背中合わせの二人

有川浩氏作【図書館戦争】手塚×柴崎メインの二次創作ブログ 最近はCJの二次がメイン

Vergin Snow (8)

2022年02月14日 01時58分21秒 | CJ二次創作
かがみ込み、ゆっくりと頬張る。
チョコレートと一緒に、アルフィンの指を舌で低め取った。
アルフィンが息を呑む。ジョウは身体をずらし、彼女の頭を腕枕の左手で押さえた。逃げられないようにしてから、ゆっくりと彼女に身体を預けていく。
ジョウはアルフィンにのしかかり、唇にそっと唇を重ねた。
初めは優しく、やがて情熱的に、ジョウはキスを彼女に溶かし込んでいく。
「・・・・・・!」
アルフィンの身体がこわばる。全身に力が入るのが分かった。
怖がらなくていい。ジョウは彼女の小さな頭を抱え込み、チョコを持つ手をそっと握り締める。
初めて触れるのに、ずっと前からその唇の感触を知っている気がして、ジョウは深くアルフィンを求めた。息を継がせるも与えず、夢中でキスを浴びせる。
きっと何度も君にこうする夢を見たせいだ。だからこんなに懐かしくて、腹の底が焼けるくらいに熱いんだーー。
頭の芯が膨張して、目の前がかすみそうになる感覚に襲われながら、ジョウは唇でアルフィンを少しずつこじ開けていく。
「ん………、」
悩ましい声が重ねた唇の端から零れ落ちる。薄目を開けて表情を窺うと、眉間になんとも言えない官能的な皺を刻んで、くちづけを受けとめるアルフィンの顔が見えた。
そしてこわごわと、ジョウの類にひんやりした彼女の手が押し当てられた。
ぎこちなく輪郭をなぞる。その、愛おしさが指先から零れ落ちそうな優しい手つきにジョウの血がたぎる。
引き返せなくなる。これ以上進むと、もう、俺は。
すんでのところで、理性がジョウにストップをかける。
彼はまるで身を引き裂かれるような痛みを感じながら、アルフィンから唇を離した。
「ジョウ」
解放され、ようやく深く息をつくことができたアルフィン。瞳が涙で潤んできらきらと光っている。
「甘いーー溶けちまいそうだ」
身も心も。
何もかも。
「食べて」
アルフィンはジョウから視線を離せなかった。胸の奥にさざなみが立つ。声にならない。
だから、代わりにチョコを割って、また彼の口許に持っていった。
指先が震かに震えているのは、寒さのせいではないと自覚していた。
全部、溶かしてしまって。
あなたの中に、取り込んでほしい。
ジョウの最後の理性の扉を、アルフィンが外していく。チョコレートという甘い鍵で。
「アルフィン」
ジョウはアルフィンに与えられるまま、チョコレートを咀嚼する。
そして、その唇でアルフィンの唇を再び押し包む。濃厚なカカオの味が、割って入るジョウの舌を通じてアルフィンの口を緩やかに覆い尽くしていく。
吐息を絡め、睫毛を触れ合わせて、二人はくちづけに溺れていく。
ジョウはアルフィンの手からチョコレートを受け取って、歯でばきんと噛み砕いた。
それを口移しにアルフィンに食べさせる。
一瞬びっくりした様子だったが、すぐにアルフィンの目許に笑みが刻まれ、与えられるままたっぷりと味わう。
そこでジョウの舌がまたそれを奪っていく。チョコの欠片がジョウとアルフィンの口の中を交互に行き来しては形を丸く変えていく。
チョコレートに、ううん、キスに酔っちゃう。
アルフィンは無意識に呟く。
ジョウは顔を離して、ほんのりと赤くなっているアルフィンを覗き込んだ。
「何か言ったか?」
「ファーストキス、なの」
そう告白すると、ん、と照れたように顎を引いた。
「...……知ってる」
「好き」
アルフィンはジョウの頭の後ろに両手を差し込んで、髪をくしゃくしゃにして抱き寄せた。
「ジョウが好き。好きで、好きすぎて、泣きたくなる」
言葉に詰まる。
去年の今日も、同じ気持ちだった。チョコレートを贈るという、昔の異国の風習に乗っかってでも、なんとかしてそれを伝えたかった。
いや、バレンタインデーだけでなく、毎日毎日、それこそ365日、いつも彼を想って彼に想われたくて、気持ちを持て余して切なくてもどかしくて苦しかった。大切にされているのは分かっていたけど、チームの一員として大事なのか、それともひとりの女として大事にしてくれているのか掴みかねていた。
でも。
今夜、分かってしまった。
ジョウのキスは、彼より饒舌。
「アルフィン..……」
たまらずジョウは唇の位置をずらし、細い首筋に舌先を這わせた。
「あ………」
チョコよりも甘い吐息が、アルフィンの唇を突いて出る。
ジョウは、耳たぶの辺りにくちづけを小刻みに落としながら、
「あったかいな、君は」
喉の奥から熱した鉄の塊を取り出すように、かすれた声を出した。
「ジョウの身体も、あったかいよ」
彼の髪を指で何度も梳きながら、アルフィンは微笑する。
ジョウの右手が、アルフィンの腰のあたりをゆっくりとまさぐった。
インナーシャツの裾から、中に忍び込む。
あ、
びくん、とアルフィンが反応する。それを手のひらと目でジョウはじっくりと確かめた。
「もっと、あったかくなろうか。二人で」
そう言って、今まで誰も触れたことのないアルフィンの柔らかな場所を、下着をかいくぐって探っていく。
アルフィンは、たまらず声を上げた。か細く。
でもそれはジョウの唇に吸い取られる。ジョウの舌はまだチョコレートの甘さを湛えて、弾力的にアルフィンの口の中でうねった。それと同時に彼の手のひらが、辿り着いた胸の丘で舌先同様アルフィンを愛撫し始める。
冷え切っていた彼女の身体が、湯煎して温めたチョコのようにとろとろになり始めたのが伝わった。
気持ちいい。
アルフィンは、夢中でジョウのキスに応えた。彼の逞しい肩にしがみついていないと、どこか別のところへ連れて行かれそうで不安だった。
でもその不安もまた恍惚のペーソスとなって、めくるめくひとときを連れてくる。
うわごとのようにアルフィンは囁いていた。
「あっためて、ジョウ、もっとあったかいところに行きたい。あなたと」
アルフィンの息が白く空(くう)に滲んで消える。ジョウはそれを目で追って、ああ、とこらえきれない官能の声を上げた。
アルフィンの脚を割って、あいだに自分の身を置く。
上体を被せ、本格的に愛し始める。セーブせずに、本能のまま。
アルフィンが悲鳴のような短い喘ぎを漏らす。キスの合間に。
冷え切った洞穴の中、ふたりの体温と息遣いだけが、したたるような熱を放ち始めていた。


「アルフィン、朝だ。起きて」
目をしばたたかせると、ジョウの笑みがあった。
あまりにも彼の顔が近くにあって、アルフィンは、自分がどこにいるか分からなかった。
やがて、むき出しの肩を見て思い出す。
ーーああ、そうだ。あたし。昨夜、この人と……。
アルフィンは思わずジョウの胸に顔を埋めた。
「目が覚めた?」
「うん」
いつの間に眠ってしまったんだろう。記憶がおぼろだ。
覚えているのは、昨夜あれから着ている物を互いに剥ぎ取るようにして夢中で身体を重ねたこと。
寒々とした洞穴の中だというのに、ジョウは汗を全身に浮かべていた。寒さなど感じなかった。むしろ暑いくらいだった。お互いの体温に包まれ、寝袋をはだけて求め合った。
数時間前の記憶が波のように頭の中になだれ込んできて、とてもじゃないけれど、恥ずかしくて目を合わせられない。
ジョウは、彼女の肩を抱きながらアルフィンの額に唇を押し当てた。
「どうした?」
「……もう、朝なの?」
雪に封じ込められた洞穴は、眠る前と変わらぬ暗さだ。時間の感覚が完全に遠のいてしまっている。
「ああ、じきに7時だ。天候が回復したらしい。7時ジャストに救助隊が動き出す。いまタロスから連絡が入った」
ジョウの口調は普段のものにすっかり戻っていて、甘さも素っ気もない。それを少しつまらなく感じた。
「そう……」
そこでふと、ランプの淡い灯りに照らし出されてあるものが目に入った。
脱ぎ散らかした、互いの衣服。昨夜のままに地べたに放り出されている。
アルフィンはジョウの裸よりもそれらを目にしたほうがかあっと顔が火照るのを感じた。
「からだは、その、大丈夫か」
言いよどむ気配に、アルフィンが面を上げる。
ジョウは彼女の目から逃れてばつの悪そうな表情を見せた。
「昨夜は、セーブできなくて、俺.….…」
ごめん、ときまり悪そうに謝る。
とっさにどう答えたらいいか分からず、アルフィンは詰まった。これが映画なんかだと女優がブランケットを口許まで引っ張り上げて隠すところだが、そうしたくても生憎寝袋ではできない。ので、アルフィンはますますジョウの胸に頬をくっつけた。
確かに全然加減してもらえなかった。彼自身もコントロールができないみたいにがむしゃらに愛された。優しくしてと懇願するたび、ジョウの愛撫は却って激しさを増していった。
俯き、黙ってしまったアルフィン。それを機嫌を損ねたのだと、あるいは泣きそうなのだと勘違いしたジョウが、動揺しながら訊ねる。
「痛かったか。そんなに、俺、手荒にした?」
「......」
「す、すまない。じゃ、すまないか。
ごめん。アルフィン。そんなに無理させてたなんて、気がつかなかった」
おろおろと狼狽を隠せない。
「っていうか、気づく余裕がなかったっていうか、正直、もう、理性がどっかに吹っ飛んでしまってだな、」
「ーーふふ」
限界。
アルフィンは吹き出した。
肩を小刻みに揺すって笑う。必死に言い訳を並べるジョウが愛おしかった。
「アルフィン?」
そうなジョウの声が肩先に載せられる。彼女は笑顔を彼に向け、
「だいじょうぶ。まだちょっと…痛むけど、あたしは平気。案外頑丈なのかもね、女のからだって」
と言った。
「この、だましたな」
「違う違う、勝手にあなたが誤解したんでしょ」
嬌声を上げ、ジョウの攻撃から逃れようとする。
それを押さえ込んで、ジョウは強引に唇を塞いだ。

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2 コメント

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おはようございます (ゆうきママ)
2022-02-14 09:35:37
タロスとリッキーの反応が楽しみ。
「愛してる」「好き」って、ジョウも言ってあげないと。
昨日、BSで、クラッシャージョウの映画が入っていた。無料で。
でも、気がついて、見たら、ゴルドバの力を借りて、ステーションにミネルバが突入するシーンだった。遅すぎ~
ダンも天パ(ジョウより緩いが)だったのね。今になって、知った(苦笑)
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お読みくださりありがとうございました (あだち)
2022-02-16 01:19:34
>ゆうきママさん
最後までお付き合い、誠にありがとうございます。
結局、ジョウは口にしなかったですか・汗
返さないあたりが、我が家のジョウらしいということで、ご容赦を。先日のBS放映、盛り上がっていましたね。私はうちのTVが家族と一緒なので、視聴をあきらめました。笑  もっぱら車のDVDで観ています。
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