2人の男が一緒に旅をしていました。1人がふと足を止め、財布を拾いました。
誰かが落としたものにちがいありません。
「見ろよ、これ! すごく重いぞ。金が詰まっているにちがいない」
彼は素早く財布を開け、金が詰まっているのを見て「俺はなんて幸運なんだろう!」
と言いました。
「おれ、じゃなくておれたち、だろう」ともう1人の男は言います。
「おれたちは旅仲間じゃないか。旅仲間は幸運も不運も、共有するもんだよ」
「とんでもない!おれが見つけたものは、おれのものだ。おまえが見つけたものも、おれのものだ。ジャイアンではないがな」
と最初の男が憤慨して言い終えるや否や、後ろの方から「泥棒!とまれ!」
という叫び声がしました。振り返ると怒り狂った群衆が押し寄せてくるではありませんか。皆、太い棒を手にしています。
財布を拾った男は恐怖で青くなり、
「財布を持っているところをつかまったら、おれたちはおすまいだべ!」
と叫びました。
「え?」
「だって、あいつらはお・れ・た・ちが盗んだと思うだろう?」
しかし、旅仲間は彼に同情しませんでした。
「”おれたち”と言うのはやめてほしいね。さっきは、そうは言わなかったじゃないか。”おれ”は、と言ってくれよ。ジャイアンくん」
教訓:幸運を他人と分かち合おうとしない者は、不運も分かち合うことができない。
イソップ寓話