イツキがさやかの後ろから腕を回して抱きしめる。そして爽やかな笑顔を浮かべて顔を覗きこみながら言った。
「さーやか、しよ?」
「しない」
素っ気無いいらえ。
でもイツキはさらに腕に力を込めて、輪をせばめる。髪に頬を押し当てて、吐息で耳をなぞりあげる。
「そんなこと言わないで、しようったらしようよー。今日はオフなんだしさお互い」
完璧に甘えっ子モードに入っている。イツキのそのモードは嫌いではないが、さやかは手にしていた包丁を止めて、肩越しにイツキをにらみつけた。
「しないったらしない。約束したでしょ、イツキ。約束は守ってよね。あたしだって、……あたしだって言われたとおり守ってるんだから」
唇を噛み締める。羞恥に頬が赤らむ。
つんけんした態度をとっても、今のさやかでは何の効果もない。イツキはどこ吹く風でさらにさやかにくっついた。
「そうだけど。でもツライよ。ひと月もお預けなんてさあ」
こないだまで、二日とあけずにしてたのにさ。極端なんだもんなあとぼやく。
「だったらこのカッコ、撤回してよ。これ止めてくれるんならあたしも譲歩してもいい」
さやかは噛み付いた。
「譲歩でセックスしてもらっても、つまんないよ」
イツキは目を細めて、腕の中のさやかを見下ろした。
惚れ惚れする。見るたびに。
今日もさやかは一糸纏わぬ姿で台所に立ち、家事をこなしていた。細身の身体。薄い上半身のわりに、臀部のボリュームは豊かだ。きゅっと尻が盛り上がり、そこからなだらかな曲線が太ももへ、裏膝へと続いている。足首は細く締まっている。
この上なく色っぽい恰好をしているというのに、スリッパだけつっかけたまま、ジャガイモを剥くさやかの口調はとげとげしい。
「だいたいね。罰ゲームが家にいるあいだじゅう全裸でいることっていうの、どうかと思う。よくこんなの考えつくねイツキ」
「それならね。一ヶ月間セックス禁止っていう反撃はどうなの。だんな様のこと、全然配慮してないでしょうさやか」
わざとらしく胸を押さえてよろめく振り。さやかはむきになる。
「イツキだってあたしのこと配慮してないじゃん! なんで裸でいなきゃならないのよっ。南の国の無人島ならいざ知らず。ここは日本よ? 文明社会よ」
「俺が見たいんだもん。いいじゃん減るものでもなし」
けろりと答え、それがさやかの火に油を注ぐ。
「ちっともよくない。あたしは人間らしい生き方を主張する権利があるわ」
「だってエロいんだもん。女のひとがすっぱだかで暮らすってさ」
それを眺めるのがオツなんだよ。いけしゃあしゃあと答える。さやかは頭が痛くなりそうだった。
「そんなこと言ったって、もしも誰か来たらどうするのよ。宅配だって受け取れないわこんなんじゃ」
ふとそこで真面目な顔に戻って、イツキがさやかに向き直る。
「俺がうちにいる間だけだろ。後は物騒だから服を着なさい」
「そ、そうしてるけど」
「裸ルールは俺の前でだけね。で、うちの奥さんにこんなことしてもいいのも俺だけってことで」
うしろからさやかの胸にタッチ。艶かしい手つきで、すっぽりと手に収まるふくらみを揉みしだき始める。
「イ、 イツキ」
さやかが堪らず身を捩った。不意打ちだ。包丁のきっさきがイツキ向かないようにさやかはそれをまな板の上に置いた。
「だめでしょ。こういうことするの、ひと月は我慢って約束だよ」
さやかの胸の尖りを両の指先で確かめながら、イツキは彼女の肩にキスを刻んだ。
「セックス禁止令は出たけど、触っちゃダメなんて言われた憶えはない」
「へ、屁理屈!」
「一ヶ月触れもできないなんて、気が狂ってしまうよ。――いいでしょ? こうしても。触るだけだからさ」
さやかの肩に顎を載せたまま、視線で掬い上げるイツキ。
その目が、彼を拾ったときみたいに雨に濡れた風情を帯びており、さやかは思わず返答に詰まる。
「しようがないなあ」
しぶしぶ頷くと、へへ、とイツキが笑ってさやかの唇を奪った。
ちゅっと軽く。
「奥様のお許しが出た。もらっちゃお」
「あ、こら、だめって。――そんなとこにまで、キスしちゃ」
さやかは台所の床に膝をついて、自分の尻に顔を埋めたイツキを見下ろす。
構わずイツキはさやかの小山を左右に割ってくちづけを刻んだ。
ぞくぞくっと、さやかの腰の辺りにさざなみが湧き上がる。
それは甘い快感となって、そこから手足へと走り、気だるい熱が、徐々に身体をめぐりだす。
「イツキってば、だめ……っ」
シンクの縁につかまり、身体を支える。けれど、よろめいてその場に座り込んでしまいそうだ。
イツキはさやかの太ももに手を添え、「ダメって言ってる割に、いい声で鳴くなあ」とさやかを見上げた。
そしておもむろに、
「もしかしてもう濡れてるんじゃないの」
とさやかの右脚を上げさせ、間を確認する。
「! こら、だめったら」
「あー、やっぱり。欲しがってんださやか」
はしゃぐように声を上げて、イツキは自分が履いているカーゴパンツを脱ぎだした。
「ここでしよ。たっぷり口で可愛がってあげる。さやかも俺のこと口でして」
上のランニングも脱ぎ捨ててしまう。イツキもさやかと同じく生まれたままの姿になった。激しく唇に吸い付き、舌を蹂躙する。
「だめ……。夕飯の準備、できなくなっちゃうよ」
切れ切れに言うさやか。もう息が弾んでしまっている。
それを見て取って、イツキはほくそ笑んだ。
「俺も手伝ってあげる。あとで。今はこっちが大事」
だろ? イツキは再びさやかの股間に顔を寄せて、潤い始めた大切な箇所に吸い付いた。
さやかが弓なりに仰け反る。
「セックスじゃなきゃいいんだろ。シックスナイン、しよ」
一緒にイこうな。そう言って、イツキはさやかを押し倒し、のしかかって胸にむしゃぶりついた。
(この続きは、2010年9月発刊予定 オフセット冊子「LESSON」で。
興味のある方はどうぞ一押しお願いします↓)
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「さーやか、しよ?」
「しない」
素っ気無いいらえ。
でもイツキはさらに腕に力を込めて、輪をせばめる。髪に頬を押し当てて、吐息で耳をなぞりあげる。
「そんなこと言わないで、しようったらしようよー。今日はオフなんだしさお互い」
完璧に甘えっ子モードに入っている。イツキのそのモードは嫌いではないが、さやかは手にしていた包丁を止めて、肩越しにイツキをにらみつけた。
「しないったらしない。約束したでしょ、イツキ。約束は守ってよね。あたしだって、……あたしだって言われたとおり守ってるんだから」
唇を噛み締める。羞恥に頬が赤らむ。
つんけんした態度をとっても、今のさやかでは何の効果もない。イツキはどこ吹く風でさらにさやかにくっついた。
「そうだけど。でもツライよ。ひと月もお預けなんてさあ」
こないだまで、二日とあけずにしてたのにさ。極端なんだもんなあとぼやく。
「だったらこのカッコ、撤回してよ。これ止めてくれるんならあたしも譲歩してもいい」
さやかは噛み付いた。
「譲歩でセックスしてもらっても、つまんないよ」
イツキは目を細めて、腕の中のさやかを見下ろした。
惚れ惚れする。見るたびに。
今日もさやかは一糸纏わぬ姿で台所に立ち、家事をこなしていた。細身の身体。薄い上半身のわりに、臀部のボリュームは豊かだ。きゅっと尻が盛り上がり、そこからなだらかな曲線が太ももへ、裏膝へと続いている。足首は細く締まっている。
この上なく色っぽい恰好をしているというのに、スリッパだけつっかけたまま、ジャガイモを剥くさやかの口調はとげとげしい。
「だいたいね。罰ゲームが家にいるあいだじゅう全裸でいることっていうの、どうかと思う。よくこんなの考えつくねイツキ」
「それならね。一ヶ月間セックス禁止っていう反撃はどうなの。だんな様のこと、全然配慮してないでしょうさやか」
わざとらしく胸を押さえてよろめく振り。さやかはむきになる。
「イツキだってあたしのこと配慮してないじゃん! なんで裸でいなきゃならないのよっ。南の国の無人島ならいざ知らず。ここは日本よ? 文明社会よ」
「俺が見たいんだもん。いいじゃん減るものでもなし」
けろりと答え、それがさやかの火に油を注ぐ。
「ちっともよくない。あたしは人間らしい生き方を主張する権利があるわ」
「だってエロいんだもん。女のひとがすっぱだかで暮らすってさ」
それを眺めるのがオツなんだよ。いけしゃあしゃあと答える。さやかは頭が痛くなりそうだった。
「そんなこと言ったって、もしも誰か来たらどうするのよ。宅配だって受け取れないわこんなんじゃ」
ふとそこで真面目な顔に戻って、イツキがさやかに向き直る。
「俺がうちにいる間だけだろ。後は物騒だから服を着なさい」
「そ、そうしてるけど」
「裸ルールは俺の前でだけね。で、うちの奥さんにこんなことしてもいいのも俺だけってことで」
うしろからさやかの胸にタッチ。艶かしい手つきで、すっぽりと手に収まるふくらみを揉みしだき始める。
「イ、 イツキ」
さやかが堪らず身を捩った。不意打ちだ。包丁のきっさきがイツキ向かないようにさやかはそれをまな板の上に置いた。
「だめでしょ。こういうことするの、ひと月は我慢って約束だよ」
さやかの胸の尖りを両の指先で確かめながら、イツキは彼女の肩にキスを刻んだ。
「セックス禁止令は出たけど、触っちゃダメなんて言われた憶えはない」
「へ、屁理屈!」
「一ヶ月触れもできないなんて、気が狂ってしまうよ。――いいでしょ? こうしても。触るだけだからさ」
さやかの肩に顎を載せたまま、視線で掬い上げるイツキ。
その目が、彼を拾ったときみたいに雨に濡れた風情を帯びており、さやかは思わず返答に詰まる。
「しようがないなあ」
しぶしぶ頷くと、へへ、とイツキが笑ってさやかの唇を奪った。
ちゅっと軽く。
「奥様のお許しが出た。もらっちゃお」
「あ、こら、だめって。――そんなとこにまで、キスしちゃ」
さやかは台所の床に膝をついて、自分の尻に顔を埋めたイツキを見下ろす。
構わずイツキはさやかの小山を左右に割ってくちづけを刻んだ。
ぞくぞくっと、さやかの腰の辺りにさざなみが湧き上がる。
それは甘い快感となって、そこから手足へと走り、気だるい熱が、徐々に身体をめぐりだす。
「イツキってば、だめ……っ」
シンクの縁につかまり、身体を支える。けれど、よろめいてその場に座り込んでしまいそうだ。
イツキはさやかの太ももに手を添え、「ダメって言ってる割に、いい声で鳴くなあ」とさやかを見上げた。
そしておもむろに、
「もしかしてもう濡れてるんじゃないの」
とさやかの右脚を上げさせ、間を確認する。
「! こら、だめったら」
「あー、やっぱり。欲しがってんださやか」
はしゃぐように声を上げて、イツキは自分が履いているカーゴパンツを脱ぎだした。
「ここでしよ。たっぷり口で可愛がってあげる。さやかも俺のこと口でして」
上のランニングも脱ぎ捨ててしまう。イツキもさやかと同じく生まれたままの姿になった。激しく唇に吸い付き、舌を蹂躙する。
「だめ……。夕飯の準備、できなくなっちゃうよ」
切れ切れに言うさやか。もう息が弾んでしまっている。
それを見て取って、イツキはほくそ笑んだ。
「俺も手伝ってあげる。あとで。今はこっちが大事」
だろ? イツキは再びさやかの股間に顔を寄せて、潤い始めた大切な箇所に吸い付いた。
さやかが弓なりに仰け反る。
「セックスじゃなきゃいいんだろ。シックスナイン、しよ」
一緒にイこうな。そう言って、イツキはさやかを押し倒し、のしかかって胸にむしゃぶりついた。
(この続きは、2010年9月発刊予定 オフセット冊子「LESSON」で。
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これからもヨロシクお願いします。
イツさや大好きです❗
「FETISH」出したばかりなのに、矢継ぎ早で申し訳ない気がするのですが、書ける内に書きたい物を書いてしまおうかなあと思い、発刊です。 内容を吟味してお求めいただければと思います。
収録は、堂郁・手柴・イツさやは決定していますが、うーん。後は未定……どうなるかは、おいおいに。
期待値大ですね。有川作品はどれもすばらしいですが、やっぱり高科さんが私のツボです。ぜひ再びの敬語攻めよろしくお願いします。