「ジョウ見て見て、髪切ってみたの。どうお、似合う?」
朝。起きていったら、アルフィンが、ショートヘアになっていた。
それもベリーショート。彼女の頭の小ささと首の細さ、長さが目立つ、つまりスタイルの良さが際立つ髪型。
美人しか似合わない、人を選ぶ髪型に。いきなり。
起き抜けのジョウは仰天した。眠気が一気に醒めた。吹っ飛んだと言っていい。
ろくに言葉も発せられない状態で、ジョウはただ視線をアルフィンに据え、口をむなしく開閉させる。
「あ……髪……? そうか」
彼女の頭のあたりを指し示すが、何を言いたいのかはさっぱりわからない。ただ、彼が非常に驚いていることだけは理解できた。
ボーイッシュを通り越して、見ようによっては性別さえ超越した美しさを醸し出しているアルフィンが、
「頭、すっごく軽くなったわ。はーさっぱりした。小さい頃からずうっとロングで暮らしてきたから、ショートってこんなに身軽なんだって知らなかった。とても快適よ」
頭の後ろを触りながらそう言った。話すたびに、さら、さらっと短い金髪が揺れる。小ぶりの耳たぶが覗いて、とても愛らしい。
小鹿みたいだなとジョウはようやく動きはじめた脳で思いながら、
「いや、なんか驚いたけど、……似合う。うん、よく似合ってる」
びっくりしたけどと言い添えた。
「でもなんでまた急に切ったりしたんだ? 心境の変化か」
「んん? それはねえ」
後ろ手にして手を組み、思わせぶりに上目で見つめる。
そして、たっぷりと溜めを作ってからアルフィンは「じゃーん! 実はうそ!ウィッグでしたー」とショートヘアの被り物を外した。ジョウの目の前に、いつもの見慣れたロングヘアの美少女(元ピザンの王女様)が現れる。
ジョウは二度ビックリした。
なんだよ、ドッキリかよと驚くやらホッとするやら複雑な心情に陥り、そもそもなんでこんな手の込んだことを?と新たな疑問が生じる。
すると、アルフィンが茶目っ気たっぷりに「サプラーイズ。今日は何の日でしょうか?」と笑顔を見せる。
ジョウは、「んん?今日、って?」と戸惑い顔だ。
ややあって、
「ーーあ。ああ。そうか」
とようやく理解が追いついた様子。
アルフィンはジョウの顔をまじまじと見つめて、やっとわかったの?と嬉しそうに言ってから「そーよ。今日は4月1日。エイプリルフールでした!」とまたまたドヤ顔でしてやったり。
はああ。ジョウは気が抜けた。完全にしてやられたので、怒る気力も湧いてこない。寝起きとはいえ、簡単に引っかかった自分を情けなく感じる程度だ。
それにしても……、と改めてジョウはアルフィンをじっと見つめる。さっきのショートヘアの残像と照らし合わせてみて、
「ショートも似合うと思ったけど、やっぱり髪が長い方がなじむな」
と言った。
「ほんと? ジョウはロング派なのね」
「君に限ってはだけどな」
言われてアルフィンは、あらと意外そうに目を瞬かせる。
そして、
「触る? いいよ、ジョウがそうしたいなら」
ついと彼との距離を詰めて言った。
撫でてもいいよ、触れてもね。そんな熱い目で見てくるからジョウは一瞬周囲の目がないことを確認した。眼前には、艶やかなエンジェルリングをたたえる金色の頭がある。
ジョウはこほんとひとつ咳ばらいをして、そっと右手を上げた。
「それじゃ、お言葉に甘えて」
END
今年のエイプリルフールのお話は、このような感じで。。。
思わず、去年のエイプリルフールは何を書いてたっけな?と自作を読みに行ってしまいました。。。憶えていてくださって本当に恐縮です。
姫の小頭なら、ベリーショートも全然お似合いでしょうが、きっと彼の好みで切ることはないのではないかと。。。ご馳走様ですすみません><
今年は去年と比べたらずっと罪のない可愛いウソですね。うふふん。
若かりし頃のジーン・セバーグかジェーン・バーキンみたいなイメージ?ほんと子鹿みたいで可愛かったですよね。 でも案外普通の男の子のJ君は姫の女の子らしい長い髪が好きなんだろうなあ。
「君限定で」ってのは好きな子限定、というか他の女の子の髪型なんかどーでもいいんだろうなあとー思ったりして。
今年度もよろしくです。