翌朝、少し遅めの朝食をゆっくりいただき、名残を惜しんだ。
赤いプラリネ入りのブリオッシュ、元々はリヨン名物で以前はリヨン以外で見かけることは少なかったが、今回は、マントンのパン屋でも、ここパリでも食卓に上がった。
もちろん、私たちとしては、できるだけ早く、マルチーヌの家に戻り、帰国に備えて、スーツケースなどの準備をする必要もあったし、最終の買い物もしたかった。
が、そう言うわけにはいかない。
二泊したおかげで子供たちとかなり打ち解けてきたし、特に妹のエンマとは初めての対面だったが、笑顔がいっぱいの仲良しになれた。お別れだが子供たちは感傷的にはならず助かった。
聞けば、ご主人のガブリエルは、この秋、仕事で東京への来日予定があるそうだ。
もし時間が許せば、ぜひ関西へと話した。
そして、彼らのおもてなしにお礼を言い、別れを告げ、出発した。
マルチーヌの家に戻った。
マルチーヌは田舎(実家)へ帰っていて、パリの家にはいないが、鍵は貸してくれている。
私たちが退去するときはドアは自動ロックがかかるから、鍵は机の上に置いて帰ればいい。彼女は合鍵をもっているから大丈夫という段取りだ。
マルチーヌからの置手紙があった。
「マレ地区での生活体験を楽しんでくれるよう願っています」と。
ソフィー宅に二泊したことで、彼女のこの気持ちに十分に答えられなかったことが少し悔やまれる温かいメッセージだった。