水を育む森林のはなし - 林野庁
樹木は光合成によって、二酸化炭素(CO2)を吸収し、酸素と炭素を作り出しています。 酸素は放出し、炭素は取り込み蓄えることで、生長していきます。 森林はこういった形で、温暖化の主な原因である二酸化炭素(CO2)を減らし、大気に放たず固定するという役割を担っています。
森林伐採と地球温暖化の関係、その対策とは - アピステ
植林による温暖化対策
!本稿に記載の内容は2010年9月時点での情報です
成長中の樹木は二酸化炭素を吸収してくれるそうですが、木はいずれ枯れて朽ち果てるもので、そうなれば二酸化炭素を吐き出すことになって、しょせん、植林などは温暖化対策としては一時しのぎではないですか。
山形与志樹地球環境研究センター 主席研究員
確かに植林された樹木は、やがて伐採されるか、寿命がきて枯れる運命にありますので、森林における炭素の蓄積量は減少します。しかし、土壌中に蓄えられた炭素は着実に増え続けてゆきます。植林後の長期的な炭素ストックの平均値に着目すると、植林前の土地にあった炭素の蓄積量と比べて増大しています。すなわち、植林による温暖化対策の効果は、短い間で増えたり減ったりする炭素量ではなく、長期的に見たときに森林全体に蓄えられる炭素蓄積の平均値を増大させる効果で評価することができます。
植林は土壌を含めた森林全体の炭素蓄積を増大させる
英オックスフォード大学は、2006年に注目された言葉を対象とする「ワード・オブ・ザ・イヤー」に、企業が排出する温室効果ガスを植林事業などにより相殺し、温室効果ガスの排出をゼロにする考え方を示す「カーボン・ニュートラル」を選びました。しかし、植林された木は、いつかは伐採されるか枯れてしまいます。それでも植林が温暖化対策になる理由はどのように考えればよいのでしょうか。
この効果について考える鍵は、植林地において植林活動の前後でどのように状態が変化するかを比較することにあります。図1は、放棄された農地等の荒地に対して植林を実施した場合について、樹木の生長や伐採に伴う森林生態系(植林地の地上部と、根や土壌中を含む地下部全体)における炭素の蓄積の変化の様子を、これまでの研究知見に基づいて模式的に表したものです。
森林生態系は、樹木の生長に伴い二酸化炭素(CO2)を吸収します。一方、枯れ葉、枯れ枝、枯死木のすべてが、すぐに分解されて大気中にCO2として還るわけではなく、炭素を含んだ土壌有機物として土壌に蓄積し、少しずつ分解してCO2を放出してゆきます。図1は、植生と土壌に蓄積される炭素が、植林と伐採(あるいは枯死)のサイクルの中で、長期的にどう変化するかを示しています。森林の生長速度は気候によって異なりますが、この図では、数十から数百年の間に発生する変化が示されています。この図を見ると、確かに伐採によって、森林における炭素の蓄積量は一時的に減少しますが、土壌中に蓄えられた炭素は着実に増え続けていることがわかります。すなわち、植林後の森林では、伐採と再生のサイクルの中で、全体の炭素の蓄積は徐々に増大してゆきます。そして世界平均では、森林土壌中には植生中の炭素量の4倍もの炭素蓄積があることが知られています。
さらに森林が成熟してゆくと、最終的には木の成長分と土壌における有機物の分解が平衡状態になり、森林生態系としての炭素蓄積の増大はストップします。植林後の長期的な炭素ストックの平均値に着目すると、植林前の土地にあった炭素の蓄積量と比べて増大することがわかります。すなわち、植林による温暖化対策の効果は、短い間で増えたり減ったりする炭素量ではなく、長期的に見たときに森林全体に蓄えられる炭素蓄積の平均値を増大させる効果で評価することができます。
京都議定書で認められた温暖化対策としての植林事業
植林活動が可能な土地は、残念ながら日本では限られていますが、世界的に見ると、特に途上国において、過去の森林破壊によって放置されている荒地がたくさんあります。このような土地に植林活動を実施することが、京都議定書において、クリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism: CDM)という途上国における温暖化対策として認められました。植林は温暖化対策として有効なだけではなく、荒廃した環境を回復し、生物多様性や水の保全、さらには持続可能な発展に貢献することができます。これらの副次的な便益も考えると、植林は “潤いのある” 温暖化対策ということができるでしょう。しかし、植林対策により国連からCDMとしての認証を得るためには、植林に伴う追加的な炭素吸収量の算定や、地域に与える影響評価などの困難な課題があり、実際に実施されているCDMとして認められた植林活動は極めて限られているのが現状です。
さらにくわしく知りたい人のために
- 山形与志樹 (2006) 陸域生態系の炭素吸収源機能評価—京都議定書の第2約束期間以降における検討にむけて—. http://www.cger.nies.go.jp/publications/report/d039/all_D039.pdf
- 小林紀之 (2008) 温暖化と森林 地球益を守る. 日本林業調査会.
- 2007-01-31 地球環境研究センターニュース2007年1月号に掲載
- 2010-09-28 内容を一部更新
untitled (affrc.go.jp)森林が河川流量に及ぼす影響を明らかにする(目的)
新丸山ダム建設促進期成同盟会 - 美濃加茂市公式ホームページ (minokamo.lg.jp)
豊川水系総合開発促進期成同盟会 ~山からつながる・水でつながる~/豊橋市 当会は設楽ダム建設を目的にしていません
豊川水系総合開発促進期成同盟会 ~山からつながる・水でつながる~/豊橋市 (toyohashi.lg.jp)
本会は豊川水系における総合開発事業等の促進を図ることを目的とし、関係方面への促進要望、総合開発に関する調査研究、水源地域開発に対する協力などの活動をしています。
構成団体
団体 |
豊橋市/豊川市/蒲郡市/新城市/田原市/豊橋商工会議所/豊川商工会議所/蒲郡商工会議所/新城市商工会/田原市商工会/音羽商工会/一宮商工会/小坂井商工会/御津町商工会/渥美商工会/豊橋農業協同組合/ひまわり農業協同組合/蒲郡市農業協同組合/愛知東農業協同組合/愛知みなみ農業協同組合/豊川用水二期事業促進協議会/愛知県豊川改修工事促進期成同盟会/豊川改修期成同盟会(豊橋)/豊川改修期成同盟会(豊川)/豊川改修期成同盟会(新城) |
事務局 |
豊橋市企画部政策企画課 所在地/〒440-8501 豊橋市今橋町1番地 TEL.0532-51-3153 FAX.0532-56-5091 e-mail.seisakukikaku@city.toyohashi.lg.jp |
豊川の明日を考える流域委員会 【設楽ダム建設を決めた賛成意見】
|
|
平成13年10 月 5日 国土交通省中部地方整備局長
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
平成13年10月 5日 愛知県知事 豊川の明日を考える流域委員会
委員長 藤田 佳久 豊川水系河川整備計画原案(大臣管理区間)について(意見) 豊川の明日を考える流域委員会(別添の委員)は、「豊川水系の今後の河川整備を進めていくにあたって、河川整備等の現状と将来像について助言し、河川整備計画の原案について意見を述べる」ことを目的として平成10年12月8日、建設省中部地方建設局長(現国土交通 省中部地方整備局長)及び愛知県知事からの委嘱を受けて設置された。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(別紙)
豊川における過去の洪水被害の発生状況や渇水の発生状況並びに、流域及び河川環境の現状などを踏まえ、本流域委員会としては、中部地方整備局から示された豊川水系河川整備計画原案(大臣管理区間)に対し、基本的内容については同意するとともに併せて下記意見をとりまとめたので、この意見を極力尊重した豊川水系河川整備計画を早期に作成されたい。
なお、議論の過程で、水需要予測や環境面から、ダム建設への疑念が一部の委員から表明されたことを付記する。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(別添)
豊川の明日を考える流域委員会委員
|
豊川の明日を考える流域委員会 市民参加型ではなく学識経験者等の意見を聞 くための会
|
||
■ 設置要領 |
■ 議事概要 |
■ 委員会資料 |
■ 中間報告書 |
■ 提言 |
■ 意見 |
※ 豊川の明日を考える流域委員会における当方の考え 第28回豊川の明日を考える流域委員会 「東日新聞記事(H19.2.16)」における当方の考え |
「豊川の明日を考える流域委員会」とは?
建設省中部地方建設局(現 国土交通省中部地方整備局)および愛知県は、平成9年の河川法改正を踏まえ、河川整備計画の原案について学識経験者等の意見を聞 くために、平成10年12月に「豊川の明日を考える流域委員会」を設置しました。当事務所は委員会の事務局であり、ホームページには委員会の設置要領のほか、今までに開催された委員会の議事概要や資料を掲載していきます。資料をご覧になりたい方は、当事務所、同豊川出張所、同一宮出張所、国土交通省設楽ダム工事事務所にて閲覧できます。 |
豊川流域治水協議会 設楽ダムを建設すると決めた会
|
|
|
豊川の水災害に備えて、流域治水を推進
~日本の東西をつなぐ「交通の要衝」を水害から守る治水対策~ |
気候変動による水災害リスクの増大に備えるため、河川・下水道管理者等が行う治水対策に加え、あらゆる関係者が協働して、流域全体で水害を軽減させる「流域治水」へ転換し、ハード・ソフト一体の事前防災対策を加速していく必要があります。 豊川流域治水協議会は、近年頻発している激甚な水害や気候変動による今後の降雨量の増大と水害の激甚化・頻発化に備え、集水域から氾濫域にわたる流域全体のあらゆる関係者が協働して、流域全体で水害を軽減させる治水対策、「流域治水」を計画的に推進するためのものです。 |
○令和6年3月27日 公表 ・豊川流域治水プロジェクト2.0(3.63MB) |
ダム中止へ向けての手続き
嶋津暉之(八ッ場あしたの会運営委員)
1.治水について
八ッ場ダムなしの利根川水系河川整備計画の策定
河川整備計画は今後30年間に行う河川整備の内容を定めるもので、新規のダムをつくる場合は治水面でのダムの上位計画となる。利根川水系では河川整備計画の策定作業が2006年末から始まり、現在は中断されているが、その策定において八ッ場ダムを必要としない治水計画にする必要がある。
なお、河川整備計画は地方整備局長が知事および学識経験者の意見を聞き、住民の意見を反映させて策定する。知事の意見は議会の議決を必要としない。
2.利水について
(1)利根川・荒川水系フルプランの変更
利根川および荒川水系水資源開発基本計画(フルプラン)は利水面でのダム事業の上位計画であるので、このフルプランを変更して八ッ場ダムを削除する。
なお、フルプランの変更は知事と国土審議会の意見を聞いた上で行う。知事の意見は議会の議決を要しない。
(2)暫定水利権についての措置
今まで中止されたダムの暫定水利権はダム中止後も利用継続が認められているので、当面はそのままの利用継続で支障がないが、将来的には水利権許可制度の抜本的な改善によって安定水利権に変える必要がある。
安定水利権にするためには、既存利水者、既水源開発事業の利水者との調整が必要であって、暫定水利権の使用者に一定の費用を負担させて、水利権の再配分を行う新たな仕組みをつくらなければならない。
3.政策評価法による中止の手続き
大規模な公共事業の中止は、政策評価法(行政機関が行う政策の評価に関する法律)により、第三者機関の意見をきくことが求められているので、八ッ場ダムの場合も、関東地方整備局が事業評価監視委員会の了承を得て、中止を判断する手続きが必要である。
4.特定多目的ダム法による中止の決定
特定多目的ダム法により、八ッ場ダム建設事業の基本計画の廃止の手続きを行う。
国土交通大臣は、関係行政機関の長に協議し、関係都県知事及びダム使用権の設定予定者の意見をきいた上で、基本計画の廃止を決定する。関係都県知事は、各都県の議会の議決を経て意見を述べる。
5.ダム中止後の生活再建・地域再生法の制定
次の4点を実現できる「ダム中止後の生活再建・地域再生法」を早急に制定する。
(1)生活補償
(2)家屋等の建て替えへの補償、休業補償など、現地再建の支援措置
(3)水没予定地における国有地の分譲(移転の続出で過疎化が進行)
(4)基幹産業再生支援による地域基盤の再構築
6.八ッ場ダムの関連事業の精査
八ッ場ダムの関連事業を精査して、ダム中止後に不要となる関連事業、中止後の生活再建・地域再生に支障となる事業を中止し、真に必要な事業のみを継続する。
7.八ッ場ダム中止後の水源地域整備事業・水源地域基金事業の措置
(1)水源地域整備事業
水源地域整備事業(水源地域対策特別措置法)は国と下流都県がそれぞれ事業費のほぼ半分を負担して、水道・下水道・町道・学校等の施設整備、土地改良、付替道路の補完などが行われてきている。ダムが中止されると、政令で水特法による指定が廃止されるので、残った事業の扱いとその費用負担の問題が残される。平成22年度以降の残事業費は約413億円である。
(2)水源地域基金事業
水源地域基金事業((財)利根川・荒川水源対策基金)は下流都県の負担で生活再建・地域振興のソフトハード面の支援が行われてきている。これは協定による負担であるから、ダム中止後の扱いは都県間の話し合いによることになる。全体事業費は未確定であるが、平成21年度の群馬県案178億円の場合は、平成22年度以降の残事業費は約125億円である。
8.八ッ場ダム中止に伴う既負担金の処理
特ダム法に基づき、利水予定者が負担してきた利水負担金のうち、厚生労働省と経済産業省からの国庫補助金を除く約890億円(平成20年度まで)を利水予定者に返還する(国交大臣が返還を表明)。
関係都県が負担してきた治水負担金は河川法に基づく直轄負担金であって、返還の根拠規定はまったくないので、返還の必要はない。
なお、埼玉県水道や群馬県水道などの暫定水利権使用者については上記の利水返還金を 2.(2) で述べた安定水利権化に伴う費用負担の原資に使うことも考えられる。
発電所の温排水拡散評価技術 - 海洋生物環境研究所
原発温廃水が海を壊す | 時事オピニオン | 情報・知識&オピニオン imidas - イミダス
原発温廃水が海を壊す
蒸気機関としての宿命
地球は46億年前に誕生したといわれる。その地球に人類が誕生したのは約400万年前。地球の歴史を1年に縮めて考えれば、人類の誕生は大みそかの夕方になってからにすぎない。その人類も当初は自然に寄り添うように生活していたが、18世紀最後の産業革命を機に、地球環境との関係が激変した。それまでは家畜や奴隷を使ってぜいたくをしてきた一部の人間が、蒸気機関の発明によって機械を動かせるようになった。以降、大量のエネルギーを使うようになり、産業革命以降の200年で人類が使ったエネルギーは、人類が全歴史で使ったエネルギー総量の6割を超える。その結果、地球の生命環境が破壊され、多数の生物が絶滅に追いやられるようになった。その期間を、地球の歴史を1年に縮めた尺度に合わせれば、大みそかの夜11時59分59秒からわずか1秒でのことである。今日利用されている火力発電も原子力発電も、発生させた蒸気でタービンを回す蒸気機関で、基本的に200年前の産業革命のときに誕生した技術である。その理想的な熱効率は、次の式で表される。
理想的な熱機関の効率=1-(低温熱源の温度÷高温熱源の温度)
(※それぞれの温度には「K(ケルビン)」の単位で表す絶対温度を用い、「℃」で表す摂氏温度の数字に「273」を加え、たとえば0℃=273K、100℃=373Kとなる)
だが、現実の装置ではロスも生じるため、この式で示されるような理想的な熱効率を達成することはできない。火力発電や原子力発電の場合、「低温熱源」は冷却水で、日本では海水を使っているので、その温度は地域差や季節差を考慮しても300K(27℃)程度であり、一方の「高温熱源」は炉で熱せられ、タービンに送られる蒸気である。そのため、火力発電と原子力発電の熱効率は、基本的にそれらが発生しうる蒸気の温度で決まり、その温度が高いほど、熱効率も上がることになる。現在稼働している原子力発電では、燃料の健全性を維持するため冷却水の温度を高くすることができず、タービンの入り口での蒸気の温度はせいぜい550K(約280℃)で、実際の熱効率は0.33、すなわち33%しかない。つまり、利用したエネルギーの2倍となる67%のエネルギーを無駄に捨てる以外にない。
想像を絶する膨大さ
この無駄に捨てるエネルギーは、想像を絶するほど膨大である。たとえば、100万kWと呼ばれる原子力発電所の場合、約200万kW分のエネルギーを海に捨てることになり、このエネルギーは1秒間に70tの海水の温度を7℃上昇させる。日本には、1秒間に70tの流量を超える川は30筋もない。原子力発電所を作るということは、その敷地に忽然として「温かい大河」を出現させることになる。7℃の温度上昇がいかに破滅的かは、入浴時の湯の温度を考えれば分かる。ふだん入っている風呂の温度を7℃上げてしまえば、普通の人なら入れないはずである。しかし、海には海の生態系があって、その場所に適したたくさんの生物が生きている。その生物たちからみれば、海は生活の場であり、その温度が7℃も上がってしまえば、その場では生きられない。逃げることのできない植物や底生生物は死滅し、逃げることができる魚類は温廃水の影響範囲の外に逃げることになる。人間から見れば、近海は海産資源の宝庫であるが、漁業の形態も変える以外にない。
途方もない環境破壊源
雨は地球の生態系を持続させるうえで決定的に重要なもので、日本はその恵みを受けている貴重な国の一つである。日本には毎年6500億tの雨が降り、それによって豊かな森林が育ち、長期にわたる稲作も持続的に可能になってきた。雨のうち一部は蒸発し、一部は地下水となるため、日本の河川の総流量は年間約4000億tである。一方、現在日本には54基、電気出力で約4900万kWの原子力発電所があり、それが流す温廃水の総量は年間1000億tに達する。日本近海の海水温の上昇は世界平均に比べて高く、特に日本海の温度上昇は著しい。原発の温廃水は、日本のすべての川の水の温度を約2℃温かくすることに匹敵し、これで温暖化しなければ、その方がおかしい。そのうえ、温められた海水からは、溶け込んでいた二酸化炭素(CO2)が大量に放出される。もし、二酸化炭素が地球温暖化の原因だとするなら、その効果も無視できない。もちろん、日本には原子力発電所を上回る火力発電所が稼働していて、それらも冷却水として海水を使っている。しかし、最近の火力発電所では770K(約500℃)を超える高温の蒸気を利用できるようになり、熱効率は50%を超えている。つまり、100万kWの火力発電所の場合、無駄に捨てるエネルギーは100万kW以下で済む。もし、原子力発電から火力発電に転換することができれば、それだけで海に捨てる熱を半分以下に減らせる。さらに、火力発電所を都会に建ててコージェネレーション(cogeneration)、すなわち無駄に捨てるはずの熱を熱源として活用すれば、総合的なエネルギー効率を80%にすることもできる。しかし、原子力発電所は決して都会には建てられない。
熱、化学物質、放射能の三位一体の毒物
温廃水は単に熱いだけではなく、化学物質と放射性物質も混入させられた三位一体の毒物である。まず、海水を敷地内に引き込む入り口で、生物の幼生を殺すための化学物質が投入される。なぜなら海水を施設内に引き込む配管表面にフジツボやイガイなどが張り付き、配管が詰まってしまっては困るからである。さらに、敷地から出る場所では、作業員の汚染した衣服を洗濯したりする場合に発生する洗濯廃水などの放射性廃水も加えられる。日本にあるほぼすべての原子力施設は、原子炉等規制法、放射線障害防止法の規制に基づき、放射性物質を敷地外に捨てる場合に濃度規制を受ける。原子力発電所の場合、温廃水という毎日数百万tの流量をもつ「大河」がある。そのため、いかなる放射性物質も十分な余裕をもって捨てることができる。洗濯廃水も洗剤が含まれているため廃水処理が難しい。原子力発電所から見れば、苦労して処理するよりは薄めて流すほうが得策である。たとえば、昨今話題となる核燃料サイクルを実現するための核燃料再処理工場は、原子力発電所以上に膨大な放射性物質を環境に捨てる。ところが、再処理工場には原子力発電所のような「大河」はない。そこで、再処理工場は法律の濃度規制から除外されてしまった。逆にいえば、原子力発電所にとっては、温廃水が実に便利な放射能の希釈水となっているのである。
火力発電(かりょくはつでん)は、化石燃料(石油、石炭、天然ガス)やバイオマス(木質燃料、廃棄物)などの反応から得られる熱エネルギーを電力へ変換する発電方法の一つである。火力発電を行う施設を火力発電所という。
水力発電に比べて建設費が安い、電源立地の自然的条件の制約が少ない、大容量機設置ができる、大消費地に近接した地点で建設できるので電力輸送の際の損失が少なくてすむのが利点。一方で、温暖化ガスである二酸化炭素(CO2)ほか、大気汚染の原因になる。燃料の種類により、窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)といった有害物質を多量に排出する。運転費が大きいという欠点もある[1]。
CO2や大気汚染物質の排出量を抑えるため、化石燃料に他の燃料を混ぜて燃焼させる技術も開発されている(アンモニア[2]や木質ペレット[3])。
項目削除・手法簡略化の考え方について
2022年10月7日 自動車の排気ガスによる環境問題とは?地球温暖化への影響も解説
自動車の排気ガスによる環境問題とは?地球温暖化への影響も解説 (earthene.com)
- 2022年10月07日
- 環境問題
私たちの生活に重要な移動手段として、自動車は欠かせない存在です。一方で自動車の排気ガスは、大気汚染を引き起こすなど、大きな環境問題も抱えています。また、自動車の排気ガスには、地球温暖化の原因である温室効果ガスのひとつ、CO2が大量に含まれており、近年ではその影響についても追求されています。
自動車排気ガスが環境にどのような影響を及ぼし、排気ガス抑制のために、国や自動車産業はどんな取り組みを開始しているのか。この記事では、さまざまな角度から自動車排気ガスの環境問題を解説していきます。
<picture><source srcset="https://earthene.com/media/_nuxt/lca-banner.png.84cf5401.webp" type="image/webp" /></picture><picture><source srcset="https://earthene.com/media/_nuxt/supplychain-banner.png.421494cf.webp" type="image/webp" /></picture>目次
- 自動車の排気ガスの何が問題?地球温暖化への影響
- 自動車の排気ガス抑制への取り組み
- 再生可能エネルギーは自動車排気ガス抑制にも活躍
- 自動車の排気ガスを削減するためのエコカー開発
- まとめ:自動車排気ガスによる環境問題を知ることは企業の責任
1. 自動車の排気ガスの何が問題?地球温暖化への影響
自動車排気ガスが及ぼす大気汚染
自動車の燃料はガソリンや軽油です。これらを燃やしてエネルギーにするときに排出されるガスには、一酸化炭素(CO)や窒素化合物(NOx)、粒子状物質(PM)、二酸化炭素(CO2)などの多くの化学物質(汚染物質)が含まれています。この化学物質は大気中で、人間や生物に害のある物質に変化し、酸性雨や光化学スモッグなどの大気汚染を引き起こしてきました。
また、人体だけではなく、大気汚染は森林や農業などにも悪影響を及ぼし、自然環境も脅かしています。
自動車排気ガスは温室効果ガスを大量に排出
温室効果ガスとは、大気中に存在して、地球の表面から放射される赤外線の一部を吸収することで温室効果をもたらす、二酸化炭素やメタン、一酸化二窒素、フロンなどのガスのことを指します。自動車の排気ガスはCO2も大量に排出するため、地球温暖化の要因のひとつととして問題になっています。
CO2排出と地球温暖化の関係
人間の経済活動は、常に石油や石炭などの化石エネルギーを消費し、大量のCO2を発生させてきました。IPCCの第6次評価報告書によると、このまま温室効果ガスが増加を続けると、地球の温度は約1.5度上昇すると言われています。持続可能な社会を築くためにも、脱炭素を促進し、これ以上の気温上昇は食い止めなくてはいけません。
出典:環境省「世界のエネルギー起源CO2排出量」(2018)(p.1)
出典:IPCC『AR6/WG1報告書SPM 暫定値』(2021.9.1)(p26)
運輸部門におけるCO2排出量と推移
日本のCO2排出量を、部門別に見てみましょう。2019年度は、運輸部門のCO2排出量は2億600万トンでした。総排出量は11億800万トンなので、これは全体の18.6%を占めることとなります。経済が発達するにつれ、自家用車を所持する人も増加したため、自家用車のCO2排出量は運輸部門の45.9%を占めました。
1990年度から1996年度まで運輸部門のCO2排出量は、約23%も増加していました。しかし、1997年に採択された京都議定書において、日本はCO2排出量を1990年度の基準から6%削減することを定め、これを達成したのです。2001年度以降、CO2排出量は、少しずつではありますが減少傾向にあります。
出典:国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」(2021.4,27)
2. 自動車の排気ガス抑制への取り組み
エコドライブから進化「ゼロカーボン・ドライブ」
自動車排気ガスによる環境問題対策として、エコドライブが推奨されました。「エコドライブ10のすすめ」では、以下の項目が定められています。
-
ふんわりアクセル「eスタート」
-
車間距離にゆとりをもって、加速・減速の少ない運転
-
減速時は早めにアクセルを離そう
-
エアコンの使用は適切に
-
ムダなアイドリングはやめよう
-
渋滞を避け、余裕をもって出発しよう
-
タイヤの空気圧から始める点検・整備
-
不要な荷物はおろそう
-
走行の妨げとなる駐車はやめよう
-
自分の燃費を把握しよう
エコドライブ推進により、社会では自動車排気ガスを抑制する意識が少しずつ定着しました。さらに、近年はエコドライブから進化した、CO2自体の排出量をゼロにする「ゼロ・カーボンドライブ」という政策が進められており、自動車の脱炭素化が加速しています。
新たな移動の選択、サーキュラー・エコノミーとは
サーキュラー・エコノミーの意味は「循環型経済」で「ゼロ・カーボンドライブ」では脱炭素を推し進めると同時に、「所有からシェア」という考えの普及に努めています。具体例として、自治体の公用車や民間企業の社用車を、休日には市民の足として利用してもらうシェアリングがそのひとつです。
車は一人一台所有ではなく、利用したいときにシェアすることで、エネルギーの節約や無駄を排することが可能。業界や消費者との、新たな循環型のつながりを構築することができます。
3. 再生可能エネルギーは自動車排気ガス抑制にも活躍
再エネ×電気自動車の推進
「ゼロ・カーボンドライブ」ではなにより、自動車の脱炭素を進めるために、再生可能エネルギー(以下再エネ)の普及を推進しています。EV車やプラグインハイブリッド車、燃料電池自動車などの電動自動車を最エネで活用して、自動車のドライブ時のCO2排出をゼロにするという取り組みです。
太陽光や風力を使用する再エネは、クリーンエネルギーであるため、CO2を排出しません。再エネを使用した電気自動車なら、排気ガスのCO2削減に大いに貢献できます。
出典:環境省「大気環境・自動車対策 ゼロカーボン・ドライブ(ゼロドラ)」(2020)
ゼロカーボンライフ・ワークスタイル先行導入モデル事業とは
環境省は、再エネ×電気自動車を推し進めるために「再エネ電力と電気自動車や燃料電池自動車等を活用したゼロカーボンライフ・ワークスタイル先行導入モデル事業」を開始しています。これは、電気自動車やハイブリッド車を購入する個人、企業に対して補助金を支給する制度です。
また、モニターとして、エネルギーマネージメントシステムを活用した地域防災の協力などの実態調査に参画することが条件の、経済産業省の「災害時にも活用可能なクリーンエネルギー自動車導入事業費補助金」という制度もあります。自動車の脱炭素に向けた施策が次々と開始されています。
出典:環境省「令和2年度第3次補正予算に盛り込まれた「再エネ電力と電気自動車や燃料電池自動車等を活用したゼロカーボンライフ・ワークスタイル先行導入モデル事業」等の補助要件等について」
4. 自動車の排気ガスを削減するためのエコカー開発
エコカーとは何か
自動車の脱炭素を実現するために、エコカーの開発も活発化しています。エコカーとは「エコロジーカー(自然環境保全車)」を略したもので、環境に配慮した自動車のことです。EV(電動自動車)をはじめとしてさまざまな種類のものがあります。
エコカーの種類
エコカーにはさまざまな種類がありますが、ここでは以下の3つの種類をご紹介します。
-
電気自動車
一般にEV(Electric Vehicle)と呼ばれるタイプの自動車で、電気モーターを回転させて走らせます。エンジンではなく、車のバッテリーを充電させることで走行するので、走行音が静かで振動も大きくないというメリットがあります。
-
水素自動車
電気自動車と同じくらい注目されているのが、水素自動車です。ガソリンではなく、水素を燃焼させたエネルギーで自動車を走行させます。これまでのガソリンエンジンの技術を応用できる上に、脱炭素も可能というメリットがあり、今後開発に期待されているタイプです。
-
ハイブリッド自動車
HV(Hybrid Vehicle)と、略されるハイブリッド自動車は、エンジンと電気モーターを兼ね備えたタイプのものです。メリットとして、走行する場面に合わせた切り替えが可能なので、低燃費なことが挙げられます。
世界で加速するエコカー開発
近年、中国をはじめとする経済大国がEVの開発生産を加速させています。欧米も脱炭素に向け、競うようにEV開発へと取り組んでいます。EVに限らず、脱炭素や環境に配慮したエコカーの開発は、世界各国で進められています。どのようなエコカーが開発されるにしろ、化石エネルギーを使用し、CO2を排出する自動車は今後急速に減少することは間違いありません。
5. まとめ:自動車排気ガスによる環境問題を知ることは企業の責任
自動車は、生活に欠かせないものであるからこそ、排気ガスの環境問題に対して無関心ではいけません。現在、CO2を排出しない再エネ利用のEV車の開発やシェアカーなど、自動車産業は、脱炭素に向けて新たな動きを開始しています。このように急速に自動車産業の脱炭素が進歩しているのは、世界の環境ビジネスの動きをいち早く察知しているからでもあります。
企業は、世界の環境問題に対して敏感になり、自社の環境価値を高める行動を起こす必要があります。ぜひ、持続可能なエネルギー導入を検討し、自社の環境価値をアップしてください!
気候危機を打開する日本共産党の2030戦略│2021総選挙政策│日本共産党の政策│日本共産党中央委員会 (jcp.or.jp)
気候危機打開 日本共産党が「2030戦略」2021.9.1 (youtube.com)
2021年9月1日 日本共産党
目次
- 1、気候危機とよぶべき非常事態――CO₂ 削減への思い切った緊急行動が求められている
- 2、「口先だけ」の自公政権――4つの問題点
- 3、日本共産党の提案――省エネと再エネで、30年度までに50%~60%削減
- 4、脱炭素、省エネ・再エネをすすめる社会システムの大改革を
- 5、脱炭素と貧困・格差是正を二本柱にした経済・社会改革で、持続可能な成長を
- 気候危機打開へ――いまの政治を変えるために力を合わせよう
1、気候危機とよぶべき非常事態――CO₂ 削減への思い切った緊急行動が求められている
(1)2030年までのCO₂ 削減に人類の未来がかかっている
気候危機とよぶべき非常事態が起こっています。すでに世界各地で、異常な豪雨、台風、猛暑、森林火災、干ばつ、海面上昇などが大問題になっています。
国連IPCC「1.5度特別報告書」は、2030年までに大気中への温室効果ガス(その大半はCO₂ )の排出を2010年比で45%削減し、2050年までに実質ゼロを達成できないと、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比して1.5度までに抑え込むことができないことを、明らかにしました。
たとえ気温上昇を1.5度に抑えても、洪水のリスクにさらされる人口は今の2倍となり、食料生産も減少するなど人類と地球環境は打撃を受けますが、それを上回る気温上昇となると、その打撃は甚大なものとなります。
2度上昇すれば、洪水のリスクにさらされる人口は2.7倍に増加し、サンゴの生息域は99%減少してしまいます。さらに、大気中の温室効果ガスが一定濃度をこえてしまうと「後戻り」できなくなり、3~4度も上昇してしまうと気候変動による影響が連鎖して、悪化を止められないという破局的な事態に陥ってしまいます。
パリ協定は、それを避けるために「上昇幅を2度を十分に下回り、1.5度以内に抑える」ことを目的として日本を含む世界196か国が合意して、締結したのです。
IPCCは、今年8月、新たな報告書を発表し、「人間の影響が温暖化させてきたことにはもはや疑う余地はない」としました。同時に、これからの10年の思い切った削減と、2050年までに温室効果ガスの排出量の「実質ゼロ」を達成し、その後も大気中のCO₂ の濃度を下げる努力を続けることによって、21世紀の最後の20年には1.4度まで抑えることができることも示しました。
新型コロナウイルス、エボラ出血熱、エイズなどの新しい感染症が次々と出現し、人類社会の大きな脅威となっていますが、この背景にも、森林破壊をはじめとした環境破壊、地球温暖化があります。
すでに世界の平均気温は1.1~1.2度上昇しており、破局的な気候変動を回避するために取り組める時間は長くありません。10年足らずの間に、全世界のCO₂ 排出を半分近くまで削減できるかどうか、ここに人類の未来がかかっているのです。
(2)日本でも気候危機の深刻な影響があらわれている
気候変動による脅威と被害は、日本でも、「経験したことがない」豪雨や暴風、猛暑など、きわめて深刻です。今年の夏も、大雨特別警報や「緊急安全確保」の指示が頻繁に出され、洪水・土石流が起こり、多数の死者や行方不明者、大きな被害がもたらされています。豪雨水害では最大の被害額(1兆1,580億円)となった2018年の西日本豪雨、千曲川や阿武隈川の堤防が決壊した2019年の台風19号、球磨川水系での大洪水が起きた2020年の熊本豪雨など、「何十年に一度」とされる豪雨災害が毎年発生しています。
猛暑も頻繁に起きるようになり、2018年の夏の猛暑は、各地で40℃をこえ、5月から9月までの間の熱中症による救急搬送人数は9万5,137人と過去最多となりました。
海水温の上昇や海流の変化は、異常気象の原因となるとともに、海の生態系に悪影響を及ぼし、漁業への打撃ともなっています。
日本は、西日本豪雨や猛暑、台風21号などがあった2018年に、気候変動の被害を受けやすい国ランキングで世界1位となり、翌19年も台風19号の被害などで第4位となりました(ドイツの環境シンクタンク「ジャーマンウォッチ」)。
気候危機は、日本に住む私たちにとっても、緊急に解決しなければならない死活的な大問題となっているのです。
2、「口先だけ」の自公政権――4つの問題点
自公政権は、やっと昨年「2050年カーボンゼロ」をかかげましたが、中身を見れば、「口先だけ」というほかないものです。そこには4つの問題点があります。
(1)2030年までの削減目標が低すぎる
第一は、一番肝心な2030年までの削減目標が低すぎるということです。
政府が、4月に発表した2030年度の削減目標は「2013年度比で46%削減」です。これは2010年比にすると42%減であり、国連が示した「2030年までに2010年比45%減」という全世界平均よりも低い、恥ずかしいものです。
世界の先進国は、2030年までにEUは55%減(1990年比)、イギリスは68%以上減(同。35年には78%減)、バイデン政権のもとパリ協定に復帰したアメリカは50~52%減(2005年比)など、最低でも50%以上、60%台の削減目標を掲げています。
先進国には、産業革命以来、CO₂ を長期に排出してきた大きな責任があります。また、高い技術力と経済力も持っています。日本には世界平均以上の目標でCO₂ 削減をすすめる責任があります。
(2)石炭火力の新増設と輸出を進めている
第二は、この期におよんで石炭火力に固執し新増設と輸出を進めていることです。
国連は、石炭火力からの計画的な撤退を強く要請し、グテレス事務総長は、日本など「最も豊かな国々」に同発電の2030年までの段階的な廃止を求めています。
ところが自公政権は、7月21日に発表した「第6次エネルギー基本計画(素案)」で、2030年度の発電量に占める石炭火力の割合を26%から19%にするとしたのみで、石炭火力からの撤退を表明しません。すでに、イギリス―2024年、フランス―2022年、イタリア―2025年、ドイツ―2038年、カナダ―2030年など、多くの国々が石炭火力からの撤退年限を表明し、アメリカは2035年までに「電力部門のCO₂ 排出実質ゼロ」を表明しています。
それどころか、自公政権は、国内で9件の大規模な石炭火力の建設をすすめ、インドネシア、バングラディシュ、ベトナムへの石炭火力輸出も推進しています。これでは30年、50年先まで、CO₂ を大量に排出し続けることになります。
石炭火力の新規建設・計画、輸出を中止し、既存の石炭火力についても、2030年を目途に計画的に廃止するエネルギー政策に転換することは、脱炭素に真面目に取り組むかどうかの試金石です。
(3)原発依存――最悪の環境破壊と将来性のない電源を選択する二重の誤り
第三は、「脱炭素」を口実に、原発だのみのエネルギー政策を加速させようとしていることです。
「エネルギー基本計画(素案)」では、2030年度に、原発で発電量の20~22%をまかなうとしています。現在の原発による発電量は全体の6%程度ですから、老朽炉を含む27基程度の原発を再稼働しようというのです。
原発は、放射能汚染という最悪の環境破壊を引き起こします。事故が起きなくても使用済み核燃料が増え続け、数万年先まで環境を脅かし続けます。最悪の環境破壊を引き起こす原発を「環境のため」といって推進するほど無責任な政治はありません。
しかも、原発に固執するエネルギー政策は、危険な「老朽原発の延命」をしても、近い将来の新増設が必須となります。しかし、福島原発事故を経験し、国民多数が原発ゼロを望んでいる日本で、どこに新しい原発をつくれるところがあるでしょうか。原発の新増設を前提としたエネルギー政策は、電力供給の面でも破たんする無責任な政策です。
(4)実用化のメドも立っていない「新技術」を前提にする無責任
第四は、実用化のメドも立っていない「新技術」を前提にしていることです。新技術の開発は必要ですが、それを前提にすればCO₂ 削減の先送りになるだけです。
政府は、石炭火力の継続・建設を前提に、火力で排出されるCO₂ を回収し地下に貯留する技術(CCS)や、火力の燃料にアンモニアを混ぜたり、アンモニア単独で燃やす技術、水素の利用技術などを今後開発して、CO₂ の排出を減らすとしています。しかし、これらはどれも実現するかどうか定かではないものばかりです。
たとえばCO₂ を回収できたとしても、国内には地下に安定的に貯留できる適地はありませんし、コストも高額になります。アンモニアを混ぜても、火力発電で化石燃料が多く消費されることに変わりありません。水素の生成には、大量の電力を必要としますが、その電力を化石燃料でつくったら何もなりません。再生可能エネルギーを使った電力で水素を生成したとしても、エネルギーロスが生まれ、そのまま電力として利用した方が効率的です。再生可能エネルギーに余裕ができる「将来の話」なら別ですが、2030年までという期間では非現実的です。
研究者グループからは“既存の省エネ・再エネの技術だけでも93%削減できる”という提言もあります(未来のためのエネルギー転換研究グループ)。
2030年までに緊急にCO₂ の大幅な削減が求められている状況では、既存の技術や、実用化のめどが立っている技術を積極的に普及・導入することで、直ちに削減に踏み出すことが必要です。
3、日本共産党の提案――省エネと再エネで、30年度までに50~60%削減
(1)2030年度までにCO₂ を50%~60%削減する
脱炭素社会に向けて、多くの環境団体・シンクタンクが、2030年までの目標と計画を示しています(下表)。これらは温暖化防止のNGO・NPOや研究者中心のグループ、大企業や産業界、地方自治体などが参加する団体やシンクタンクです。政治的、経済的な立場の違いはあっても、エネルギー消費を20~40%減らし、再生可能エネルギーで電力の40~50%程度をまかなえば、CO₂ を50~60%程度削減できる、という点で共通しています。
各団体が提起している2030年度の目標
削減率 %減 |
基準年 | 最終エネルギー 消費削減 % |
電力消費 削減 % |
再エネ電力 % |
原子力 % |
石炭火力 % |
||
気候ネットワーク | 65 | 2013年度 | CO₂ | 40 (2013年度比) | 20 (同左) | 50以上 | 0 | 0 |
未来のためのエネルギー転換研究グループ | 55 | 1990年 | CO₂ | 38 (2013年度比) | 28 (同左) | 44 | 0 | 0 |
自然保護基金(WWF)ジャパン | 51 | 2013年度 | CO₂ | 22 (2015年度比) | 15 (同左) | 50 | 2 | 0 |
自然エネルギー財団 | 47 | 2013年度 | CO₂ | 30 (2013年度比) | 14 (2015年度比) | 45 | 0 | 0 |
ジャパン・クライメイト・イニシアチブ(JCI) | 50 | 2013年度 | GHG | 40~50 | ||||
日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP) | 50以上 | 2013年度 | GHG | 50以上 |
(注) *GHGは温室効果ガス(Greenhouse Gas)で、CO₂ が大部分を占め、他にメタンやフロン、一酸化二窒素、六フッ化硫黄などを含む。
●気候ネットワークは、地球温暖化防止のために市民の立場から提案・発信・行動するNGO・NPO。
●未来のためのエネルギー転換研究グループは、日本におけるエネルギー・ミックスや温暖化問題を専門とする研究者を中心とするグループ。
●WWFは人類が自然と調和して生きられる未来を目指し、約100カ国で活動する環境団体。WWF ジャパンは、日本国内および日本が関係する問題に取り組む。
●自然エネルギー財団は、ソフトバンクグループの孫正義代表が2011年に設立し、現在も財団の会長を務める公益財団法人のシンクタンク。
●JCIは、パリ協定が求める脱炭素社会の実現に向け取り組む団体。486企業、141のNGO・団体、37の都府県市区の、合計664団体の連名で2030年度の野心的な削減目標を国に求めている。
●JCLPは、脱炭素化社会に産業界が行動を開始すべきだとして2009年に発足した企業団体で、197社が加盟。
(2)大規模な省エネを進める条件は大いにある
エネルギー消費を減らす省エネルギーは、CO₂ 排出を減らすうえで決定的です。日本は、省エネという面でも世界から大きく立ち遅れており、大規模な省エネを進める条件は大いにあります。
GDP当たり一次エネルギー消費量の変化割合
出典:IEAのEnergy Prices and Taxes Statistics などから作成(明日香壽川著『グリーン・ニューディール』)
日本は、GDP当たりのエネルギー消費量でみて、1970年代のオイルショックを経て80年代までは、「世界の先進」と言える取り組みをしてきましたが、バブル崩壊後は消費量が増え、その後も停滞し、はっきりと減り始めたのは東電福島第一原発事故後です。この大きな立ち遅れは、逆に言えば、日本で省エネにまともに取り組めば、CO₂ 排出を大きく削減できる可能性があることを示しています。
実際に、ガス火力発電の平均エネルギー効率は40%程度で、残りの6割は排熱として捨てられていますが、エネルギー効率を8割程度まで引き上げる実例も生まれています。製鉄でも、古鉄を原料に電気で精製する電炉方式は、鉄鉱石から精製する高炉方式より消費エネルギーを3割削減できるところまできています。製造業でも、断熱化や電力利用の効率化などによる省エネ投資でエネルギー消費量を2~3割減らしたり、製造過程で出ていた排熱を利用するシステム導入でエネルギー消費量を6~8割削減することも可能になっています。
省エネは、企業でも家庭でも、多くは3~4年で、建物など耐用年数の長いものでも10年で投資した省エネ費用の回収ができ、その後はエネルギー消費減による節約効果が続きます。省エネは、「がまん」や「重荷」ではなく、企業にとっては、コスト削減のための投資であり、家計にとっても負担減になるのです。
(3)再生可能エネルギーの潜在量は電力需要の5倍――大きな可能性と必要性
再生可能エネルギーの可能性もきわめて大きなものがあります。
政府の試算でも、日本における再生可能エネルギーの潜在量は、現在の国内の電力需要の5倍です。再生可能エネルギーによる電力を、2030年までに50%(現状の2.5倍)、2050年までに100%にすることは十分可能です。
日本の発電量における再生可能エネルギーの比率は22%(2020年)です。ドイツ48%、スペイン44%、イギリス43%、カリフォルニア州53%(2019年)などと比較しても大きく立ち遅れており、中国29%にも抜かれました。2030年に向けた目標でも、スペイン74%、ドイツ65%、EU全体で57%、アメリカのカリフォルニア州60%、ニューヨーク州70%となっていますが、日本は36~38%です。
再生可能エネルギーの導入が進むほど価格は下がっており、新設の発電コストを電源別に比較すると、いまでは太陽光発電が最も安く、風力がそれに次いでいます。一方、石炭火力は太陽光の3倍、原発は4倍ものコストがかかります。その潜在的可能性をくみつくす再生エネルギーへの大転換の戦略をもつことは急務です。
世界では、グローバル企業を中心に、自社製品やサービスの提供をはじめ事業の100%を再生可能エネルギーで行うという「RE100」の運動が広がっています。日本における再生可能エネルギーの本格導入が遅れ、石炭火力や原子力でつくった電力を使わざるを得なくなれば、日本企業は世界市場で競うことも、製品を輸出することも、できなくなってしまいます。この面からも再生エネルギーへの大転換は急務となっています。
4、脱炭素、省エネ・再エネをすすめる社会システムの大改革を
電力と一部産業、大規模事業所の脱炭素化が、決定的に重要
脱炭素、省エネ・再エネを大規模にすすめるためには、電力、産業、運輸、都市、住宅など、社会のあらゆる分野での大改革が必要です。
とくに日本におけるCO₂ の排出量は、発電所(エネルギー転換)で39%、産業で25%、全体の6割以上を占めています。
CO₂ 排出量は、電力事業と、鉄鋼(12%)、セメント(2%)、石油精製(2%)、化学工業(1%)、製紙業(0.2%)の6つの業種に集中しています。また、85の事業所でCO₂ 排出量の半分、200の事業所で60%を占めます。
つまりCO₂ 排出の大所は限られています。電力会社と一部の産業、200程度の大規模事業所での脱炭素化は、日本全体でのCO₂ 削減をすすめるうえで決定的に重要です。
(1)電力分野――電力消費の削減、再エネの両面で大改革を
電力分野は、日本全体のCO₂ 排出量の約4割を発電が占めるもとで、CO₂ 削減の成否を握っています。
次の電力大改革を進めます。
①社会全体の省エネルギー化によって、2030年までに電力消費を20~30%削減する。
②2030年に、石炭火力、原発の発電量はゼロとする。
③化石燃料から再生可能エネルギーへの大転換を進め、2030年に、電力の50%を再生可能エネルギーでまかなう。
■再生可能エネルギー電力の優先利用原則を確立し、送電網・供給体制を整備する
再生可能エネルギーの普及をすすめるうえで、全国各地につくられる小規模な再生可能エネルギー発電を有効かつ大規模に活用する体制を作ることが必要です。
何よりも、再生可能エネルギーで発電した電力を優先的に利用する、優先利用原則を確立することです。自公政権も口では「再生可能エネルギーの主力化」と言っていますが、実態は、発電量が過剰になると、まず太陽光や風力での発電が電力系統から外され、原発や石炭火力での発電が最優先になっています。
同時に、再生可能エネルギーで発電した電力を最大限活用できる送電網などのインフラ整備が必要です。電気は、瞬時に、石油・ガソリンのような輸送コストもなく全国に送ることができます。再生可能エネルギーはどこにでも存在しますが、自然条件の違いで特に有利な地域もあり、その条件を生かして大都市部へ送電することで、地域の活性化に役立てることもできます。
――EUでは、再生可能エネルギー電力の優先接続が義務化されており、日本でも、優先利用を義務化します。
――発送電の分離をすすめ、大電力会社の市場支配力が強大なままという現状を是正し、地域で開発した再生可能エネルギーを有効に活用できるようにします。
――発電所から送電網への接続線が小規模な再生可能エネルギー発電事業者の負担になっている現状を改め、接続線を大手の送電事業者の責任で設置させます。
――再生可能電力を全国で融通できるように、必要な送電網の整備をすすめます。9電力に区切られた送配電体制を東西2つの体制にするなど、送配電体制の整備・統合をすすめます。
■再エネは地域のエネルギー――地域と住民の力に依拠した開発を
再生可能エネルギーは、密度は低いものの、日本中どの地域でも存在します。再生可能エネルギーは、この特徴に即して、地域と住民の力に依拠して活用をすすめてこそ、大規模な普及が可能になります。そうすれば地域おこしにとっても貴重な資源となります。地域のエネルギーとして、地域が主体になって開発・運営し、その事業に資金を供給する取り組みを推進する必要があります。
――自治体のイニシアチブも発揮して、住民の合意と協力、地域の力に依拠し、利益が地域に還元され、環境破壊を起こさない再生可能エネルギーの利用をはかります。
――住宅や小規模工場の屋根への太陽光パネルの設置、自治体主導や住民の共同による事業、屋根貸し太陽光発電事業などを推進します。そのために、再生可能エネルギー電力の固定価格買取制度を地域の多様な取り組みを促進するように改善します。
■再エネ導入の最大の障害=乱開発をなくすための規制を
再生可能エネルギーの普及の大きな障害になっているのが、メガソーラーや大型風力発電のための乱開発が、森林破壊や土砂崩れ、住環境の悪化や健康被害の危険を広げていることです。目先の利益追求での乱開発・環境破壊を放置するなら、再生可能エネルギーへの大胆な転換を阻害し、気候危機も打開できなくなってしまいます。
二つの方向での解決が必要です。
①環境を守る規制を強化し、乱開発をなくす。
森林法などの現行法は、森林を伐採してメガソーラー発電所をつくるなどの事態を想定していません。環境保全のための森林法改正、土砂崩れの危険性も評価事項に加えるなどアセスメントの改善が必要です。発電開始後も点検を行い、環境破壊や人体への悪影響がある場合には必要な是正措置をとらせます。
環境保全地区と建設可能地区を明確にしたゾーニングを、自治体が住民の参加・合意のもとで行うことも必要です。域外・外国の資本による乱開発を防止することは、利益の地域外への流出を防ぎ、地域のエネルギーであり資源である再生可能エネルギーを、地域の産業として開発し、地域の雇用や需要の創出につなげることにもなります。
②「新たな開発」ではなく、既存の施設・建築物・未利用地などの活用を推進する。
工場の屋根に太陽光パネルを設置して、エネルギー転換とコスト削減を実現した企業も生まれています。欧州では、ほとんどの住宅や建築物に太陽光パネルが設置されている町も多くあります。固定価格買取制度の改善をはじめ、開発の必要がない再生可能エネルギー導入を推進することが必要です。
■日本の条件にあった再エネ技術の開発を進める
世界が再生可能エネルギー導入に本格的に動き出していた2003年に、政府は、風力発電の国の研究を「技術が成熟したので不要になった」として打ち切りました。メーカーも開発を中断し、日本の風力発電は輸入に頼らざるを得なくなっています。日本は温帯モンスーン気候のもとで、風の強さや風向きが急激に変わるという特質があり、落雷も多いので、その条件にあった風力発電が必要です。日本の条件に合った再生可能エネルギーの技術開発を国が率先してすすめます。
(2)産業分野――省エネと脱化石燃料の社会的責任を果たす規制と支援を
■CO₂ 削減目標を業界・企業の「自主目標」まかせでなく、国との「協定」にして国民への公約にします。
産業分野でのCO₂ 排出は電力分野に次いで大きな比重を占めています。しかし、産業分野でのCO₂ 削減の目標と計画は、業界や企業の「自主目標」という“企業まかせ”にとどまっています。イギリスなどでは削減目標や計画を政府と企業の「協定」として公表しています。政府とCO₂ 排出量が多い企業が「協定」を結ぶことは、産業分野でのCO₂ 削減に政府も責任を負うとともに、国民への公約になります。
――CO₂ 排出量が大きい6つの業界、200程度の大規模事業所に、CO₂ 削減目標と計画、実施状況の公表などを「協定」として政府と締結することを義務化します。未達成の場合には課徴金を課します。
――その他の企業には規制ではなく、第三者の認定機関が各企業の目標と計画、進捗状況を評価する制度をつくり、CO₂ 削減の取り組みが正当に評価されるようにします。
■中小企業の「省エネ投資」を支援します。
中小企業にとっても、脱炭素の取り組みは光熱費・燃料費削減などのコスト面だけでなく、売上げの拡大、融資獲得といった事業の成長につながります。
――中小企業、農林漁業を対象に、「省エネ投資」のための無利子・無担保・無保証の融資制度を創設します。
――2兆円の「グリーンイノベーション基金」を大企業だけでなく、中小企業、農林漁業でも活用できるようにする、CO₂ 削減計画を持った中小・零細企業が利用しやすい「グリーン減税」を創設するなど、税財政による支援を強化します。
■脱炭素と結びついた農業・林業の振興
地球規模での食料難とともに、「農業による環境破壊」や森林破壊が大きな問題になっており、食料や木材の自給率向上は国際的な責任です。耕作農地の減少を食い止め、CO2貯留量を増やす農地を確保することも大切です。所得補償、価格保障、国内材の活用など農業、林業の基本的な振興策とともに、脱炭素・環境保全型の農林業を振興します。
――農山漁村での再生可能エネルギーの活用を推進します。ハウスなどの農業施設での化石燃料ゼロ、木材・バイオマス素材への転換など、生産プロセスの脱炭素化への取り組みを支援します。
――農地でのソーラーシェアリングや耕作放棄地での太陽光発電をすすめます。
――小規模バイオマス発電の普及のために、収益性が上がる買い取り価格の設定や、小規模木質発電に適する山村地域への送電線整備などをすすめます。
(3)運輸・交通分野――交通政策の全面的転換、自動車からのCO₂ 排出を削減・ゼロに
■交通政策を脱炭素の観点から全面的に転換する
脱炭素や環境優先の交通政策に転換し、鉄道、路線バスなどの公共交通を重視します。40年前の国鉄民営化から続いている「民間まかせ、市場まかせ」の鉄道政策を見直し、鉄道の公共性、脱炭素社会への重要な役割にふさわしく国が公的に支えることが求められています。
――全国鉄道網を維持・強化し、脱炭素化をすすめるための公共交通基金を創設し、不採算地域での鉄道事業の赤字を適切に補てんしたり、車両・設備の省エネ化を支援します。基金の財源は、ガソリン税をはじめ自動車関連税、航空関連税などの交通関係の税の一部や、JR東日本、東海、西日本などの巨額利益の一部も組み入れます。
――新幹線の4倍もの電力を消費する、リニア中央新幹線の建設は中止します。
■電気自動車などを普及し、2050年までに自動車からのCO₂ 排出をゼロにする
多くの自動車は十数年で買い替えられます。いまから年限を定めて切り替えをすすめれば、2050年までに自動車からのCO₂ 排出をゼロにできます。
――新車販売を2030年までに、ガソリン車から電気自動車(EV)などゼロエミッション車(ZEV)に全面的に切り替えます。大型トラックなどのディーゼル車も早期の切り替えをすすめます。その際、自動車メーカーに下請け・関連企業にたいする社会的責任を果たさせます。
――公共交通機関と組み合わせた自転車利用など自転車利用環境を整えます。
(4)都市・住宅――断熱・省エネのまちづくりを進める
都市・住宅の断熱・省エネ化を、新築・改築時に進めることが必要です。また、都市の再開発や大型開発事業にあたっては、CO2排出量を削減するという視点から計画を見直します。
――新築・改築時の省エネ・再生エネ化を規制と助成一体にすすめます。一定規模の建物建設に断熱化、太陽光パネル設置などの脱炭素化対策を義務化するとともに、住宅建設への省エネ減税・住宅ローン減税の上乗せなどを行います。
――官公庁、学校など公共建築で、太陽光パネルで消費エネルギーがまかなえる「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」、「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」を実現するなど、公共施設から脱炭素をすすめます。
――ゴミの焼却熱、事業所のボイラー熱、バイオマス発電の排熱をはじめ、未利用熱・地中熱等を病院、オフィス、住宅などの熱エネルギー源として利用をはかります。
――公共事業でライフサイクル・アセスメントを実施して、調達、建築、運用、メンテナンスにいたる全過程でCO₂ 排出量を公開します。環境破壊の無秩序な都市再開発をやめ、自然の空気の流れや日差しを有効利用する都市計画をすすめます。
(5)自治体――ゼロエミッションをすすめる
「2050年CO₂ 排出ゼロ」を表明した自治体は40都道府県、268市、10特別区、126町村(8月31日現在)にのぼりますが、その取り組みは緒に就いたばかりです。すべての地方自治体が2030年までの地球温暖化対策推進計画を策定し、住民とともに実践の先頭に立つよう、責任を持った取り組みを加速することが求められています。また、地域に還元され、貢献する再生可能エネルギー活用をすすめるために、自治体が役割を発揮することが求められています。
――公共施設、公共事業、自治体業務でどれだけCO₂ を削減できるかなど、地方自治体自らの脱炭素化に向けた「目標と計画」と、区域内の脱炭素化の「目標と計画」という両面での「目標と計画」を策定します。その実現のために、地元企業と独自の協定や、省エネ投資への自治体独自の支援、断熱・省エネルギー住宅へのリフォーム、太陽光発電用パネルの設置などへの助成を行います。
――住民参加のもとで、自治体がゾーニングを行い、地域の環境と両立した形で再生可能エネルギーが導入「できる」場所と「できない」場所を “可視化”します。
――各自治体に、太陽光など再生可能エネルギーによる電力の利用、税金の優遇、補助金の申請、脱炭素に有効な製品・サービスの選択など、住民や地元企業に専門的なアドバイスを行える支援窓口を、環境省、都道府県との連携を強化しながら、設置します。
5、脱炭素と貧困・格差是正を二本柱にした経済・社会改革で、持続可能な成長を
(1)脱炭素社会の実現は、「耐乏」でも「停滞」でもなく、持続可能な成長に道を開く
脱炭素化、省エネルギーと再生可能エネルギーの推進は、生活水準の悪化や耐乏生活を強いるものでも、経済の悪化や停滞をもたらすものでもありません。それどころか、新しい雇用を創出し、地域経済を活性化し、新たな技術の開発など持続可能な成長の大きな可能性を持っています。
省エネは、企業にとっても中長期的な投資によってコスト削減とまともな効率化をもたらします。リストラ・人件費削減という経済全体にマイナスとなる「効率化」とは正反対です。住宅などの断熱化は、地域の建設業などに仕事と雇用を生みだします。
再生可能エネルギーのための地域の発電所は、石炭火力や原発などより、はるかに多い雇用を生み出し、地域経済の活性化につながります。海外に依存してきた化石燃料への支払いは大幅に減り、日本経済の弱点である低いエネルギー自給率は大きく向上し、再エネの普及によるコスト削減もあり、電気料金の値下げにもつながります。
ある研究グループの試算では、2030年までに、エネルギー需要を約40%削減する省エネと、再生可能エネルギーで電力の44%をまかなうエネルギー転換を実施すれば、年間254万人の雇用が新たに創出され、エネルギー転換で影響を受ける産業分野での現在の雇用者20万人をはるかに上回ります。投資額は、2030年までの累計で202兆円となり、GDPを205兆円押し上げ、化石燃料の輸入削減額は52兆円になるとされています(未来のためのエネルギー転換研究グループ 「レポート2030」)。
国際エネルギー機関(IEA)は、クリーンなエネルギーシステム構築、クリーンな交通システム、産業部門の省エネなど、持続可能性を重視した施策に3年間で3兆ドルを投じれば、世界のGDP成長率を、年平均で1.1%ポイント増加させると予測しています(「持続可能なリカバリー(経済復興)」2020年6月)。
脱炭素社会の実現は、「耐乏」でも「停滞」でもなく、持続可能な成長に道を開くものなのです。
(2)コロナからの復興はグリーン・リカバリー(緑の復興)で
経済成長と脱炭素化を同時にすすめるという認識は世界に広がり、コロナで落ち込んだ経済を立て直すにあたって、グリーン・リカバリー(緑の復興)が世界的規模での大きな課題になっています。
EUは、新型コロナからの復興予算の30%を気候変動対策などのグリーン・リカバリーに投じるとして、7年間で140兆円に上る長期予算案と約95兆円の経済復興策を打ち出し、再生可能エネルギーの普及や電気自動車への転換のための巨額のインフラ支援などが盛り込まれました。
フランス政府は、経営難に陥ったエールフランスに資金を融資するにあたって、列車など代替手段がある2時間半以内の国内路線を縮小することを条件にするなど、脱炭素化を促す方向性が明確になっています。
しかし、日本政府はこのような考え方を対策の基本に位置づけていません。本気で2050年にCO₂ 排出実質ゼロをめざすなら、“コロナ前”に戻る従来型の「経済対策」ではなく、省エネ・再エネの推進を軸にしたグリーン・リカバリーこそすすむべき道です。
(3)気候危機の打開は、貧困と格差をただすことと一体のもの
気候危機打開の取り組みをすすめるためには、財界いいなりの政治を変え、石炭火力利益共同体、原発利益共同体の抵抗を排除しなければなりません。
とりわけ、1990年代から顕著になった新自由主義の政治の根本的な切り替えが必要です。大企業の目先の利益拡大と株主利益の最大化をめざす新自由主義によって、企業は省エネや再生可能エネルギーのような中長期的な投資より、短期の利益確保に追われ、金融投機やリストラによるコスト削減にはしりました。
気候危機の打開は、貧困と格差をただすことと一体のものです。どちらも根っこにあるのは、目先の利益さえあがればよい、後は野となれ山となれの新自由主義の政治であり、その転換こそが求められています。
脱炭素化は、大きな社会経済システムの転換、「システムの移行」を必要とする大改革です。再生可能エネルギーは、将来性豊かな産業であり、地域経済の活性化にもつながる大きな可能性をもっていますが、そこでの雇用が非正規・低賃金労働ということでは、「システム移行」への抵抗も大きくなり、地域経済の活性化どころか、衰退に拍車をかけるものにもなりかねません。脱炭素化のための「システムの移行」は、貧困や格差をただし、国民の暮らしと権利を守るルールある経済社会をめざす、「公正な移行」でなくてはなりません。
自公政権は「解雇規制などの労働者保護があるから古い産業から新しい産業への労働移動が起きない」と言って、労働法制を改悪し、非正規雇用を増やす新自由主義の政治をすすめてきました。しかし、現実に起きたことは、労働法制の改悪で「新しい産業」でも不安定・低賃金の非正規雇用が急速に広がり、それと一体で正社員の長時間労働が激化したのです。労働条件が悪化する「雇用移動」は、リストラ・解雇などの強制力がなければ起きませんし、それが雇用の不安定化と貧困と格差の拡大をまねき、日本社会と経済にとっても大きな打撃となったのです。
脱炭素化のための「システムの移行」にさいして、こうした誤った道を繰り返してはなりません。再生可能エネルギーをはじめとした新しい成長分野でも、エネルギー転換の影響を受ける産業でも、人間らしく働ける雇用のルールを確立し、雇用と暮らしを抜本的に向上させることが「公正な移行」のために必要です。
気候危機の打開は、貧困と格差の是正と一体に――「公正な移行」として推進してこそ、達成することができます。
(4)脱炭素に向けた民間投資の促進と公的投資のための財源について
脱炭素に向けて、省エネや再生可能エネルギーのための民間投資と、脱炭素化に必要なインフラ整備のための公共投資が必要です。専門家の試算では、2030年までにCO₂ 半減を達成するためには、民間投資が150兆円、公共投資が50兆円という規模が必要です(未来のためのエネルギー転換研究グループ)。
■企業にとって利益を生み出し、将来性のある投資
省エネや再生可能エネルギーは、企業にとって利益を生み出し、将来性も大きく期待できる投資です。日本の大企業は400兆円を超える巨額の内部留保をもっています。史上最高の利益をあげてきたものの国内の需要が冷え込んでいるために、新たな投資先がないためです。脱炭素化を国家の大プロジェクトとしてすすめることは、こうした資金の新たな投資先になります。
■公共事業、エネルギー関連予算の転換で
公的投資は、先の試算では年間5兆円程度の規模が必要になりますが、現在でも年間25兆円規模の公共投資が行われており、巨大開発の見直しなど公共投資の転換でまかなうことができます。
中小企業や住宅などを支援するための無利子融資への利子補給などの財源は、それほど大きくありませんが必要です。こうした財源は、公共事業の転換とともに、原発に大きな比重を割いているエネルギー関連予算の抜本見直しでつくります。
2021年度予算をみると、エネルギー関連予算のうち、割合が最も多いのが原子力で33.8%(4,121億円)、次いで石油、石炭、ガスなどの化石燃料及び資源で20.7%(2531億円)です。省エネルギーや温暖化対策は19.8%(2,418億円)に留まっていす。エネルギー予算の7、8割を再生可能エネルギーに振り向けます。
■炭素税の拡充
炭素税は、スウェーデンではCO₂ 1トン当たり約1万7000円、フランスでは約5600円を課していますが、日本では温暖化対策税で1トン当たり289円と極めて低額にとどまっています。炭素税などのカーボンプライシングは化石燃料の使用を抑制する効果があるとともに、当面の財源にもなります。炭素税は、脱炭素が完了するまでの一時的な財源ですから、脱炭素に必要な公的な事業、支援策の財源としても検討していきます。
気候危機打開へ――いまの政治を変えるために力を合わせよう
脱炭素社会の実現は、私たち一人ひとりの決意と行動にかかっています。
一人ひとりが気候危機打開の主人公です。ライフスタイル、生活様式を見直すことも、自分の地域にある再生可能エネルギーを、地域のみなさんと力をあわせて開発・利用することも大切です。
同時に、個々人や家庭の努力だけでは、脱炭素は実現できません。気候変動の重大な危機は、石炭火力や原発に固執する、いまの政治を変えることなしには、打開することはできないからです。
いま、気候危機の打開を求める動きは世界で大きく広がっています。とくに、「Fridays For Future」(未来のための金曜日)という、若い人たちを中心にした運動が世界でも日本でも広がっていることは、明日に向けた力強い動きではないでしょうか。
地球を守り、将来の世代に豊かな自然環境を引き継ぐために、いまの政治を変えましょう。思想・信条の違いをこえて力をあわせることをよびかけます。
地球温暖化(地球沸騰化) 防止するには コンクリート(アスファルト)から人へ緑へ どこでも植樹
ダム撤去
街路樹も保存と拡大・撤去は以ての外
木造建物の普及と拡大
緑に関する助成制度 - 愛知県 (pref.aichi.jp)
2021年9月11日気候危機を打開する日本共産党の2030戦略│2021総選挙政策│日本共産党の政策│日本共産党中央委員会 (jcp.or.jp)
地球温暖化対策における緑化推進の取り組み (jichiro.gr.jp)
京都府本部/自治労京都市職員労働組合 稲田 利幸
都市緑化分野における地球温暖化対策 平成19年2月国土交通省交通省<4D6963726F736F667420506F776572506F696E74202D2081698E9197BF8255816A93738E7397CE89BB95AA96EC82C982A882AF82E9926E8B8589B7926789BB91CE8DF42E707074> (mlit.go.jp)
自然と共生するまちづくり、グリーンインフラの可能性 (daiwalease.co.jp)
【どうするのでしょうか中部電力と関西電力・・・】 コンクリーㇳで作った矢作ダムや黒部川ダム群にも寿命があります
水力発電所ギャラリー 中部電力矢作第一発電所 - 水力ドットコム (suiryoku.com)
奥矢作第一・第二水力発電所 - 水力発電所|中部電力 (chuden.co.jp)
恵南豪雨(けいなんごうう、恵南豪雨災害)は、2000年(平成12年)9月11日から9月12日に岐阜県で起こった豪雨災害(水害)。全国的に東海豪雨と呼ばれる豪雨災害の岐阜県における呼称である[1]。
矢作川支流の上村川が氾濫するなど、特に恵那郡南部(恵南)での被害が大きかったことから名づけられた。大量の雨が局地的に降ったことで、これらの河川の上流部にある人工林が山腹崩壊を起こし、土石流を発生させて大量の倒木が下流へ流出したことで被害が拡大したとされる[2]。人的被害としては、いずれも恵那郡上矢作町で死者1人と重傷者1人が発生している[1]。
その時の矢作ダムは?
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
発電所・変電所・送電線路・設備マップ | 黒部川電力株式会社 (kurobegawa-denryoku.com)
主な水力発電所|関西電力の水力発電所|水力発電|再生可能エネルギーへの取組み|エネルギー|事業概要|関西電力 (kepco.co.jp)
コラム コンクリートの寿命について (mlit.go.jp)
「コンクリートの寿命」と聞いて、「コンクリートには寿命があるのか?」と疑問に思う方も多いかもしれません。図表1-3-4で見たように、笹子トンネル事故後、社会インフラの老朽化問題に対する認識度は高まっているものの、依然として半数以上の方が、社会インフラの老朽化問題を「知らなかった」または「聞いたことはあるがよく知らない」と回答している状況です。
このコラムでは、頑健に見えるコンクリートにも、材料や施工方法、設置される場所の環境的条件等により変わってくる寿命があるということを、「コンクリート崩壊-危機にどう備えるか」*の著者である法政大学デザイン工学部の溝渕利明教授へのインタビューを通じてご紹介します。
(*溝渕利明(2013)「コンクリート崩壊―危機にどう備えるか」PHP研究所)
○先生は、ご著書のなかでコンクリートの歴史についても紹介されておられますね。
-現在知られているもっとも古いセメント系材料としては、今日使用されている成分や製法とは同じではないものの、イスラエルのイフタフ遺跡から発見されたものがあります。大型居住跡の床から出土したコンクリートは、15~60N(ニュートン)/mm2の圧縮強度があり、これは現在用いられているコンクリートと同等以上の強度です。イフタフ遺跡は紀元前7000年ごろの遺跡ですから、このコンクリートは9000年以上の寿命をもっているということができます。
○コンクリートには、そのような長い歴史があるんですね。でも、そのような昔の遺跡からコンクリートが出てくるということは、やはりコンクリートの寿命は相当長いということでしょうか。
-コンクリートは、押される力には強い一方、引っ張られる力には弱いという特性があります。この問題を解決するため、19世紀になると、コンクリートの内部に鉄筋を配置した鉄筋コンクリートが開発されました。1867年のパリ万博には、ジョゼフ・モニエという植木職人が鉄筋を配置した植木鉢を出品したことが記録されています。鉄筋を配置したコンクリートの登場により、それまでにない形状の建築物を建設することが可能になりましたが、その一方で、内部の鉄筋の劣化という問題を抱えることになりました。これによりコンクリートの寿命は数十年から数百年に短くなってしまいました。
コンクリートの寿命は、工事現場で採用される工法とも関係しています。戦前の施工現場では、固いコンクリートを手動のカートで運ぶことが一般的でしたが、高度成長期以降の大量・急速施工の時代には、工場から運ばれたコンクリートを必要な位置までポンプで送るというやり方が一般化しました。ポンプで圧送できるためには、コンクリートに水を多く含ませ、軟らかくしなければなりません。こうした製法で作られたコンクリートの寿命は、比較的好条件のもとで100年程度、海岸部等の悪条件下では50年程度といわれています。
○なるほど。気象条件によっても寿命は変わってくるのですね。
-材料、温度・湿度、含まれる水分量、設置環境における塩化物や二酸化炭素の量といった要因も、コンクリート内部の化学反応を通じて、寿命に影響します。コンクリートの劣化には多様で複雑な過程がありますが、例えば、海岸近くのコンクリートや、冬季に融雪剤に触れるコンクリートでは、塩分がコンクリート内部に浸透し、それが鉄筋と反応することで鉄筋を腐食させます。また、別の例としては、安山岩等を材料に作られたコンクリートは、「アルカリシリカ反応」と呼ばれる亀甲状のひび割れを生じさせることが知られています。この現象は、1980年代に「コンクリート・クライシス」として話題となりました。
このように、一見すると永久にもつかのように見えるコンクリートも、内部では長期間のうちに様々な要因によって劣化が進行しています。適切なメンテナンスを行うことにより、コンクリート構造物の機能を維持し、大切に使っていくことが重要です。
○現在、社会インフラの老朽化が大きな問題となってきていますが、今後の取組みとして特に先生が重要と感じておられることを教えてください。
-やはりそれは人材の育成です。戦後は、国土の復興や国づくりに携わりたいという志向が強く、土木は大変人気のある分野でした。でも、今は昔と違って学生の間で土木はあまり人気がありません。また、最近は土木系の学部に来る学生でも、計画策定、まちづくり、復興といったテーマに関心が高いように思います。学生の関心が計画やまちづくりというところにあるので、メンテナンスの講義をしてもあまり関心を持ってもらえていないように感じることがあります。
学生にメンテナンスの知識・ノウハウを学ぼうと意欲を持ってもらうには、例えば資格制度を活用するのが有効ではないかと思います。今の学生は、キャリアメイクへの関心が強いので、社会的に評価・リスペクトされるメンテナンスに関する資格があって、それを取得することのメリットを訴えていけば、自然と若い技術者が育っていくのではないかと思います。
黒部川におけるダムの排砂について
黒部川は、その急峻な黒部峡谷を一気に下っていく激しい流れと豊富な水量から、古くから電源開発が行われるとともに、幾度となく洪水被害を繰り返してきた河川であり、現在、5つの発電機能を有する利水ダム(黒部川本川に黒部ダム、仙人谷ダム、小屋平ダム、出し平ダムの4ダム、黒薙川支流に北又ダム)と1つの洪水調節機能を有する多目的ダム(宇奈月ダム)が整備されています。
一方、黒部川は全国でも有数の流出土砂の多い河川(3,300m3/km2/年:宇奈月ダム地点)であることから、これらダム群の最下流部に位置する関西電力の出し平ダム、国土交通省の宇奈月ダムでは、ダムに堆積する土砂を下流に排出できるよう、それぞれに排砂設備が設けられています。
2つのダムの排砂設備の運用にあたっては、利水や治水といったそれぞれの機能を適確に維持しながら、黒部川の上流から下流、そして海岸まで含めた流域全体を考慮して、排砂による環境への影響をできるだけ軽減するように、出水に合わせて行う連携排砂を平成13年より実施しています。
その間、流域市町をはじめとした関係機関により構成される黒部川土砂管理協議会、学識経験者により構成される黒部川ダム排砂評価委員会における熱心な議論を経るとともに地元関係者の皆さまとの幾度にもわたる協議を重ね、より自然に近いかたちでの連携排砂を目指してきたところです。
黒部川 出し平ダム 宇奈月ダム 連携排砂のガイドライン(案) 平成29年3月
これまで実施してきた16年間の連携排砂により、排砂に関する一定の手法が確立されてきたと考えられることから、現在運用している最新の手法やこれまでの検討の経緯、技術の蓄積をガイドライン(案)としてとりまとめることといたしました。
本書は、これまでの連携排砂で得られた経験や知見、規則やその背景を記載するとともに最新の手法について記載していますが、その行為自体が自然現象を扱うものであることから、常に最新の知見を踏まえながら更新していくものであり、案を付したままとしています。
【設楽ダムにも適用出来ます】しんぶん赤旗 ダム事業に関する六つの提言/2001年7月19日 ダム問題プロジェクトチーム (jcp.or.jp)
無駄と環境破壊のダム事業の抜本的な見直しを求める
ダム事業に関する六つの提言
2001年7月19日 日本共産党国会議員団 ダム問題プロジェクトチーム
日本共産党の筆坂秀世政策委員長が十九日発表した「無駄と環境破壊のダム事業の抜本的な見直しを求める―ダム事業に関する六つの提言」の全文は、次の通りです。
無駄と環境破壊の公共事業の典型として、いま全国で問題になっているのが大型ダム事業です。日本共産党国会議員団が調査した全国二十二カ所のダムだけでも、事業費を合計すると三兆五千億円にもたっしており、この無駄と浪費にメスを入れることは、環境破壊をくい止めるだけでなく、国・地方の財政再建にとって焦眉(しょうび)となっています。
党国会議員団のダム問題プロジェクトチームは、調査をふまえ、ダム事業の抜本的な見直しのために、次のような提言を行うものです。
一、欧米でのコンクリートダムからの脱却の動きと、正反対の自民党政治
欧米では、九〇年代の初めからダムだけに頼らない利水・治水対策にきりかえ、改修ずみの河川を再び自然にもどす工事も十年以上前から始めており、河川の自然環境としての価値を大切にする方向にふみ出しています。とくにアメリカでは「川の再生」をテーマに、すでに五百をこえるダムを撤去したうえ、グラインスキャニオンなど大規模なダムも取り壊し、生態系と漁業の回復や観光振興をはかろうとしています。
日本でも地方から新たな動きが始まっています。昨年四月、鳥取県の片山知事は治水と利水の両面から中部ダムは必要がないと判断し中止を決め、さらに、全国に先駆けて、水没する予定だった地域を対象に、河川改修と定住促進策を含む地域振興計画案を住民に提示しました。また、今年二月には、長野県の田中知事が「脱ダム宣言」を発表しました。
依然として大型ダムに固執する小泉内閣
こうした新しい動きが始まっているにもかかわらず、六月二十一日に国土交通省が示した「公共事業改革への取組」では、国の直轄や水資源公団の事業と、国が補助をしている事業のうち、大型ダムについては、新たに「実施計画調査」に着手することは凍結するとしたものの、すでに着手している事業は二百七十三件あり、そのうち総事業費が決まっている百五十六件の事業費は、合計で九兆円にのぼります。これらの具体的な見直しについてはいっさい言及していません。川辺川ダムなど、あくまで計画中、建設中のダムを強行しようという小泉内閣の姿勢は、コンクリートダム脱却をめざす流れを、かたくなに拒否するものといわざるをえません。
二、調査で浮き彫りになったダム事業の問題点
治水、利水など事業の目的そのものが破たん
党国会議員団が、今回調査したダムは、そのほとんどが利水、発電、治水などをあわせた多目的ダムの形態をとっています。
岐阜県の徳山ダムの場合、岩屋ダムなど都市用水の既存の供給力だけでも完全に供給過剰になっていたのに、長良川河口堰(かこうぜき)などの分が加わり、その上さらに徳山ダムの新たな供給力も合わせれば、需要実績の倍を軽く超えます。だれの目にも、水余りは明らかです。
熊本県の川辺川ダムや秋田県の成瀬ダムも農業用水としての利用目的はなくなり、北海道の平取ダムでも苫小牧東部(苫東)開発の破たんで工業用水の利用目的が失われています。神奈川県の相模大堰も水需要は見込めず、愛媛県の山鳥坂ダムでも、建設省(当時)自身が「渇水対策ではない」と言明したように、計画量は実際とかけ離れています。
実際には水需要がないにもかかわらず、国や県がダム建設をすすめるためのよりどころにしているのが「水資源開発基本計画」(フルプラン)です。国土庁(当時)が一昨年、策定した「全国総合水資源計画」(ウォータープラン21)は、一九八七年策定の前回の「計画」(ウォータープラン二〇〇〇)よりも、上水と工業用水を合わせた都市用水需要を五分の一に、大幅に下方修正しました。ところが、ダム建設の“根拠”となる「水資源開発基本計画」(フルプラン)の方は、いっこうに下方修正がされていません。ここにも、ともかくダムをつくりたいという国土交通省の姿勢がよく表れています。
利水が批判を浴びると、次は治水を持ち出すというのが、どこでも“無駄なダム”をすすめるパターンにさえなっています。たとえば富山県の利賀ダムは、ダムの耐用年数が百年だというのに百五十年に一度の洪水対応という大規模化が図られています。治水の目的さえも費用面や環境面から、ダム建設でやることの妥当性に疑問が指摘されていて、なかには、新潟県の清津川ダムのように、県が治水目的そのものを計画の見直し点として挙げたり、兵庫県の武庫川ダムでは、ダムでは水害が防げず川の拡幅や浚渫(しゅんせつ)などの河川改修こそ必要だと指摘されています。こうした実態をみると、多くの場合、もはや多目的ダムではなく“無目的ダム”になっています。
ダムが新たな災害を招く危険性
ダムの基盤となる地盤に問題があり、建設することでむしろ危険が増すと指摘されるダムもあります。長野県の浅川ダムでは、建設予定地一帯が水を含むと劣化する裾花(すそばな)凝灰岩であり、地滑りが起きやすいという地盤の悪さに、浅川ダムの建設を口実に付け替えられた道路の場合、岩盤への負担を最小限にするとして、当初のダム事業費(百二十五億円)自体を上回る建設費(百四十億円)をかけてループ橋を建設したほどです。
地盤の悪さは、愛知県の設楽ダムでも問題になっており、岐阜県の徳山ダムも、ダムの堤体から活断層が一・八キロメートル離れた所にあり、貯水してできるダム湖を横切る形になります。大阪府の安威川ダムでは、馬場断層など活断層が多数走っており、大阪府の調査自身が「ダムサイトには全部で八系統二十四本の断層が分布しており」とのべています。
また長野県の裾花川や岡山県の新成羽(しんなりわ)川のように、大雨のさいにダムからのいっせい放流がおこなわれた結果、「ダム災害」が起きた例もあります。
住民の声を聞かず、事業を強行する異常性
事業を一方的に住民に押しつけるやり方も問題です。岡山県の苫田ダム建設のように、事業の必要性に関する住民の疑問が払拭(ふっしょく)されないまま、事業官庁は調査に着手し、用地買収をどんどんすすめ、最後まで反対した住民には土地収用をかけるという強権的なやり方が横行してきました。
住民が事業目的の妥当性を問う場が保障されていない状況で、土地収用委員会での論議が唯一、公の場で「公益性を問う」機会でした。ところが政府は、六月末の国会で民主・自由両党の賛成もえて土地収用法の改悪を行い、収用委員会での公益性に関する主張を制限するなど、その機会すら奪い、さらに強権的な事業の推進をはかろうとしています。
三、日本共産党の六つの提言
日本共産党国会議員団のダム問題プロジェクトチームは、これまでのダム建設のあり方を抜本的に改めるため、次の六つの提言を行うものです。
提言1
目的を失ったダムはただちに中止し、必要な代替策と地域振興策をはかる
利水、発電の目的を失ったダム、災害危険地域のダムについては、建設中であっても、ただちに中止すべきです。事業官庁から独立した「ダム事業見直し委員会」を国、都道府県に設置し、住民参加のもとで、治水目的のダムについても計画中、建設中のダムを再検証し、事業の中止を含め抜本的な見直しをおこなうことが必要です。
ダム事業を中止した場合は、まず、必要性もないのに事業をすすめてきた国と県の責任を明らかにすることが重要です。そのうえで、ダム建設計画にほんろうされ苦難を強いられてきた地域住民の被害の実態にあわせて、住居の改善など個人補償の実施も必要です。またダム予定地は「どうせ水没するのだから」といって、地域産業の振興や生活基盤、公共施設の整備がおくれた状態や老朽化した状態で放置され、またダム工事優先で堤防の補強など必要な河川改修も後回しにされてきました。住民がくらし続けられるように地域の振興と再生を国と県の責任で行うべきです。
提言2
森は天然のダム…自然環境の保全を優先する
いますすめられている多くのダムの建設計画は、生態系の頂点に立つオオタカ、クマタカ、イヌワシなどの猛きん類の生息を脅かすもととして問題になっています。岐阜県の徳山ダムでは、水資源開発公団が当初、いないといっていたクマタカやイヌワシの生息が確認され、公団自身が設置した「徳山ダム ワシタカ類研究会」や、自然保護協会による工事の全面中断や計画の見直しの提起に耳をかさず、いまも「工期を遅らせることはできない」として工事が続けられています。
ダムが引き起こす環境破壊は、上流域だけの問題ではありません。ダムを埋める土砂が、下流域にも深刻な問題を引き起こします。現在、国土交通省と水資源開発公団が管理中のダム八十三カ所のうち、すでに堆砂の計画容量をこえたものが二つ、二倍以上のスピードで堆砂が進行しているダムが十六、三倍以上のダムが九あり、設計どおり百年もつのは半分にも満たない三十四ダムだけです。ダムの下流には土砂の供給が行われなくなり、生き物の豊かな生息・生育場所であるなぎさや干潟が、やせ細っていくという事態も起きています。
もっと森林の多面的な機能を生かした河川行政に取り組むべきです。森林は、浸透性や保水性の大きい表層土の存在を通して、降雨時の流出を緩和させ、洪水時には流量のピークを抑えるという洪水調節機能を持つとともに、水源涵養(かんよう)機能をもっています。また土砂の流出を防止するという国土保全機能ももっており、川の濁りを抑え、浄化する役割を果たしています。こうした機能を発揮させるためにも、スギやヒノキなどの針葉樹林の荒廃を防ぐ造林事業や、ブナ、ミズナラ、ナラ、トチなどの広葉樹林の保全が重要です。
そのためにも、環境アセスメントの徹底した実施と、環境保全を優先した河川行政への転換をすべきです。
提言3
河川改修や森林保全の治水対策をすすめられる支援策の強化を
大型ダムの建設を誘導するような現在の補助金のしくみ、起債のあり方も問題です。国の補助事業に該当する大型ダムは、国費が二分の一、地方負担分もその六六%が交付税で措置され、最終的に全体の約八〇%の費用が国から手当てされることになります。
ところが地方自治体が、自然を守るために、中小規模の改良工事で河川改修をすすめようとした場合は、基本的に単独事業にされてしまいます。また改良工事を組み合わせて「統合整備事業」として申請しそれが認可されたとしても、ダム事業より低い補助率です。これでは、地方自治体がコンクリートダムに頼らず自然を生かした河川改修を行おうとしても、財政負担が大きすぎてちゅうちょするのが当たり前です。
補助金のあり方を見直し、治水対策は、住民と自治体で選択できるよう、河川改修や森林造成への支援を強める政策に転換すべきです。
提言4
住民の負担を明らかにし、最優先で住民の健康を守る
水需要がないにもかかわらず利水を口実にダムが建設されれば、下流や周辺の自治体は、不要な水を押しつけられ、高い受水料を払わなければならなくなります。
佐賀県では、嘉瀬川ダムの建設や、嘉瀬川・巨勢川・城原川・筑後川の四本の川を横断する佐賀導水がすすめば、関係の自治体の住民にさらに水道料金の値上げが襲いかかってきます。同県の城原川ダムでは、「佐賀県東部水道企業団」に加盟する十一自治体の財政がきびしく、約二百億円の負担は重いとして「水はいらない」との決議を挙げています。群馬県の八ツ場ダム・倉渕ダム、栃木県の南摩ダム・東大芦川ダム、福井県の足羽川ダムなど、自治体負担の重さが問題になっている例は無数にあります。
こうしたダムによる自治体・住民の負担を、建設を終えてからの後始末として押しつけるのではなく、建設に着手する前に、住民に明らかにするのは、国・自治体が果たすべき当然の説明責任です。
住民にとって深刻なのは料金の値上げだけではありません。新潟県の佐梨川ダムができれば夏場、揚水発電に繰り返し使う「くさい水」を飲むことになりますし、上水用に取水される長良川河口堰の水からは環境ホルモンが検出され、またクリプトスポリジウムによる汚染も懸念されています。霞ケ浦では、肝臓毒であるミクロシスチンや神経毒のアナトキシン(いずれもアオコに含まれる有毒物質)が水に含まれることが明らかになっており、直ちに水質の検査を行い、場合によっては除去などの対策が必要です。
提言5
計画段階から住民が参加する「河川事業評価制度」を創設する
政府は、公共事業にたいする批判の高まりを受けて、九八年には「再評価実施要領」にもとづき設置された「事業評価監視委員会」による見直しを開始しましたが、実際に中止されたダム事業はすでに休止状態にあるものや貯水池など小規模のものばかりで、最も無駄と環境破壊が指摘されている大型ダムは一切見直されていません。
それは、「再評価実施要領」の見直し基準が甘いため、現在進行中のほとんどの事業が対象にならないうえ、また「事業評価監視委員会」のメンバーが事業官庁による任命で、監視の役割を果たせないことにあります。
今後の河川行政を計画段階から住民参加でチェックするため、次のような「河川事業評価制度」を提案します。
第一に、国、地方公共団体、公団など事業官庁は、一定規模以上の河川事業についてその必要性をあきらかにしたうえで、複数の実施計画案をつくり、費用便益の妥当性、環境への影響などを自己評価し、その評価にかかわるすべての資料を公表します。
第二に、事業官庁から提出された複数の実施計画案、自己評価書を審査するため、事業官庁から独立した第三者機関である「河川事業審査委員会」を設置します。「審査委員会」はコンクリートダムをできるだけつくらないことを前提に、財政と環境の両面で実施計画案を審査します。「審査委員会」の事務局は事業担当部局以外におき、委員は住民、学識経験者のなかから公募で選出します。
第三に、「審査委員会」は審査にあたって、住民の意見を積極的に聴取し寄せられたすべての意見を公表します。「審査委員会」は公開で行い、提出資料はすべて公表するようにします。また、代替案が住民や学識経験者などから提案された場合は、それをふくめ審査します。これらをつうじて審議をつくし、住民の合意形成に努めます。「審査委員会」は審査の結果を事業官庁に提出し、事業官庁はその結果を尊重する義務を負います。
提言6
政官業の利権・癒着構造にメスを入れる
ダムや道路などの大型プロジェクトは、ほとんど計画の段階から大手ゼネコンが関与し、どこが工事を担当するかは事実上決まっているといわれています。事業の受注に際し、政治家や民間企業に天下りした役人の関与が指摘されることも少なくなく、このことが当初の目的を失った事業が一向に見直されず強行される原因の一つになっています。
また公共事業は事業に着手してから事業費がどんどんふくらみ、最終的には当初の工事費を大幅に上回るのが常態化し、ダムも典型です。当初は少なめの事業費を計上し、事業が認可をうけたあとは、設計変更という名目で野放図にゼネコンへ追加工事を発注するしくみも問題です。ダム事業における談合の疑惑もあとを絶ちません。
無駄なダム事業をストップするためにも、企業・団体献金、ゼネコンへの天下りと談合の禁止と入札制度の改善は不可欠です。
以上の六つの提言を実施することによって、コンクリートダムからの脱却をはかり、財政の無駄をなくして、自然環境を守れる新しい河川行政に転換することができます。日本共産党はその実現のために全力をつくすものです。