あるところに兄と弟が住んでいました。
裕福な兄とちがって弟は貧乏で、たった1頭の馬で畑を耕していましたが、やがてその馬も死んでしまいました。
困った弟は裕福な兄に1日だけ馬を貸してほしいと頼み込みます。
最初、兄はことわりましたが、弟は願いを聞き入れられるまで何度も頼みに行きました。
貧しい弟が、馬を借りに裕福な兄の畑へと出かけていくと、屈強な男が畑を耕しているではありませんか。
「あんたは誰?」と弟が訊くと「わしはあんたの兄さんの福の神さと屈強な男は答えました。
「あんたの兄さんが裕福でいられるよう、目を光らせているのだ」と。
「ぼくの福の神は?」
「あんたの福の神は、あそこにおる」
屈強な男が指差したのは、木の下で昼寝をしている痩せ細った若者でした。
弟が若者をつねって起こすと、彼の福の神は畑仕事をいやがりましたが、
「え?畑仕事?あんたがやりゃあいいでしょ?超めんでぃー、ゲームしてた方が楽しいじゃん。それにさ懸命にやるのって僕らしくないんだよね?でも、まあ僕にも得意なことがある。商売ができるようにしてやろうじゃん」と答えました。
福の神から話を聞くと、貧しい弟は荷物をまとめて家族と一緒に町へ出ていくことにしました。
さて、荷造りをしていると誰かが泣いている声が聞こえます。それは、置いてきぼりにされるのを悲しむ貧乏神だったのです。
「さみしいよー。かまってよー。誰か僕を連れてってー。」
弟が「この汚くてボロイ、破れかけてくさい、信じられないほどの古い袋に入るなら町に連れて行ってやろう」(お!まじかー、貧乏神かよ。やっべ貧乏神げっとんw。とりま埋めとこ♪)と貧乏神にもちかけると、彼はまんまとひっかかり、ついに弟は古い小屋の横に穴を掘って袋ごと貧乏神を埋めることに成功しました。
町につくと、弟は妻の古い服をわずかな代金で売り、その金で少しだけ上等な服を買い、さらに高い値段で売りました。
これを繰り返していくうちに貧しい弟は少しずつ裕福になっていったのです。
それを耳にした兄がある日、ようすを見に町にやってくると、かつて貧しかった弟が自分よりも金持ちになっていることがわかりました。
「おまえの家族は餓死寸前だったじゃないか!どうやってこんなに金持ちになったんだ?」と兄。
「貧乏神を袋に入れて埋めたのさ」と、金持ちになった弟はニヤニヤと半笑いで答えます。
裕福な兄はさっさと別れを告げると家路につき、悔しさと嫉妬でみるみる気落ちしていきました。彼はその足で弟の古い小屋に行って貧乏神を掘り返したのです。
そして袋の口を解くと貧乏神を放してやり、叫びました。
「弟を捜しに行くんだ。そしてあいつの全財産を奪い取れ!そして俺の奴隷に!」(あの野郎、俺より稼ぐなんて絶対に許さん)
「いやいや!」と貧乏神は言いました。
「私は、嫉妬深く傲慢で卑しいあなたが大好きです。あなたとずっと一緒にいますよ」
裕福な兄(でも、おめえ、弟に埋められてたろ!笑)
一部変更
ロシア民話より