先の社長が解決策を差し伸べてくれるのか?と期待したもののそこまでの進展はなく、結局は直貴自身が決着をつけることになるのだが、モヤモヤ感はぬぐい去ることができなかった・・・
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